あの革命の日からもうすぐ1年。
“革命”だなんて、言い過ぎではないかと思う方もいるかもしれないが、私は本気でそう思っている。
加藤直徳(なおのり)さんが昨年創刊させた雑誌『NEUTRAL COLORS』(ニュー・カラー)のことだ。
2004年にトラベルカルチャー誌『NEUTRAL』を創刊させた加藤さんは、その後『TRANSIT』に改名した本誌の33号まで編集長を務め、2018年に『ATLANTIS』を創刊。フイナム読者の中には、きっとこの雑誌のどれかを熱心に読んでいた方もいらっしゃるのではないかと思う。
何が革命なのかというと、まずは印刷方法である。
通常、雑誌や本の印刷はオフセット印刷という方法で刷られる。しかし、『NEUTRAL COLORS』はオフセット印刷に加え、リソグラフ印刷(詳細を知りたい方はこちらのページをご覧ください)も使用。さらに、別々で印刷された紙を綴じただけではなく、オフセットで印刷された紙にさらにリソグラフ印刷を重ねているページもある。また、リソグラフは一度で印刷できるインクの数が限られているため、多色刷りするためには何度か工程を重ねる必要がある。
オフセットは印刷所で、リソグラフはアートディレクターとともに自ら手作業で行っている。つまり、単に雑誌を編集して終わりではなく、印刷の過程でも編集者が手を動かす。
さらに、この制作したものを基本的には加藤さん自ら営業し、書店へ発送する(注:トランスビューさんという取引代行と取引をされている書店さんもあります)。取り扱いは現在国内に100以上あると思うが、Bccメールで新刊の案内を送るのではなく、各書店さん宛てに丁寧な文章でメールが届く。
余談だが、創刊号の納品には加藤さん自らが車に雑誌を積んでうちまで納品に来てくださった。「近いところはまわっているんです」と当時話していたが、こんな弱小個人のところにわざわざ納品にきてくださるなんて、と恐縮したのを覚えている。
2号目は昨年中に出るものと思っていたがなかなか連絡がなく首を長くして待っていたところ、ようやく今月初めにお知らせが届いた。昨年夏に荻窪に工房を構えてから、いつか足を運びたいと思っていたがこの状況で一度も伺えていなかったこともあり、私はメールにこう返信した。「作業の様子を見学させてもらえませんか?」。発売前の忙しい時期にこんな申し出をするのもどうかと思ったが、編み出す直前のその現場の空気にも触れてみたかった。すぐに快諾のお返事をいただき先週伺ってきたところなので、写真で少し紹介させてほしい。
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これが2号目の誌面の一部
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リソグラフ印刷機。一般のコピー機と外面はよく似ている
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上のリソグラフ印刷機の中に納められているカラードラム
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そのカラードラムの中にこのようなインクが入る。蛍光色のような色味がきれいに出るのがリソグラフの特徴
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これは創刊号のヤレ紙(ミスプリント)。このヤレ紙を製本してリソグラフノートを制作し、販売もしている。それが下の写真
このリソグラフノートの創刊号バージョンをMagazine isn’t dead.でも取り扱い始めました。
ご興味お持ちくださった方はこちらから詳細ご確認ください。
また、アイデアが発展してステッカーも制作中。こちらもパッキングしてMagazine isn’t dead.で販売予定です。価格未定ですが、もしご興味お持ちくださった方はCONTACTページからお気軽にご連絡ください。入荷連絡やご予約なども承っています。
加藤さんとアートディレクターである加納さんが二人三脚でつくり上げている雑誌なのだということを、制作の現場を訪ねたからこそより強く感じることができた。加納さんはデザイン入れを終えたデータを印刷機に飛ばして、刷り上がったものを見ながら何度もデザインの微調整を繰り返していた。妥協したくないという姿勢、そして雑誌づくりを心から楽しんでいることがお二人と話していてもよく伝わってきた。そんな思いを凝縮させたのが『NEUTRAL COLORS』という形なのだということも。
今週末発売の2号目を、きっと今も彼らは手を動かしながら編んでいる最中だと思う。
もうすぐ届くその雑誌を、私は今か今かと待ち構えているのである。