BLOG - 高山かおり(Magazine isn’t dead. 主宰/ライター)

雑誌の小型化はスタンダードになりうるのか。

昨日久しぶりに本屋さんへ行き、思わず書棚を二度見してしまった。『WIRED』日本版のサイズがいつもの約半分ほどになっていたからである。遠目から見て『WIRED』だとすぐにわからず、新しい小型のビジネス誌が出たのかと思い、近づきながら驚いた。紛れもなく『WIRED』のロゴデザインが印字された本物。本誌とは別の位置付けの増刊でもない。そしてその隣には、さらにひと回りほど小さいサイズの『Forbes』別冊の『WORK MILL』が仲良く並んでいた。何事なのか。というのも、今までビジネス誌の小型版は日本ではありそうでなかった形態だからである。

小型版はいわゆる「バッグイン」サイズと呼ばれ、主に女性誌でよく見られていた。『Domani』『oggi』『Marisol』『25ans』『美的』『日経WOMAN』など多くの雑誌が本誌の増刊としてバッグインサイズを発売していた時期があった。働く女性が通勤の際に持つバッグに入るようにつくられた大きさなのだと思う。しかしながら、本誌をそのまま小さくしているため文字もかなり小さく、実際のところ少々読みづらい。現在も小さなサイズを出し続けているのは、『OZ magazine』(旅行誌なので理由も理解できる)、『LEE』くらいか。要するに需要がそこまでなかったのだろう。そしてここ数年で加速したキャッシュレス化やファッショントレンドの影響もあり、女性のカバンが小さくなっていることも一因かと思う。

ここにきて男性読者が多いと思われるこの2誌が判型を変えたのはなぜだろう。『WIRED』編集長の松島倫明さんによる今号のエディターズレターより一部引用させてもらう。(全文はこちらからもお読みいただけます)

いわば今号は、パンデミック下における人類の集合的無意識が文字のかたちをとって濃縮された1冊だと言えるだろう(至極のナラティヴに存分に没入してもらえるよう、特別な判型仕様でお届けする)。

うーん。正直なところなぜこの判型であるかの決定的理由はここからは読み解けない。『WORK MILL』はどうか。特に本誌では判型について触れられていないようだ。ちなみにこちらは洋書のペーパーバックくらいのサイズ感なので、より書籍感がある。そして、そういえば、とここで気づく。先日1年振りに2号目が発売した『MOMENT』も小型化していたのだ。この3誌に共通していることは、発売時期が近いこと、束がしっかりとあるボリューム、都市の未来について思考する雑誌(この分野の雑誌が最近目立っているが、これはまた別の機会に)だということだ。

インターネットの台頭により、月刊誌や週刊誌のように早いサイクルの雑誌はどんどん先細りしているのは周知の事実。既存の雑誌に求められていたものは時代とともに変化している。この3誌を読んで感じたのは、雑誌の書籍化の進行だ。字面にするとちょっと意味がわからないが、今後雑誌は今よりももっと書籍に近づいた編集になっていくように思う。雑誌と書籍の境界が曖昧になってしまうくらいに。しかしそうなってしまったら、何をもって雑誌となるのか。そもそもそれはムック(magazineとbookから名付けた日本ならではの造語でISBNがついている雑誌のようなもの)なのか?雑誌の役割とは。こんなことを書き出すと止まらないのでそろそろやめよう。

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