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BLOG - 高山かおり(Magazine isn’t dead. 主宰/ライター)

本屋と本の未来について語られがちだけど

「また本屋がなくなった」とか「あの雑誌も休刊なのか」とか。出版不況についてはもう20年以上語られてきていて、特に業界内の人間が聞き飽きていることも周知の事実であろう。

ただ嘆くだけじゃなくて何か形にできないかと考えて、新しい業態の本屋が増えたりしているけど(私は本屋とは違うが、その中のうちの一人である)、これまたみなさんご存知の通り本屋は儲からない。儲けるために本屋を開くなんて人はいるのだろうか。じゃあなぜ本屋を始めるのかというと、それは“好きだ”というただただ無償の愛ゆえなんじゃないかと思う。

でもそんな中でも、純粋に本のみで儲ける方法はないのだろうかと模索を続けている人たちもたくさんいる。青山ブックセンター本店の例を挙げたい。1年半以上前だろうか、店長の山下くんから「出版にチャレンジしようと思っている」と話を聞いたのは。直後はしばらく音沙汰がなかったのでどうなったかと気になっていたが、あれよあれよと進展し、ついにその時がきた。

小倉ヒラクさんが脚光を浴びるようになったきっかけは、きっと青山ブックセンターだと思う。ヒットをつくるのはいつだって現場だ。誰かが熱意を持って届けようと思わない限り、人の心には響かないと私は思う。

「この数なら売れるだろう」と見込んで発注するのと「この数以上は売りたい」と可能性にかけて発注するのでは、現場の売る姿勢が変わってくる。山下くんはいつも、可能性を信じて注文してくれる人だ。こういう書店員に出会うと(もちろん山下くん以外にもたくさんいる)安心して本を預けられるし、なによりつくり手がすごく喜ぶ。つくり手の思いを代弁するのが売り手だと思うし、常々私もそうありたいと強く思ったからこそ、自分の本当に好きなものだけを集めたマガジンストアを立ち上げた。

書店勤務時代、本の売上のみで本屋が儲かるビジネスモデルを構築することは無謀なのかとずっと考えてきた。ない頭で考え続けるものだから答えにはたどり着けなかったし、アクションすら起こせなかった自分を恥じている。

一方でこうして大胆な行動に移して実現に踏み込んだ(会社も大きいから骨が折れる仕事もあっただろう)山下くんと青山ブックセンターのみなさんを心から尊敬したいし、これからも応援し続けたい。こういう仲間がいるからこそ、あるかもしれないほんの一握りの未来を信じて突き進もうと思うのだ。

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