BLOG - 宮沢香奈(ライター)

stay home, stay healthy from Berlin

毎日、2時間置きに目が覚める。世界の様子が気になって、本当は寝たい頭のままニュースに目を通す。
誰かから届いているメッセージを確認し、無事であることと最新情報を交換し合う。
外出は可能だけど、人との距離を保って歩き、スーパーは混雑しないように入り口で入場規制を行っている。
裸で歩くぐらい異様なことだと言われていたマスクは今では普通となり、誰も怪訝そうな顔で見なくなった。
地下鉄やバスにはもうしばらく乗っていない。

これは、絶望などではない。この世の終わりだと断言出来るほどの確かな情報さえ誰も持っていないからだ。
ただ、淡々とこの非日常で理解不能な日々が過ぎてゆくだけ。

そんな中、ドイツ政府は「私たちの民主主義社会は、少し前までは想像も及ばなかったこの歴史的な状況の中で、独特で多様な文化的およびメディア媒体を必要としている。クリエイティブな人々のクリエイティブな勇気は危機を克服するのに役立つ。私たちは未来のために良いものを創造するあらゆる機会をつかむべきだ。そのため、次のことを言える。アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要なのだ。特に今は」

と、力強く心強い声明を出した。多くのアーティストはこの言葉に救われ、実際に驚くほどの早さで私たちフリーランサーを含む自営業者は支援を受けることが出来ている。
しかし、その裏では独ヘッセン州の財務相がこの危機的状況に絶望し、自殺したというニュースが舞い込む。
私たちのライフラインはこうした誰かの犠牲のもとに成り立っているのだと居た堪れない気持ちになる。

新型コロナウイルスは感染という恐怖だけでなく、様々な角度からじわじわと人間を追い込み、心から破壊させてゆく。
誰かと繋がっていなくては生きていけない。今この瞬間ほど、インターネットが普及していることに感謝することは
ないだろう。
しかし、冗談を交えながら誰かとチャットをしていても、通話をしていても、多くの人の精神状態は
すでにギリギリになり始めている。

イースター連休明け頃には収束しているだろうという当初の甘い考えはとっくに消え去り、最悪だと思っていた状況が
今では最良となっている。事態が収まるには最低でも夏まで、イヤ、半年、イヤ、
あと数年は掛かるだろう、、、と、
一向に良くなる気配がない。政府が緊急対応してくれた助成金には、”長期戦を覚悟しなさい”といったメッセージが
含まれているようにさえ思える。

イタリア南部では、すでに職を失って切羽詰まった人々による暴動、犯罪が起き始めている。
この状況下で驚くほど冷静なドイツ人を見ていると安心してしまうが、今後は分からない。
私たちはいつだってマイノリティーで弱い立場にあることを忘れてはならない。

ドイツ時間の3月29日午前2時、サマータイムへと切り替わった。
日本との時差は7時間、距離も同様に1時間だけ縮まったように思えた。

悲しみで埋もれてしまうから、ずっと聴かないようにしていた故・Andrew Weatherallが無性に聴きたくなった。
会いたい人たちの顔を思い浮かべながら、永遠に変わらない最高の音楽を聴く。


以下、掲載情報となります。是非ご覧ください。

また、VOGUE Japanにて新たに連載がスタートします。詳細はまた追って。


WWD Beauty 3月12日発売号

Qetic連載コラム
https://qetic.jp/column/kana-miyazawa/richest-beil/349099/

 

繊研新聞
https://senken.co.jp/posts/kmiyazawa83

VOGUE Japan
https://www.vogue.co.jp/lifestyle/article/playlist-2020-21aw-runway

 

 

 

 

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