今日から後半戦のファッションウィーク。4日目の一番の見どころは、業界関係者や服好きが常にその動向を追いかける〈コム デ ギャルソン・オム プリュス〉です。コロナ禍以降、東京でコレクションを発表していましたが、今回ついにパリの舞台に戻ってきました。
ショーの会場はオペラのカプシーヌ通り沿いにある建物の2階。コンクリート剥き出しの伽藍堂になったスペースに細長いL字のランウェーがつくられました。会場がかなり狭かったこともあり、超満員です。
先陣を切ったのは、見るものを嘲笑うかのような目を見開いたお面をつけ、鶏冠のような髪型のカツラを被ったモデル。コートはシンプルなデザインかと思いきやパニエのような裾広がりで、パンツとリンクする万華鏡のようなカラフルな色が使われています。
服の雰囲気がガラッと変わったのはショーの中盤。冒頭のブラック中心の色使いから鮮やかなチェック、ホワイト、パープルなどに変わります。シンプルな形のコートやパンツもあれば、ひだ飾りで誇張したジャケット、裾が大きく開いたショーツなど、そこにあるのは〈コム デ ギャルソン・オム プリュス〉ならではのジェンダーをも超越するような迫力と強さのある服の数々です。
そしてフィナーレを告げるかのような重々しい音楽に合わせて登場したのは、仮面を付けたイブニングスタイルのモデル。ただ、身にまとうのは美しいイブニングスーツではなく、裾がジグザグの切りっぱなしになったジャケットと丈が短く極端にフレアになったパンツ。そこから伝わってくるのは、仮面舞踏会に登場する紳士的な人物というより、何を仕出かすか分からないピエロ的な雰囲気です。
最後はモデルたちが再びランウェーに登場することなく終了。結末の描かれない映画を観た後に残る、何とも言えない独特な余韻のようなものがありました。
このファッションウィークではさまざまなブランドが新作を発表していますが、〈コム デ ギャルソン・オム プリュス〉以上に見るものに寄り添わず、考えさせるブランドは無いように思います。
追記:
今回のテーマは「ANOTHER KIND OF PUNK」。
「コム デ ギャルソン」社のプレスリリースには、以下のように書かれていました。
中世における宮廷道化師は癒しを与える
存在だけに限らず主君に別の世界 斬新な考え方を
アドバイスする役を持つ存在でもあったことに
興味を持ちました。
おそらく中世の道化師はパンク精神の
持ち主であったのではと想像する
今回のコレクションです。