-先日、マスターピース ショールームにて弊店ディレクター・クリノとScye カッター・宮原さんで来週末発売予定のDistrict別注トレンチコートに関する対談が行われました。同じ内容をDistrictブログにも掲載していますが、実は今回の対談の記録を文字起こししたのはわたし^^
なので特別にこちらではノーカット版をご紹介します!
(超長文ですがお時間ある時お付き合いください)
——————————————————————-
Districtディレクター・クリノがNEW CLASSICとしてこの秋冬にも提案したかったトレンチコート。
3シーズン着られる便利なアイテムであるトレンチをステンカラーのようにデイリーに着られるよう、現代的にアップデートした一着。Scyeカッター宮原さんにもそこを汲み取って頂きNEW CLASSICになったと太鼓判を頂きました。今回はそんなふたりのトレンチ対談をお楽しみください。
イイジマ)まず最初にいまここでトレンチをScyeさんにおねがいしようとした経緯とかお客様に伝えたいポイントとかありますか?
クリノ)いろんな服を山ほど着てきたけど、その中で着る頻度が高いなーとしみじみ思ったのがトレンチコートだったんです。春着るでしょ、梅雨時も着る、真夏はさすがに着ないけどちょっと涼しくなったら秋も着る、冬は防寒着として着る。同じような薄手のアウターだと流石に真冬は着ないかなってなってもトレンチだけは真冬でも着るよね。
イイジマ)丈も長いですし
ミヤハラ)やっぱりひざ隠れるとあたたかいですよね。
クリノ)あとポケット魔でもあるのでポケットが沢山ついている服もありがたいし、昔と違って着方も色々工夫が出来るからね。タートルの上に着るとかTシャツの上に着るとかいろんな着方が出来てホントに万能だなって思ったんですよね。
やっぱり戦争に行って死なないで帰ってこさせるために作られた服だからよく出来ているんですよね。アウトドアスポーツウェアメーカーさんともそういう機能性の話になって“やっぱり命がかかっていますから”っておっしゃるんだよね。
ミヤハラ)体を守るためのもので、雨から守る
イイジマ)カッコつける以前に…。
ミヤハラ)ということでこの生地もフィンクスコットンという耐水圧のある生地です。コットン100%で72のミコ(72番手の三本撚り)。
クリノ)それだけ高密度ということだね。水をはじく。
ミヤハラ)そうなんです。防水加工とかではなくて天然の防水、打ち込みだけでの防水です。
クリノ)今日着てきたScyeのトレンチも4,5年前かな?パリの出張で着ていて雨に降られてびしょびしょになったけど全く平気でした。なんだけど革靴履いていたせいで転んじゃって。どこか擦ったはずなんだけどもう跡は残っていなくて。ほんとにしっかりしている。
※クリノ私物のトレンチ
ミヤハラ)このころからもうベルトの落下防止とDカンつけていますね。
クリノ)さすがにわたしは手りゅう弾ぶら下げることはないですけどね笑。犬のリード付けたりしてもいいかな。
5,6匹犬連れて歩いても良いですね。
ミヤハラ)このトレンチはフル装備ですね。チンフラップも付いているし。
クリノ)襟を立てたスタイルとかトレンチとして完璧だと思う。チンストラップとかそのオフィサー感というか立派な将校さんの感じがして。
Districtを20年やってきて生き残ってきたアイテムや生き残ってきたブランドをあらためて”NEW CLASSIC”として提案したいというみんなの思いもあって。自分が着ているものでもあるし、ブレザーとかScyeのチノパンなどもあらためてご紹介していく流れでやっぱりトレンチコートでしょう!という事になったんです。
でも、オタクではないのでなにかを完全に再現とか、スペックに忠実でないと、という事にはしたくなくて。宮原さんみたいに理由があって再現されるのはいいんですけど、あくまでファッションとして、今はもっとバサッと羽織って綺麗な感じがほしいなと、今回は襟の作りをもっとジャケットっぽい・ラペルのような軽い襟にしてもらったのが最大の特徴ですね。
ミヤハラ)我々レプリカを目指しているわけではないので。いいところを取り入れて今の気分に落とし込むという事ですよね。
クリノ)ただのいいとこどりではないところがScyeなんだよな。
ミヤハラ)自分としては今回袖にもこだわりがあって、毎回ラグランスリーブというのは自分でも難しいところとして課題にしていて…。なぜかって言うと三枚ラグランのほうが簡単なんです。型紙も前に一つミドルがあってアンダーがあってと三枚だから容易に形を作り易いし実はジャケットを着た時に袖が座り易いんです。
この袖の座りが悪いというのが僕はとても嫌いで、さらに今回のラグランは二枚ラグラン。二枚ラグランで綺麗に袖を座らせるのが僕の中で難しくて。
今回はそれがとてもうまくいったんです。
苦手意識の中でも自分でいろいろ研究してヴィンテージのアクアスキュータムのコート見たりバーバリーみたり昔の裁断書みたりとか…。ただアクアスキュータムもバーバリーもラグランが角ばっているんですよね。実はその方が簡単なんですよ。
というのは山があると袖下までの距離が長くなるから腕を下げた時に脇にたくさん皺が寄るんです。つまりスリーブバランスが良くない…要は袖が座っていないという。彼らの袖は非常に山が高いから袖からネックポイントに向かって90度に曲がってカポッとはまる…あれは僕あまり好きじゃないんです。
クリノ)ロボットみたいな肩になるよね。
ミヤハラ)ザ・ラグランスリーブみたいになっちゃうのが…笑 そこを解消しながらどうやったら綺麗な二枚袖が付くかというのをいろいろ考えて、やっぱり譲れないのは前側というのはかなりカーブを付けないと座ってこない。ところが後ろの袖も同じようにカーブ付けると結果カッポリスリーブになってしまうんですね。後ろは実はそんなにカーブを付けていなくて。前にカーブ、後ろはなだらかにすることで運動量も取れるし綺麗に座ることが出来るんです。いままでずっと研究してきてそれらの積み重ねで今回のトレンチもできたって事もありますね。
クリノ)20年ブランドをやってきてそれでもいまだに進化しようとしているところがすごいよね。
ミヤハラ)けっしてそんなつもりでなくて、“これでいい”って思っちゃだめだと自分で思っているんですよ。
じゃあ僕パターン何年やってるの?って言われれば二十歳のころからなので35年やっていますけど…。でもそれでも“まぁいいや・これでいいや”って思っちゃいけないなって。常に次の事を考えていきながら仕事しないといけないなと思っています。
クリノ)さっき自分にとっても課題だったっておっしゃったように常に自分に次のハードル、次のハードルを見せて行く、課していくいくわけでしょ。
ミヤハラ)例えばこのコラボレーションがあって、次の自分のコレクションやる時に上手くいったところは取り入れたいし、アップデートしたいと思う訳で、“こここうすればよかったな“とか”こっちのほうが良かったな”とか思えるという事はその分成長しているわけじゃないですか?きっと皆さんそういう風に仕事をしているとおもうんですよね。常にそこに甘んじちゃいけないと思いますね。
今回綺麗なラグラン引けたな。とも思うけど次はもっとうまくなりたいなって。
クリノ)いいですね。本当にその通りですね。
ミヤハラ)物を作るってそういう事かなと思っています。
クリノ)わたしももう十分仕事はしてきけど、単に飽きたくない・楽しくやりたいっていろいろチャレンジする事になる・結果成長するっていうことですね。
イイジマ)そういうところから新しいモノが生まれてくるんですね。クラシックじゃなくて”NEW CLASSIC”って僕らが言いたいのもそういう良いモノを飽きたくないという事だと思います。
クリノ)そうだね。レプリカではなくてね。袖がこうなっていたら絶対レプリカではない笑(イイジマ着用のScyeトラッカーを指して)
ミヤハラ)自分達もレプリカを作りたいのとはちがって袖がピボットスリーブの方がいいって思って作ったし、同時に最初にこのジャケットを作った人に対するリスペクトも感じてディテールは忠実にやることが失礼にならないと思っています。バブアーもそう。
バブアーってすでに完成したものがあるのに僕がそこでデザインするわけにはいかないです。機能を加えたりはあるかもしれないけど、それを変えちゃうのはどうかなって。襟の形だって前立てだってずっとこれでやってきているわけだから、そこを変えたらバブアーでないと。
クリノ)そうね。それはバブアーという名を借りてエゴを出しているだけになる。
ミヤハラ)バブアーの工場つかって自分の作りたい物作っているだけだと。リスペクトがないと失礼にあたると思うんですよね。
クリノ)前回別注していただいたヴァーシティにしてもDistrictで”トリュフの入ったチャーハン”つくっているわけでないというか。”チャーハンの美味しいやつ”作っていますという。変な変化球投げて人を驚かせるのが目的でない・それで目立とうとしたこともない。
ミヤハラ)そういう意味でDistrictは正統派じゃないですか
クリノ)トレンチもさらに進化もあるかもしれないけど2021年らしいまた一歩進化したトレンチをつくりたいなというのが今回の別注です。最近、ベルトをしないで着たりもするんですけど、今回のトレンチはエポーレットも取れるしベルトも取れるのでそういう着方もイヴ・モンタンみたいで、いい意味でおやじっぽい。いい意味でフレンチっぽい。
ミヤハラ)エポーレットが仮に好きじゃない人がいれば外すこともできる。実際に大げさで好きではないっていう方もいますし。そういう部分も広がりますね。
クリノ)僕はこの洋服はこういう風に着るべき、着て下さいっていうのはぜったい言わないです。モーターリバーコートなんかはベルト無しで着ている事が多いね。モノの完成度が高いから着る人のオリジナリティを出せるんだよね。
イイジマ)今のトレンチという感じがしますね。
クリノ)今回のトレンチはベルトを外した表情もいいねー。ある意味、裸な感じ。
イイジマ)トレンチを着たスナップとか改めて古い写真なども探して見ていたんですけど、ベルトもせず前も開けてヨレっと着ているおじいさんがカッコよくて。これもそういう着方が出来そうですね。
クリノ)あと、もともとヘビーデューティーなものだから、着て、濡れて、シワになってとどんどんカッコよくなるね。
ミヤハラ)そうですね。味が出ますね。
クリノ)そうなんですよ。これだけ完成度の高い物なんだから一着持っていればいいでしょってなりそうな物なんだけど…。実際何着持っているんだ?という。ほんとに。
ミヤハラ)やめられないですね。
-写真集“THE TRENCH BOOK“を手にして-
クリノ)僕はいつも言うんだけど、こうしてトレンチコートだけで本が一冊できるのも、やっぱり洋服ってカルチャーなんだよね。だからやる価値があるし、着る価値があるし、高くてもその価値がある
ミヤハラ)一つのアイテムで飽きないってのが凄いことですよね。
クリノ)僕がこんなに飽きないんだからお客様にも知ってもらいたいというのが今回の別注の趣旨ですね。
イイジマ)新しい世代にも知ってもらいたいという。
ミヤハラ)あと望むのは50年後に古着屋にならんでいることですね。
イイジマ)バーバリーやアクアスキュータムと一緒に笑
ミヤハラ)そうそう。だってバーバリーもアクアスキュータムも50年たった今古着屋に並んでいるという事は、そういうモノ作りをしていたってことなんですよ。
クリノ)僕が着ている一番古いバーバリーのトレンチは40年着ているかな。
ミヤハラ)そういう風になって欲しいです。
今15年栗野さんがそのスーツを着ていらしても全然古さは感じないですね。
クリノ)最近、またよく着ていますよ。
ミヤハラ)栗野さんのインスタは僕もよく見させてもらっていますが、実はScye率が高いんですよ!
イイジマ)そうですね。そのたびにタグ付けしています!
クリノ)やっぱりね。長持ちするし飽きが来ないから。
ミヤハラ)気に入って頂けて嬉しいです。
クリノ)良いものを作って頂けてこちらこそ嬉しいです。お客様にも喜んで頂きたいです。
クリノ)ボタンっていつ頃から別注していたんですか?
ミヤハラ)確か2008年とか…10年近くになります。今回のこのボタンも中央がすごく掘れて凹んでいるんですけど、実際は凹むことで薄くなって強度が落ちる…。そこで裏見てみらえると一枚ゲタを履かせて厚みを出して補強してあるんです。
全てのデザインには理由がある・何かしらの機能がついてくるというのは必要かと思いますね。
クリノ)ファッションのようでファッションではないというのがScyeの服の特徴かな。
イイジマ)そうですね。その人が着てスタイルを生んでいく服というか。
クリノ)そうね。着てはじめて形になる。ぱっと見ですごい変わった服というのはこのショールーム来てもないよね。今回のトレンチは襟を立てた横顔も素敵だね。
イイジマ)栗野さんに参考に見せてもらった80年代のトレンチの写真の印象そのままです。
ミヤハラ)襟を立てた時の裏の刺しミシンがまたかっこいいですよね。
クリノ)80’s色入っていると感じさせるのもまさにそこなんです。
ミヤハラ)あとは裾の蹴回し、背中におおきくはいるドレープと広がった感じがエレガントさを感じますね。
クリノ)結構蹴回し大きいんですね。
イイジマ)前から見るとそうでもないですけどね。
ミヤハラ)ここにドレープが入るのと入らないのとでは大きく印象変わるんですよ。
イイジマ)先程栗野さんが着用していた時の背中もとても綺麗でした。
クリノ)ウエスト位置も気持ち高めですよね。これはScyeさんの特徴だね。
ミヤハラ)腰下の長さが長い方がスタイルが良く見えるじゃないですか?変なはなし、ベルト一本分くらい高いかもしれない。
イイジマ)ということはアクアスキュータムなどのトレンチよりも高いということですか?
ミヤハラ)ちょっと高くしていますね。こういう風にしていった方がバランスがとりやすいんです。
クリノ)たとえばラグジュアリーブランドのコートとかはパッと見で目立つところに力を入れるじゃないですか?刺繍だとかロゴとか、例えばファーとか…でも、このトレンチはそういう目立ち方は一切していない。ところが着るとカッコいい。今日のScye Clothingのスーツもあるラグジュアリーブランドのオープンレセプションに着て行ったらマーク・ジェイコブスも居て。その時は初対面だったしいろいろ立ち話していたら、彼から“そのスーツカッコイイね!”って言ってもらえた。昔ながらのテイラーリングテクニックだし彼等には出来ない作りだからね。この時期のScyeのスーツは何着か持っているけど肩のしっかりした作りが好きで最近またよく着ています。
ところが肩がしっかりしている分コート選びが難しい。この肩は合うけどこっちには合わないとかね。当然だけど今回のトレンチのラグランにもすんなり合いましたね。
イイジマ)肩パッド入っているジャケットを着ている時に羽織ったコートが、“あ、このコートにはあわない”ってことよくあります。
クリノ)逆に昔のディオール・オムみたいに肩が入ってタイトなコートは今度は中に着るものに困っちゃう。なんでも四角くできているからコートの中にジャケットが着れない。
クリノ)実はScyeとしてはトレンチよりも先にモーターリバーコートが先だったよね。
ミヤハラ)そうなんです。セットインではなくピボットスリーブ、エポーレットなしで。フロントにパッチポケットのついたものですね。
クリノ)わたしもたしか鴨志田も持っています。いまでもニットの上とかに着ていますよ。シルクのトレンチとかもありましたね。後姿がエレガントでScyeのトレンチを着ているとモテるんだよね。わたしも宮原さんもモテキャラを狙っているタイプではないんだけど結果が綺麗な服だからでそうなってしまうんだよね。
イイジマ)狙っていなくてそうなるのが一番いいですよね。
-写真集“THE TRENCH BOOK“を手にして-
ミヤハラ)かなり大きいでしょうね。この本を見ているとステンカラーもトレンチの一種として捉えていますね。決して(一般的なトレンチを差して)このスタイルだけがトレンチではないという…。
クリノ)日本ではかなり前からアクアスキュータムとバーバリーのトレンチの違いをメンズ雑誌などで図解していたんだよね。それくらい日本人にとってトレンチコートってただのコートではないんだよね。
ミヤハラ)僕は両方とも研究していて。いろいろつくりやパターンも違いがあるんですよね。
クリノ)アクアスキュータムの方が細いんじゃないですか?
ミヤハラ)ほそいですね。もちろんモデルにもよりますけど。実は同じようなカラーなんだけど襟の作りが大きく違っていてアクアスキュータムのほうがつき襟と羽根襟の切り替え線のふくらみが違うんですよね。
僕は地襟をまっすぐ引くタイプなんですけど、(スケッチしながら)アクアスキュータムはここで一回膨らんだパターンになっていてなるほどこれが特徴なんだなと。これによって返り線の決まり方が違ってくるんですよ。
クリノ)これは台襟のことですよね?独特なカーブがあるってことなんだ。これは当時のアクアスキュータムのトレンチコートの型紙をひいていた人が理由があってそうしたってことだよね。
ミヤハラ)きっとそういうことですね。あとは見返しの処理の仕方とかもちがって。
実は見返し裏の裾にキセが入っていてこれはアクアスキュータムの処理の仕方。このほうが見返しに融通があって変に表が吊れてこないんです。こっちはフラシになっているのでいくらでも動くんですよね。たとえばその時の湿度だったり乾燥具合によって中の芯が縮んだり伸びたりしたときにも裾が変に反り返ってこない工夫なんですよね。今回のトレンチにも反映させています。
クリノ)いままでScyeのトレンチではそういうことはやってこなかった?
ミヤハラ)そうですね。あまりやってこなかったです。工場としては当然手間もかかりますし、手縫いの工程も増えますから最近になってやりはじめた感じです。
あとは裏地の裾と表地の間をよくチェーンステッチで固定しているのを目にしますが歩いていて足に引っかかって切れちゃったりぶらぶらしたり…。ちゃんと共生地でベルトをつくってミシンで固定しています。これはアクアスキュータムもバーバリーも同じようなつくりの事が多いです。
こういうところというのはやっぱりいいところはどんどん真似していかないと、良いモノが出来ないんですね。
襟腰の裏も丁寧にハンドタッキングで留めていますし。
クリノ)こういう丁寧なつくりっていうのはいま日本とイタリア以外で出来るところあるのかな?
ミヤハラ)いやほとんどやっていないんじゃないですか?そもそもマシンメイドだと出来る事でもないですし。合理的では無いですし。
クリノ)もちろん直線縫いとかミシンだけど裏地付けとかボタンとかこまかいところは手縫いなんだよね。
ミヤハラ)そうなんです。これだとボタンも手付けで根巻きしてって当たり前にやっていますけどこういうところも機械でつけちゃっているところが多いですね。
クリノ)Scyeの服を着ていて思うのがボタンを留めた時の隙間が甘くも無く、きつくも無くで…丁寧だなといつも感心します。
ミヤハラ)そこもちゃんと生地の厚みを計算して5mmだったり7mmだったりと首の長さを指示しています。7mmになるように根巻きを何回してくれって。
イイジマ)売り場に陳列した時にそういうところからも魅力がにじみ出てきているんだろうなと思います。
着ている人が思うというのももちろんそうですけど。
ミヤハラ)そうなんですよ。で、栗野さんが今日着ていらしていただいたそのコートの時はボタンも別注なんですよ。これは昔実際にこういうボタンがあったんですけど、それをナットでつくったんです。ボタン付けのクロスステッチが表面に盛り上がらないようにボタン中央に溝をきっていることで、摩擦も起きないしボタン付けが切れてこない仕組みなんです。縫い糸がボタン表面から盛り上がるとそのぶん擦れたりと必ず劣化が始まるのを防いでいる。ということは取れにくいんです。
クリノ)根巻きだって単に根巻きすればいいという事では無くて、最後の始末までしっかりしてあるから、Scyeさんのボタンは取れたことが無いです。
ミヤハラ)ちゃんとしっかりして中に押し込んでやっています。
イイジマ)なるほどー
ミヤハラ)やっぱり見えないところこそ大事だないつも思います。普通に売っていてアピールしなければ誰もそんなことは気付かないところですけど、我々のコンセプトとしていつも思っている事ですけど“Nobody Knows”ですね。誰もわからないけど自分だけが知っているモノづくりのこだわりで、着る人には関係のない事だけど実は着心地だったり長く着れたりということに関係してくる。
クリノ)手縫いの服が軽く感じるのもそういう事ですよね。
ミヤハラ)そういうところで違ってきますよね…。
クリノ)今回背中のアンブレラ・ヨークも大きめがいいとリクエストさせてもらったんです。男っぽくていいかと。
ミヤハラ)そうですね。これも大きい方が迫力があって良いですね。ちんまりしていない感じがかっこいい。
…このデザインにもいろんなバリエーションがありまして例えばバーバリーだったらもっと下がっていたり、アンブレラのカットがもっと均等だったりと。Scyeもまたオリジナルでやっていまして中央で大きく取ってサイドにアーチを作るという。あと特徴的なのは栗野さんからリクエストがあった腰ベルト裏のループ留め。これは大事ですよね。
これは実は作るの大変なんです。ベルトループもちゃんと二重になっていてしかも“はいで”いないんです。
クリノ)一本がグルっと回っているんだ!
ミヤハラ)そうなんです。下の裏側からスタートして上で折り返し縫い始めの生地と折り返しの間に入って、閉じ込めています。これも決して変な作り方ではなくて真面目に作るとこうなるという…。サルカンも融通が効くようなステッチの止め方になっています。
クリノ)ここだけに限らずScyeさんはステッチがきれいなんですよ。
ミヤハラ)そうですね。ステッチにはちょっとうるさいかもしれません。
クリノ)ステッチもね、どこかで縫い終わりとして終わらないといけないんだけど目につかない端の方で終わる様にちゃんと考えられている。
ミヤハラ)これは実はトレンチの話ではないですがシャツの縫い目にもこだわりがあって、カフスの左右で縫う方向を変えたりしていて、下前から始めると重なるからステッチを縫って返すという縫い終わりも目立たないように考えています。
クリノ)それもまた知らなかった!
イイジマ)それこそお客様が気付くところではないですね。
ミヤハラ)そこを押し売りするつもりはないですけど、知ってもらえると嬉しいですね。
クリノ)気付かなくてもね。丈夫だったり着やすかったりということにやっぱり関係してきますよね。宮原さんのところってこのベルトにはハトメだけでなくてバックルに菊穴のホールもつかいますよね?
クリノ)たぶんモーターリバーの初期もそうだったんじゃないかな。これも綺麗に出来るところが少なくなっているんですよ。
ミヤハラ)そうですね。菊穴ですね。タイプによっていろいろありましてこれは普通の菊穴ですが、もっと目立つところにある場合はボタンホールの穴かがりのようにまわりに一個ステッチを入れてかがっていくようなものもあるんですよ。こういう種類の菊穴がなかったら探したり新たにプログラムを組んでもらったり…。いまはミシンも全部コンピューターなのでロムを組まなきゃなんないんですよ。
クリノ)バックルを固定するカンヌキの位置もこれは完璧だけど、変な作りだとピンが中に入ってしまったり。時にはピンが逆を向いていたり…僕は洋服大好きだから(丁寧にあつかうけど)着たおすので着れば着る程ホントに良く出来ているなって感心することがあるよね。宮原さんのつくる服は特にそう。今日のScye Clothingのスーツのように20年選手がたくさんある。
ミヤハラ)ありがとうございます。
ホントに栗野さんにいうのは変ですけどそういうふうに本質を理解されて洋服を着ている方はなかなかいらっしゃらないし、普通のお客様なら当然ですけど、なんか着やすいんだよなって思ってもらえているだけで僕は十分かなって思っています。
クリノ)そうですね。全部知ることは無い。
ミヤハラ)なんかScyeの服ってちょっと着やすいんだよねとか長持ちするんだよねってそれでいいんですよ。
イイジマ)バーバリーとかもそういう存在ですよね。
ミヤハラ)で、今回のトレンチコートの発売はいつになりますか?
イイジマ)12月24日(金)を予定しています。
ミヤハラ)クリスマスイヴですね!みなさんへのクリスマスプレゼントになるわけだ。
イイジマ)ご自身へのプレゼントとしても良いと思います。
クリノ)プレゼントに買ってもらえると良いですね!女性にプレゼントもいいですね。
ミヤハラ)そうですね!デザインは男女兼用でいけますし。
クリノ)Districtってそういう意味では隠れ女性ファンも多いんですよ。
イイジマ)そうですね。Insta等を見て既に発売している物を見に来て頂けることも増えてきました。多分これも見に来て頂けると思います。
クリノ)Scyeは当初からウィメンズでもメンズの良さをずっと提案しているし、メンズを着る女性もいますしね。
ミヤハラ)逆に森山さんなんかウィメンズ着る事もありますし笑
クリノ)全然問題なく着れているね。
ミヤハラ)全然スウィッチできるんですよ。特に女性っぽく作っているわけではないじゃないですか?ウィメンズ作る場合、型紙で胸の高さをだしたりするブランドも多いですが、ウチは一切そういう事をしていないので。
ミヤハラ)いつも言っている事ですけどScyeの目指すところは“古着になりえる服”ということ。シーズン終わったらきれなくなってしまう服というのはあんまり考えていなくて…。長く着れしまうから商売には繋がらないのかもしれないけど、それってすごく大事なことで一番それがゴミにしないことにつながる。50年後100年後に古着屋さんにScyeの服があったよって僕の知らないところで流通していたりしたら天国で喜んでいますよ。
【Scye for District】
■NEW TRENCH COAT
1165-599-1524(BEIGE)
Size 36,38,40,42
Price 123,200JPY(Tax in)
※2021年12月24日(金)発売予定
※発売日は前後する可能性がございます
※通信販売のご依頼は発売日以降、週明けからお承りします。