ファッションウィークはいよいよ大詰め、今日が最終日です。足を運んだショーのなかから、フイナムのブロガーでもある井野将之さんが手掛ける〈ダブレット〉、そしてコアな服好きに愛される〈ナマチェコ〉の模様を紹介したいと思います。
まずは〈ダブレット〉です。会場に選ばれたのはマレ地区にある公立学校の中庭。ツーリスト風の家族、水着姿でビーチベッドに寝そべる夫婦、筋トレするカップル、ホームレスらしきひとなど、タイプの異なるエキストラを舞台に配し、学校のベルが鳴ると同時にショーはスタート。それまで役を演じていたエキストラの動きは止まり、彼らのまわりをモデルたちが歩く演出でした。ショーの途中には雪をイメージした白く細かいビニールが舞いはじめ、舞台一面真っ白に。夏を忘れさせるような光景になりました。
続く〈ナマチェコ〉の会場も同じマレ地区。こちらは1864年開校の「デュペレ応用美術学校」が使われました。シタールの音色と共に、色鮮やかなブルーのランウェーに現れたのは、エスニックな雰囲気漂う服に身を包むモデルたち。ポンポン飾りのついたパンツやニット、胸から下を巻きつけたようなデザインのポロシャツなど、エスニックテイストを強く打ち出すのではなく、さり気なく取り入れてくるあたりはさすがデザイン巧者。特徴的な白フレームのサングラスのせいか、グランジっぽい雰囲気もありました。会場にはこのブランドを最初に買い付けた、パリのセレクトショップ「THE BROKEN ARM」の面々の姿も。偶然か意図したものか分かりませんが、お店はショーの会場と同じ一角にあります。
編集部の村松が毎日お届けしてきたパリ滞在記もこれで最後です。
編集長の小牟田と合わせると25本のショー、プレゼンテーションや展示会を含めると30本以上のコレクションを取材しました。
コロナ禍以降、発表はデジタル上が主流でしたが、今回こうしてその場のリアルな空気を感じながらショーを楽しむ方が断然心に響くものがあると深く実感。
服はもちろん、舞台になる会場、モデル、演出、来場者、そして招待されたセレブをひと目見ようと会場外に集まる人々…。ショーは10分から15分程度です。その僅かな時間のために、膨大な時間とお金を掛けてつくるからこそ、エンターテインメント性というか、そこでしか味わえない多面的なファッションの面白さが生まれるように思います。
デジタルの発展と共にものすごいスピードで物事が進化していますが、やはりファッションはフィジカルで楽しむものなんだなと。閉塞感漂う時代のなかで、ファッションウィークが通常運転に戻ったのは大きな一歩だと思います。
リスクを負ってでもパリに来てよかった、そんなことを感じる6日間でした。