編集部の村松がファッションウィークについて綴るパリ滞在記。前半戦最終日の今回は、2年半ぶりにメンズのランウェーに戻ってきた〈ドリス ヴァン ノッテン〉を紹介します。
ショーの舞台は、パリの北側で17区と18区の間に位置する場所、Guy Môquetにある中古車ディーラーの大きな建物の屋上。歩いて上まで行くと、ヨーロッパ特有の強い日差しがちょうど雲で遮られ、気持ちいい風が吹いていました。
コレクションは「Unusual elegance」というキーワードのもと、夜の男、カウボーイ、ペテン師、夢想家など、異なる男性像を描いています。スーツをはじめ、ワークウェアやミリタリーウェアなどのデザインを常に用い、時代に沿った男のスタイルを提案するドリス・ヴァン・ノッテンらしい見応えある内容です。
“Unusual” という言葉の通り、冒頭ではフォーマルな格好に女性のワンピースを思わせるものやキャミソール的なものを合わせるなど、マスキュリンとフェミニンを混在させた自由なスタイルがつくられていました。これらはスタイリストのレイ・ペトリが中心となった、80年代の英国のクリエイティブ集団「BAFFALO」がつくるビジュアルからイメージを膨らませたといいます。
また、スイングジャズに合わせて踊る若者たちを指す、第二次世界大戦中のパリのサブカルチャー「Zazou」のスタイルもインスピレーションのひとつになっているそう。
ショーは後半になるにつれて、ストリート感やスポーティな雰囲気が組み合わさった、迫力あるスタイルが次々登場。シャツ地のパンツや軽やかな素材を使ったアウター類がいいアクセントになっていました。
そして最後は一斉に登場したモデルたちに合わせて、客席の後ろに設置された、棒状のバルーンが膨らみフィナーレを迎えました。
ラグジュアリーメゾンのように凝った舞台づくりではなく、会場や音楽など、シンプルなアイディアでひとの心に響くショーをつくるところも〈ドリス ヴァン ノッテン〉のすごさだと実感。昨日、このブログに書いたウォルター・ヴァン・ベイレンドンクもそうですが、彼らのクリエーションは錆びるどころか、いま冴えているように感じます。