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BLOG - 宮沢香奈(ライター)

Lockdown3週間、VOGUEにて新連載スタート

 

「When police carry out wishes from government, without any law being in place, you are living in a police state and it is no longer a democracy.When you are held under house arrest, when no crime has been committed, you are living in a police state and it is no longer a democracy.」

上記は、父親を亡くしたばかりのAphex Twinが投稿した文の中から抜粋したもの。
日本語訳はいろんな憶測と誤解を招く恐れがあるため、英文のままで。
こういったコメントを出すのは非常に珍しいらしい。世の中に存在する1人の天才による一つの解釈。

凡人の私は裸のままの足の爪を見つめる。ペディキュアを塗ったのはいつで、何色だったのかさえ思い出せない。
ルームシューズはモコモコしていたのに、今は魚モチーフのグリーンのビーチサンダルに変わった。
ハイツングは自分の役目を終えたかのように静かに冷たくなっていた。

まつ毛エクステのない顔はとても貧相に思えたのに、今ではそれが普通になっている。髪も伸びてきた。
素足の季節になったら履こうと日本から持ち帰ってきたクリスチャン・ルブタンはレッドソールのお直しに
出す機会さえ失って、
部屋の片隅で哀愁を漂わせている。靴やファッションを褒めてくれる人は今はもういない。

月に数回レストランでディナーをして、バーを数軒ハシゴして、夜中まで語らう。
エンターテイメントとお酒好きで溢れるベルリンの夜の街が大好きだった。

私という存在はそういったもので構成されているのだと気付かされる。そういった外部から得る刺激的で
魅力的なものたちによって、突き動かされているのだと実感する。
そして、こうなった今、自分の無力さにも気付き、深い深い溜め息をつくのだ。

有り難いことに、この状況下で通常の連載以外にも様々な執筆依頼を頂いている。
だから、クヨクヨしている暇などないのだけど、エンターテイメントから最も離れた場所にいる今、
私の発信する言葉に意味を見い出せるのだろうか?そう問わない日はない。

それでも、ラップトップを開き、空白のままの画面を何時間も見つめながら、どうにか言葉を探していく。
現状を伝えるレポート依頼も受けたし、早く街の様子を撮影しに行かなくては。今この瞬間しか撮れない景色もある。

Sigur Rosが頭の中をループする。究極にピュアで美しい世界。今最も必要な愛に溢れた世界。


6時に日が昇り、8時に日が落ちる。

ロックダウンから約3週間が過ぎたドイツは、隣国オーストリアとともに一早い制限緩和の検討を始めた。

お知らせですが、VOGUE Japanが新たに提案するコンテンツ”VOGUE CHANGE”にて、連載を持たせて頂くことに
なりました。”sustainable”のカテゴリーで毎月世界のファッション情報をお伝えしていきます。
第一弾は、ベルリン発のサステナブルファッションレーベル”Manakaa Project”を紹介しています。是非ご覧下さい。
https://www.vogue.co.jp/change/article/manakaa-project

 

 

 

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