備忘録として書き留めておきます。
先日、友人アーティストの展覧会に顔を出しました。訪れた時間がたまたま僕ひとりだったので、その彼とサシで近況や他愛もない世間話を。お酒も入りつつ。
年明けに高島屋で開催していた彼の展示会にも顔を出したのだけど、率直に感じたことを伝えた。
それは何か。値段があまりに安いと。
彼とはまだ売れない画家の頃からの仲だが、もちろんその頃に比べれば売れっ子になったし、並み居る日本のアーティストでもトップクラスだと思う。
アートとは難しいもので、資材や手間をかけたからすごい、わけでもなく、10分足らずで描いた落書きだって、10年かけた油絵と同等かそれ以上の値打ちだったりする。バンクシーのように。
そもそも価値など有るようで無く、無いようで有るものだ。
だから余計に自分で値段をつけろというのは難しいが、彼の作品は現在数十万から数百万円という。それじゃダメだよ、僕でも買えるじゃないかと。
僕のなかでは一千万円していい。もうそのクラスにあると思うし、そうでなければ。
たとえば、僕がいま依頼されて庭を創るとする。デザイン料のほかに材料費や技術的な期間と実費があるが最低で数百万円はかかるし(庭を一から造れば)、規模や度合によれば一千、二千万ということにもなる。
では彼のアートはそれと同価なのか? いや、それは違うだろうと。遥か凌駕するものでなければいけないはずだ。
少なくとも僕はそう思うし、負けねえぞという気持ちにもなる。
【 御神獣画展 】朝日新聞デジタル
あと少しやってます。興味ある方は是非。
また先日、スタイリスト時代の先輩たちとの酒席でも同じような話しをした。現在日本のスタイリストのギャラ相場は安過ぎると。広告一本で百万くらい? で、その仕事が月に何本あるのか、こなせるのか。じゃあその広告のスタイリングする相手(俳優さんだとか)は幾ら? 数千?億?
正直舐められてないですか。日本のクリエイティビティへの対価って。せめてその数分の1でもないと。それより上でもいいし。
あとはスタイリストが雑誌1ページやタレントさんひとりをスタイリングするギャラって、僕がただの庭師職人として手伝いに行く一日のギャラと同じ。(と言っても僕の職人工って最高額だけど)
もちろんスタイリングはその前後の苦労があるから割りがいいのは庭師の方ってことになる。
夢なくない? まあ、稼ぎが全てじゃないけどね。
Instagramのストーリーズで呟いたのだけど。庭師ってのは本当にurbanな仕事で、東京と限らずとも京都や地方都市でしか成立しない。
何故なら暮らしが豊かなひとが多いから。
暮らしに余裕がなければそもそも大きな庭など持てないし、庭をオーダーメイドすることも、そのメンテナンスにわざわざ庭師を呼ぶこともないのだ。
そういう意味で、こと東京にはまだまだ本当に驚くほど豊かなひとたちが住んでいる。コロナ禍の不況などまったく動じていない、そう感じるほどに。
なんならこの一年仕事量は増した。たぶん外に出ないぶん余計に家のことに手を掛けたくなったのかもしれない。
クリエイティビティへの対価もまだこちらの方が正当な気がする。
庭師の村雨辰剛くんと下北で一杯。酔った勢いで挑んだ腕相撲は惨敗でしたが、庭師としてもきちんと考えがあっていい話しができたかな。