前回のプロジェクトの件。無事にやり終えました。
場所は茨城にあるワープステーション。ここはNHK大河ドラマ『いだてん』など撮影するような江戸時代から明治、昭和初期の昔の日本の街並みを再現した広大なオープンスタジオ。レトロな洋館やレンガ敷の街並み、そこを路面電車のレールが走っていたり散策するだけでも楽しい。
そんなスタジオの一角、昭和初期の東京下町長屋路地を抜けた先にある庄屋邸。ここに庭を作るというのが今回の仕事でした。
もちろんオープンスタジオだから既存の家はありますが、それ以外は何もないゼロからの作庭。
施工前
完成
わずか2日でここまで仕上げるのは大変でしたがやりがいがありました。庭師として誇れるクオリティだったと思います。
この和庭を造るのに普段のテレビ美術さんではなく、ホンモノの庭師にやってもらいたい、というオファーにグッときました。(造園のテクニックやセンスに加え、8K映像に耐え得る嘘の無さなどが理由)
しかもただ真新しい作庭でなく、まるで100年前からあるような考証や経年変化を踏まえた和庭。それはとあるイメージの可視化であったりするので、ただの庭師ではここまでしない、できないのではないかとも思いましたね。我ながら。
まず和庭をイチから作ること自体、いま庭師でもなかなかやらないし、さらに崩してみたり、荒らしてみたりと数十年経ったようなエイジングを施すなんて、誰ができるのだろうと。
そこはやはり元舞台美術的な経験とか、元スタイリスト的な感覚が大きいとあらためて感じていて、いまやっていることはその集大成みたいなもの。つまりどれも無駄じゃなかったんだなァと。
もうひとつ、舞台美術、スタイリストにしろ庭師もまったく違うようでじつはあまり変わらない。何かを扱いどう魅せるか、映えさせるかみたいな。結局ずっとそういうコトが好きなんですね。僕は。
すきこそものの、上手なれ、なんて云いますけど、ほんとうに。
ところで、みなさん和邸や和庭、しいては日本の魅力ってなんだと思いますか?
それは『隠美』、『影』なんです。
洋の文化は『影』を嫌い、大きな窓を設けたり、エントランスを大きく開かせたりと極力それを無くそうとしたんですね。光で真っ白な空間という。
あえて影を作り、しっとりとそれを楽しもうとした、日本の独特の良き文化だと思います。
ネタバレしそうなのでこれ以上はやめておきますが。笑
ではまた。