繁忙期ってありますが、庭師の場合3月から12月までずっと。
しいて言えば真夏はちょっと落ち着く感じですか。
日本の習慣だと年末に大掃除して、庭も綺麗に整えて、気持ちよく新年を迎えようとする。するとだいたいいま時分から依頼が増えはじめ年末まで大忙し、というわけ。
ただ現代は庶民の暮らしも住居環境も変わり、都心はビルやマンションだし、こだわりの庭を持てるのは相当な富裕層。若いカップルが憧れる平屋や古民家で欧米風なおしゃれな庭ってのは必然的に神奈川方面などです。
そのどちらの人たちとも相対しますし、また富裕層、庶民のどちらがいいではないですが、ひとつ言えるのはどちらも庭や植物に興味があること。
逆に相対して仕方ないのは興味がないひと。たとえばマンションにもデザイン上、草花は植えられてますが、そこに住むひとたちは経験上ほとんどどうとも思ってない。
民度というと失礼ですが、やはり暮らしの余裕や心の豊かさみたいなものは感じてしまいます。
ちなみに庭師というと誰もがイメージする刈込み鋏かなんかでチョキチョキするの、あれは「手入れ(メンテナンス)」で庭木を維持するのにもちろん大事な作業なんですが、日本のそれと言うのは外国とは違い、ガラパゴス的に発達したもの。
わかりやすく松の木なら、枝の先にポン、ポンと丸くなってますね? あれも玉造りという独特な方法であんな姿は日本にしかない。松なんて世界中に生えてますけど。だから観光客は写真に撮るわけです。
じつは、そういう独特な手法こそ日本の庭師が食べていくために生み出したもの。日本やヨーロッパでもガーデナーとは本来庭をイメージして具現化する仕事ですが。
もちろんクリエイトしおわれば仕事はお終いです。なので、時間が経って伸びてきた草木を切ってあげる。本来空いた手の余興仕事みたいなものだったはず。
でも仕事がないひとは余興のほうで食べていかねばならず、しかも強くバッサリ切ると仕事はまた一年後。だから、チョンチョンとつまんで「ハイ、また来月ね」っていう。
日本庭園の綺麗サッパリ感も日本人の美観てのもあるけど、いっぽう庭師の勝手な都合も多大に影響してると思います。同じようにガーデニングが発達したイギリスでは、まったく考えが逆ですからね。
だからって先人を否定するわけじゃありませんが、純和庭園を造る機会などいまはほぼないですし、扱う植物もオーストラリアやアフリカ産のものが主流。そういったものに旧来の手法は合いませんし、つまりその新しい植物のどんな姿が魅力かわかってないといけない。
庭や空間が肉体なら、植物は洋服と同じファッションです。やはり流行り廃りがあって、プロになると見れば何年代くらいに作った庭かすぐわかります。
いまならオージープランツ系のドライガーデンですか。あと観葉ならアデニウムや多肉や珍奇植物系?
でもこれも僕らはすでに何年か前で、もはや食傷気味。専門業界の流行はちょっと先に行き過ぎていて、雑誌や世間はまだ追いついてません。
なにがどうってのは企業秘密ですけど。
これ、すごくわかります。