BLOG - 渋井勇一(RASSLIN'&CO.代表 / Mountain Martial Artsディレクター)

2013年のトレイルランニングザック。(GOOD PRODUCTS 100)

(インスタグラムから転載・加筆/初出 2020年7月30日)

GOOD PRODUCTS 100 (004/100)

ULTIMATE DIRECTION PB Adventure Vest
購入時期 2013年

ぼくがトレイルランニングを始めた2010年頃は、ほとんどのトレイルランニングザックは登山用をベースにしていたのだと思う。激しい動きに対応するためかフレームをなくし、素材を薄手の軽量に変え、ハイドレーション仕様だった。

しかし、ぼくはハイドレーションが苦手。もともと山文化に慣れていたわけではないし、背負っているので水の残量がわからない。メンテナンスは面倒だし、なによりプラスチック臭がするので美味しくなかったのだ。

そして2012年、Salomonからハーネスにボトルホルダーが付き、ウエストにベルトがないベスト型のキリアンザックが発売される。一部のコアなギア好きとハイパフォーマンスランナーの間で話題になり、ぼくもロングレース用に購入した。

個人的にはこれは革命だったと思う。トレイルランニングに正面から取り組み、必要とされる機能を形にした専用ザックがついに開発されたのだ。ここから一気にトレイルランニングのザックは進化した。

そうした状況の中、聞き慣れないブランドがやけにかっこいいザックをリリース。容量ごとに有名トレイルランナーの名を冠したシグネチャーモデルは赤と白の色も鮮やかで、なにより白い部分はキューベンファイバーを使用しているという。攻めている。

そのブランドの名は「Ultimate Direction」。このシグネチャーシリーズで一気にトレイルランニングザックの人気ブランドに躍り出た。ハーネスのボトルホルダー。重心が高くなるようなフィット。豊富で使いやすいポケット。現在のスタンダードがここに詰まっている。ぼくも容量の多いPB Adventure Vestを速攻購入。

この初代PB Adventure Vestを購入してから、すっかりUltimate Direction好きになり、自分のブランドでオリジナルザックを作るまでは何個も購入して愛用し続けた。ただ、赤と白が特徴的なこの初代を超えるインパクトは後継モデルからは感じられなかったように思う。

Ultimate Directionは新興ブランドと思っていたのだが、1985年創業の老舗だった。しかしパッとしなかったところにトレイルランニングザックでブレイク。UDだけではなく、2010年頃から2013年にかけてトレイルランニングカテゴリーで様々なブランドが新しい価値観を打ち出してきた。ALTRA、HOKA ONE ONE、そしてMOUNTAIN MARTIAL ARTS。

トレイルランニングという新しいカテゴリーは技術の伸び代が大きく、新しい価値観を提案しやすい土壌があった。

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