BLOG - 岡田哲哉(グローブスペックス 代表)

最も美しいメガネ。

仕事柄、毎年世界中から発表されるたくさんの新作メガネを見る中で魅力的なデザインにも数多く出会います。各国のデザイナーたちは見たことない様な構造を発表したり、楽しい色使いでワクワクさせてくれたりします。毎回、この新しい発見を日本でお客様に紹介するととても喜んでもらえます。だからこそもう30年以上も毎年、世界各国の展示会を訪ねたり、小さなアトリエにも出向いて魅力的なメガネを探し続けています。

Lunor」の創始者であり、「Gernot Lindner」のデザイナーでもあるGernot Lindner氏が思うメガネの美しさはその様なデザインの流れやトレンドとは別次元のところにあります。それが彼のデザインの大きな特徴であり、ディテールとして全体に表現されています。

Gernot氏は1960年代から80年代に掛けて当時世界最大の眼鏡メーカーであった「American Optical」のヨーロッパ支社に勤めた後、1992年に自身のブランド「Lunor」をスタートさせました。Gernot氏は14歳の頃からアンティーク眼鏡の収集を開始。長い年月を掛けて膨大な数を集め、世界的にも有名なアンティーク眼鏡のコレクターとなりました。日本を始め幾つかの国の眼鏡博物館に寄贈するほどでした。

上の写真はすべてGernot Lindner氏の私蔵アンティーク眼鏡コレクション。

上の写真はすべてGernot Lindner氏の私蔵アンティーク眼鏡コレクション。

Gernot氏は長年に渡ってアンティーク眼鏡を収集する中で、そこに宿る美しさの理由を掴んでいきました。そしてGernot氏はその理由を存分に生かして「Lunor」のコレクションを作り上げたのです。Gernot氏の審美眼とセンスが存分に発揮されたブランドはハリウッド俳優や有名アーティスト、スティーブ・ジョブスに至るまで、世界中の人々に愛されてきました。以前のブログ「Lunorの秘密」でもそのことを説明していますので、良かったら見てみて下さい。

2018年にGernot氏が自身の名前を冠したブランド「Gernot Lindner」を立ち上げた際、このアンティーク眼鏡の美しさのエッセンスを、今度は「スターリングシルバー」で表現したい、と言う情熱から新たなプロジェクトがスタートしたのです。

19世紀末に起きた産業革命前までは、一般の人たちの識字率は低く、メガネを持てる人は貴族や宗教関係者など、字が読めてお金もあるごくごく一部で、特権的な持ち物だったのです。そのため中世のメガネは金や銀などの貴金属が用いられ、ケースにもそれに相応しい素材や装飾が用いられていました。

アンティークの眼鏡を収集してきたGernot氏は、自分のデザインを「銀」で表現したい、と言う願望を長年持ってきました。「銀」は美しい色味と質感を持っていますが、素材そのものは柔らかすぎてそのままではメガネとして使えるものでは無いのです。そのため彼は3年の歳月を掛けて銀の加工法を研究し、十分な剛性とバネ性を持たせることに成功しました。2018年に満を持してスターリングシルバーのメガネコレクションである「Gernot Lindner」を発表したのです。

コレクションのデビューから2年が経過しましたが、今春ますます磨きの掛かった新型がいくつか登場したのでご紹介します。

まずはオクタゴン型。古いメガネというと丸型をイメージする人も多いと思いますが、八角形の玉型はアンティークの眼鏡の世界には欠かせないスタイルです。

さらにディテールを見ていくとGernot氏のアンティーク眼鏡に対する審美眼が存分に生かされていることが良く分かります。

クラウンパントゥ型である「KYOTO」はもうすぐオープンする「グローブスペックス京都店」を記念して作られたモデルです。また今回、リム(レンズを入れるフチ部分)を酸化処理して黒く着色した「ブラックリム」も発表されました。

そしてGernotデザインといえば欠かせないのはラウンド型。デビュー時からある最もオーセンティックなスタイルですが、やはり「ブラックリム」がオプションとして追加されました。

Gernot Lindner」は派手な眼鏡ではありません。とてもオーセンティックでむしろ地味なメガネですが、とても上品で知的なイメージです。流行には関係なくずっと長く愛用できるデザインであり、最も美しいメガネです。

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