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BLOG - 松井明洋(MEDIA SURF COMMUNICATIONS / STOCKHOLM ROAST)

時間とその積層と香りのはなし。

2020年2月1日にオープンしたK5は今年の同日に4周年を迎え、5年目に入ります。

振り返るとこの4年間、様々なことがありました。やはり大きいのは感染症によって、国境が閉じ、人々の往来は止まり、集う行動は制限をされて、今までの当たり前が全くそうでない社会、というものが構築されたことでしょうか。

そして、現在、国内の状況に目を向けてみると、とても心が痛むような状況が続き、一刻も早い復興を願い、また、国外で起きている争いも落ち着きを見せる状況とはほど遠く、これからの社会の行く末を案じずにはいられません。自分達であれば、今、何ができるのか、ということを考えたいと思います。

さて、来る2/1に我々のK5は4歳になります。4周年を考えるにあたり、「時間」と「香り」の関係性、ということに想いを巡らせていました。香りは時間を遡らせ、一瞬過去にあなたを連れていきます。

僕個人の体験になってしまい、恐縮ですが、振り返ってみると常に体験と香りはセットだったように思います。

ポートランドのホテルのロビーのコーヒーの香りと少し古い家具の独特の匂いが混じったものと、そのロビーで数年ぶりに再会した友人との感動は瞬間はセットで、その時の興奮をあの空間に身を置いて、香りを吸い込むと思い出す。

ストックホルムの好きなレストランの熱気と活気、漂う料理とワインの香り、そして、そこでの友人たちとの質量をもった未来についての会話は、いまだにその場所で(一人で訪れたとしても)詳細まで思い出すわけです。

香港の路地裏を人生の先輩とふらついた時に漂っていたなんとも言えない香りは、そこを歩いたら、またあの湿度と気温の高い夏の日の夕方に私を連れ戻すわけであります。

そして、銀座を歩いていて、すれ違った人の香水で思い出すあの人は元気かなあ、なんて。(本件についての詳細はこの度全力で、省略)。

香りは質量を伴う過去の時間への短い旅路にあなたをいざなうわけですが、今回、逆のことを実現できないかと思い至りました。つまり、最初から、過去の時間を香りに閉じ込めることができないか、と。で、それがこれよ!と言い切れないか、と。

なんとも、とんちのような話ですが、内容はシンプル。

・K5を象徴するものとして壁に使われている杉材=シダーウッドの香り=100年

・K5が入居する、兜町第五平和ビルの1階の床、楢に生息するオークモスの香り=4年

・調香師の方が兜町の今、というものを捉えた時に思いついた百合の香り=現在

この三種の香りを調香し(ありがとうVadle Beauty!)、100年、4年、そして現在という異なるレイヤーの「時間の積層」というテーマで香りを作りました。若干数販売もします。

時間が相対的なものである、と発見したのはアインシュタインですが、我々が実生活でそれを認識することは中々難しいのではないでしょうか。相対性理論について聞かれたアインシュタインが「ストーブの上に手を置くと永遠、素敵な人と時間を過ごすと一瞬」(意訳)と答えたとありましたが、物理学の世界から離れてそういった実体験を伴う「相対的な時間」の見方をしてみると、これはまさにK5が、そして日本橋兜町・茅場町が追い求めることに通じるのではないでしょうか。時間には密度も質量も色合いもそのスピードも様々で、つまり相対的であって、大事なことはそれがしっかりと確実に積み重なること。そして、今回は香りで表現しましたが、その積層を定期的に可視化していくことの重要性。

あ、そうだ。ちなみに、ここだけの話、“Time is relative, okay?”  というセンテンスは僕のとても好きな映画の一場面から拝借しました。時間は相対性をもって進むけども、巻き戻すことはできない、と。

今回も素敵なビジュアルを作ってくれた大西さんいつもありがとうございます。

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