やっぱり言っておきたいこと。
1シーズンの出来事、これが全てデザイナーただ一人から出てきたこと。
まずそんこなことは僕らにしたら、まるでない。
出だしは自分かもしれないし、一緒に考えてくれてるうちのスタッフかもしれないし、いつも一緒にあーだこーだ言ってるうちの奥さんかもしれない。
ケツメイシの「出会いのカケラ」じゃないけれど、出会えた人がまた成長させてくれる。
まず大事だと思っていることは、疑問は持ってくる。
それに対して、自分の考え方がある。
例えば、世の中で当たり前とされているとこ。世間一般的に“普通”と言われていること。
今回だったらパラリンピック以来、多様性を謳っている世の中。
いや、オリンピック、パラリンピックが終わってから急に聞かなくなったかもしれない。
あれだけ「Diversity and inclusion 」ってアイドルのキャッチコピーみたいに聞いていたのに。
重い、想い、そんな言葉なのに軽く使い過ぎてんじゃないかと。
それについての自分の意見や学んで知った話などもあるけれど、今回は言いたいことはこちら。
生き物、というか動物が大好きです。
ファッションのためだけに、動物を犠牲にせざるを得ないリアルファーにはやっぱり反対です。
いいじゃん、フェイクファーもリアルになってきたし。
そんな考えでいました。
そんな中で突然依頼してもらえた学生たちの毛皮をつかったファッションの審査会。
モード学園の大先輩経由のオファーだったので悩みに悩んだけど、「いま自分はファッションのために犠牲になるリアルファーを出来るだけ使わないようにしたいと考えているので、審査をする資格がありません」とお断りをしました。
けれど、ずっとモヤモヤしていました。
僕、そして私たちは、ファッションに関わることをクリエイティブな視点から考え、それをビジネスとして成り立つようにもってくる言わばスタート地点の人間。
それをはなから「リアルファーNG」
なにしてんだと。クリエイティブのクの字もない意見だし、お前の都合だけで図るなと。それに対して何が出来てて、だからそういうことが出来るんだと。
完全にマイナス思考になった自分から出た意見。
そんなモヤモヤを1ヶ月くらい抱えてたある日、毎シーズンコラボレーションをお願いしている「beta post」「ED ROBERT JUDSON」のデザイナーの江崎くんからポロリと。
「井野さんてデッドストックの毛皮を蘇らせること、興味あります?」って。
自分的に例えるなら「千と千尋の神隠し」のハクが目醒めたときくらいの、河を逆流出来るくらいの感じでした。
なんて自分の考えが浅はかだったのかと。
「ファーフリー運動に賛成!」みたいな考え方。
お前はいつからラグジュアリーブランド視点になってんだ!ってゲンコツをくらった感じでした。
そうして目を覚ませてもらった22年秋冬。
そこから作ったのは、廃棄してしまう毛皮の服の裁断クズを集めてその毛を刈ってリサイクルウールと混ぜてブランド初の糸から紡績した「リアルファーを使ったフェイクファー」や、10年以上も倉庫に眠っていた毛皮の衿のパーツを35個くっつけて作ったコート。
こんな考え方がほんのちょっと前から出来ていたら、ファー審査の学生たちにちょっとでも違う意見を話せたかもしれなかったのに。
自分が残念です。
下記のショーもいろんな方々からご意見もいただけました。
江崎くんに教えてもらったこと、演出の白坂さんが最後まで粘ってくれたこと、一哲さんの写真やDemiさんのスタイリング、immaちゃん手がけるAwwの守屋さんやLynさん、クロちゃんにリサさんにケンさん、エキストラを買って出てくれた東京モード学園やバンタンの学生さんたち、そして25人のモデルをやってくれた人にうちのスタッフたち。
そんなみんなで作り上げたショーを何時間もかけてた原宿から観光バスで移動して来てくれたメディアさんやバイヤーさん、そしてクリックして視聴してくれた方。そんな皆さんに届けられることができたらいなって。
ショーの感想ぽくなっちゃうとまた別の話になっちゃうので、きちんと。
このブログで言いたかったことは、江崎くん。
毎シーズンコラボレーションをしてもらっているからではない。
やっぱり彼の考え方が尊敬できる。
印象的だったのは今の時代に、毛皮の服やバッグを持つことを彼はこう言った。
「“踏み絵”ってわかります?」
今自分がいる位置が10だとしたら、きっと彼は50にいるんだろうな、って思いました