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BLOG - 岡田哲哉(グローブスペックス 代表)

グローブスペックス渋谷店。

1998年4月、「グローブスペックス」の最初の店として渋谷店を開業しました。現在の場所の隣にあるビルの3階で今の1/4ほどの小さな店でした。

1998年当時の最初の渋谷店。

当時、ファッションを志向する眼鏡店はいくつかあったものの、みな若い層に向けて値段も安めの商品を出している店が多かったのですが、「グローブスペックス」は始めからThe Spectacleのアンティーク眼鏡やルノアなど、けっして安価ではない本物志向のブランドや、ハートマンのバッファローホーンの眼鏡・アクセサリー、セリマやアン・バレンタインのポップでカラフルなコレクションを扱うなど、他店とはまったく異なるユニークな品揃えを準備してスタートしました。

当時不況だったため、他店に比べるとやや高額な品揃え中心のスタートは向こう見ずでダメだろうとまわりで言う人たちが多く、始めの1週間は誰も来ず…3ヵ月くらいでもうダメかと思ったりしました(笑)。

しかし、開業前に事業計画を相談していた実力派のライターの方が3つの有力男性誌に取り扱いブランドと店の大きな記事を書いて下さり、それを見て取材に来て下さった多くのメディアの紹介記事に助けられました。

『PEN』1998年7月号

『Men’s EX』1998年7月号

『Monthly M』1998年7月号

そして定期的に世界中のデザイナー仲間たちが来日してイベントを継続的に行うなどした結果、多くのお客様が顧客になり、1年後には書店に並ぶ、ほとんどどの雑誌で店と取り扱いブランドが紹介されるようになって軌道に乗りました。

LunorのデザイナーGernot Lindner(左)と、The Spectacleの収集家であるJay Owens(右)が一緒に行った幻のイベント時の写真。

毎回人気が高いNY、セリマのトランクショー。

創業20年目だった2018年には、毎年ミラノで開催される眼鏡の国際展示会「MIDO」にて、毎年世界中の眼鏡店の中からユニークさや新規性の高い取り組みをしている店を審査して選定する「Bestore Award」を受賞し、世界一の眼鏡店に選ばれました。2017年の代官山店の受賞に続いて2年連続受賞となりました。

21年ほどの間にこんな歩みがあった「グローブスペックス渋谷店」ですが、始め15坪、2003年からの場所が30坪、2010年からの現在の場所が62坪と徐々に大きくなったこともあり、一番始めの小さかった店から家具や什器も徐々に増えていったのです。以下、渋谷店の特徴になっている家具や装飾品をご紹介します。

イタリアの著名ブランドの日本1号店で使われていたディスプレイ。2台で1万円。

最初から使っている什器はこの鉄とガラスの什器で、要所に木とレザーを使っているところも気に入っています。この什器、知り合いだったファッション業界の人に2台1万円で譲ってもらったのですが、実は誰もが知る某イタリアブランドの日本1号店で使われていたモノです。知り合いのファッション業界人がイタリアブランドから譲り受け、そして今はウチの店にあるという訳です。

1960年代にフランスの郵便局で使われていたPost Office。

「グローブスペックス」の店舗家具はそのほとんどがビンテージやアンティークです。この家具は1960年代くらいにフランスの郵便局で使われていた郵便物の仕分け用デスクです。もともと下に収納型のスツールがあったのを外し、郵便物の脱落防止ネットは商品が見づらかったのでカット、さらに後ろに照明を入れて陳列商品を見やすくしました。

アルネ・ヤコブセンの椅子。

ハンス・ウェグナーの家具。

スタッフ用スツールは1960年代のボシュロム社製。

お客様の座る椅子はすべて良いモノを用意しています。カウンターの椅子はアルネ・ヤコブセンのオリジナルで1960年代のビンテージです。検眼室前の椅子とテーブルはハンス・ウェグナーでこれらも1970年代のビンテージ品です。実はカウンターのスタッフ側のスツールもボシュロム社が眼鏡店の検眼室用に製造していた1960年代のビンテージです。

入口に飾った1910年頃のヨーロッパの古いメガネ店の看板。

1920年代にドイツのメガネ店で使われていたテストチャート付き3面ミラー。

ルノアの創始者であり、自身の名前を冠したスターリングシルバーのアイウェアコレクションのデザイナーであるゲルノット・リンドナーは、アンティークのメガネや古いメガネ店の装備品のコレクターでもあります。入口にあるのはゲルノットから譲り受けた1910年代のヨーロッパのメガネ店の看板。店内奥にはやはりゲルノットからもらった、1920年代にメガネ店で使われていた老眼のテストチャートが付いたミラーです。

70年代くらいまでフランスでメガネ製造に使われていたスタンピングマシーン。

クラウンパントゥを製造していたスタンピングマシーン用の金型。

Lesca Lunetierはフランスの伝統的なメガネのデザインを伝承するブランドですが、そのフレンチデザインのスピリットを日本で伝えるべく、フランス・ジュラ地方にあるかつての生産地から、70年代くらいまでメガネの製造に使われていた「スタンピングマシーン」を展示し、熟練の職人がそれを操作するムービーも見てもらえるようにしています。Lesca Lunetierのディスプレイエリアでは「スタンピングマシーン」用の金型も見れます。人気のクラウンパントゥを製造していたものです。

Merryのモモコさんの店内壁画。

Peter Sedgwickによる外壁のウォールペインティング。

創業20周年を祝した竹内俊太郎さんの作品。

ガマさんの犬縫いぐるみ。

齋藤洋久さんのアート作品。

「グローブスペックス」の店舗は基本設計自体も初年度からのお客様であり、トータルブランディング コンサルタントのSy Yu Chen氏と行ってきました。店内の装飾もお客様であるアーティストの方々にお願いしています。店内壁画はMerryのももこさん、公園側ウォールペインティングはNYのアーティストであるPeter Sedgwick、入口から入って右手のアートワークは20周年記念イベントの際に竹内俊太郎さんが作成してくれました。入口脇の2体の犬のぬいぐるみは私が10代の頃からリスペクトしていたデザイナーで、Cozo CompanyやM16のファッションブランドを手掛けていたガマさんの作品。検眼室前のアートワークは宮沢りえさんの一連のCMなどを作っていた敏腕プロデューサーで、今はアーティストとして活躍する齋藤洋久さんの作品です。

真空管アンプのビンテージ・オーディオ。

車のカーオーディオ。

幻の名スピーカーであるJensenの同軸3Way。

私はいろんなジャンルの音楽が好きですが、自分で聞くのはクルマの運転中が多く、車載のカーオーディオにはかなり凝っていました。渋谷店では落ち着いてリラックスしてお買い物して頂けるようにジャズを中心に流しています。機材は柔らかく深い音が楽しめるマッキントッシュの真空管アンプを中心に、スピーカーはたまたま縁があって手に入った、幻の名器といわれているJensenの同軸3Wayで鳴らしています。

この様に「グローブスペックス渋谷店」は21年の時間の経過と共に面積も大きくなって、徐々に家具や装飾品も増えていったので計画的にデザインした店とは全く異なり、良い感じにゴチャゴチャしていて、店の中をあちこち見渡すと「グローブスペックス」の歴史が垣間見えるモノが点在しています。まだまだ店内には面白いモノがあちこちたくさんあるのでぜひ来店時に見てみてください!

ちょうど新年を迎える正月のディスプレイができ上がったところです。代官山店の植栽もお願いしていて、やはりお客様でもある中目黒「chibi」の芳賀さんの作品です。毎年、華やかでありながら厳粛な気持ちにさせられる新年のディスプレイを作ってくれます。

2020年が皆さまにとっても素晴らしい新年となりますように!

いつも植栽や正月のディスプレイをお願いしている中目黒「chibi」の芳賀さんと。

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