BLOG - フイナム編集部

Day 4:Paris Fashion Week 2025AW

編集部の常重が現地からお届けする、パリメンズファッションウィーク。シャワールームのトラブルが解決したと思ったら、次は朝イチでトイレが詰まりました。とほほ。

フロントと話す時間がなかったので書き置きをして部屋をあとに。一応謝ってみたけど、完全にぼくのせいではない。ほんとに。戻ったらちゃんと直ってるといいな。

この日は朝からあいにくの雨。定番化しつつある朝のクロワッサンをペロリとたいらげ、最初の予定である〈ジュンヤ ワタナベ マン(JUNYA WATANABE MAN)〉のショー会場へ向かいます。

ショーは年齢層高めのモデルで構成。前シーズンのテーラード中心の世界観とは打って変わって、アメカジ、アメトラ、ワークを想起させる究極の“おじさんルック”を身につけたモデルが伽藍堂のスペースを闊歩します。

なんだか懐かしい、ぼくからしたらこれぞ〈ジュンヤ ワタナベ マン〉というコレクションだったように思います。

1シーズンで多数のコラボを展開することでも知られる同ブランドが、今回の相手に選んだのは〈フィルソン(FILSON)〉です。なかでもブランドを象徴する「マッキーノクルーザージャケット」をメインに構成された今回のショー。

両ブランドのアイデンティティが見事に溶け合い、新しいカタチのワークウェアを提案していました。

それにしてもモデル選びが秀逸。リアルなワーカーたちの土臭さが滲み出た、極めて完成度の高いコレクション発表だったように思います。

続いて向かうは〈アンダーカバー(UNDERCOVER)〉の展示会。ぼくは初のパリということもあって、道中基本的にずっとキョロキョロしているんですが、パリの街中にはこんなものがよく見られます。

これはパリ在住のストリートアーティスト・インベーダーによってボムられたもの。名前の通り「スペースインベーダー」をモチーフに、さまざまなキャラクターや人物がタイルによって描かれています。なんでもパリ政府公認なんだとか。

街中でこれを探してみるのも、パリの楽しみ方のひとつかもしれませんね。

そうこうしているうちに〈アンダーカバー〉の展示会場へ到着。1970〜80年台のドイツ、フランスの実験的電子系ロックバンド・Faust、Heldon、 Dieter Moebius、Conrad Schnitzlerなどをフューチャーしたコレクションみたいです。

高橋盾さんらしいというか、〈アンダーカバー〉らしいというか。アプローチの仕方、そしてアイテムへの落とし込み方に脱帽です。

さらに、没後に作品が広まったというスペインのアーティスト、ジョセップ・バケのアートワークも採用。人間と動物を融合させたような空想の生物が、シューズやシャツにあしらわれていました。

装飾が施されたキャップやシューズ、上品かつ繊細にデザインされたレザーグローブなど、小物も粒揃いだったのも印象的でした。

全く止む気配のない雨にも負けず、我々は次のショー会場へ。びしょ濡れで歩く美学でもあるんかなってくらい現地のひとは傘をさしません。会場で隣に座ったときに自分に被害が及ぶから、なるべくさしてほしいんだよなぁ。ほんとは。

〈メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)〉のショー会場に入ると、なかはグリーンのネオンに照らされた異様な雰囲気でした。

オーバーサイズや動物モチーフのバッグは今季も健在です。それに加えて注目したいのがシルエットの妙。従来そこにあるはずのない箇所に縫製が施されていたり、極端に肩が落ちていたり。

あえて歪ませたバランスと極端に変化を加えたシルエットは、ある種のアート作品のような、そして建築の造形美にも通ずるところがあるように感じました。

 

袖は極端に長いけど、着丈は異常に短いスタジャン。これがいちばん好きでした。パンツのフェード加減やペイント加工もさすがです。

この日はまだまだショーが続きます。残るショーは〈ディオール(Dior)〉と〈コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME des GARÇONS HOMME PLUS)〉。

〈ディオール〉のショーは、広い広場に佇む箱型の施設。ぼくがこれまで参加したショーは平均して3列ほどの席+スタンディングだったのですが、ディオールはそれも桁違い。

列数は7、それに加えてスタンディングの観覧者で、スポーツ観戦のような規模感で実施されました。

デザイナーのキム・ジョーンズいわく、メンズプレタポルテの変容、特に1954〜1955年秋冬オートクチュールコレクションの「Hライン」のインスピレーションを起点に、メンズウェアの進化という概念を探求したという今季のコレクション。

細身のシルエットから、極端に太いものまで、コレクションを通して遊び心に溢れていたように思います。和装モチーフもあったかな。

さらに印象的だったのは光が当たったときの陰影の美しさ。意図的に施されたドレープ、光沢感のある表面の仕上げ…、ウォーキングに合わせて鮮やかにゆらめくサマにうっとりさせられました。

確かな風格を感じる圧倒的エレガンス。明日のRe-seeで実物に触れるのが楽しみです。

そしてこの日ラストの〈コム デ ギャルソン・オム プリュス〉へ。川久保さんの平和への願い、希望、もどかしさ、歯痒さなど、さまざまな感情が服に憑依した印象的なランウェイでした。

軍服、ミリタリージャケットの解体&再構築。〈コム デ ギャルソン・オム プリュス〉らしいテーラードを軸に、“争いなんてクソ喰らえ”と言わんばかりに大胆にバラされた戦闘服の数々に、宿るメッセージ性を感じずにはいられません。

ヘッドピースには花が、そしてショーが進むにつれて服にもカラフルなものが増えてきました。

「武器ではなく、花を」。これはあまりにも有名なベトナム戦争時に生まれた反戦運動の象徴的なスローガンですが、もしかしたら川久保さんの頭のなかにもこのフレーズがちらついたんじゃないかな、なんてショーを見ながら思っていました。ショーで使われていた楽曲は、ベトナム戦争に抗議し続けていたジャズシンガー、ニーナ・シモンでしたしね。

ショーの最大の目的はもちろん服を見ることなのですが、それぞれのピースを細かく見ていくと、会場選び、音源選び、モデル選び、モデルの歩くスピードや照明の照らし方まで、本当に細かくショーをつくり、ブランドが伝えたいことをどう表現するか熟考していることが分かります。

その意図が感じられたとき、しびれちゃうんですよね。これはパリコレでも国内のショーでも同じです。

ちなみに。ホテルに戻ると、無事トイレは直っていました。仕事が早くて助かります。

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