たまに行く焼魚屋さんがこの数ヶ月猛烈に混んでる。というかこの猛暑の中、行列ができるほどだ。どんなファーストフードよりの提供サービスが早いということで近隣の在住在勤者に親しまれているが、およそ30年この地にいるがこんな現象は見たことがない。
家族経営の小さな店で老夫妻にその一人息子、そしておじさん(血縁関係不明)の四人体制で営んでいたが、数年前から息子の嫁らしき人がカウンターに立ち始めた。たぶん結婚したのだろう。
最初は比較的おとなしめに接客していたし、客にも丁寧語を使う。感じの良い人が入って、この店もますます繁盛するなくらいに気に留めていた程度だった。
先日たまたま近くを通ったところ店の前に行列がない。時間がすこし早かったというのもあるが、最近では稀だ。で、久々に入ってみた。
笑っちゃ悪いが、嫁が豹変していた。店を完全に仕切ってた。客にはタメ語、そしていちいち指示を出す。そこで待て、はい注文、はい進め。お父さんが分からなくなるから順番に。足元注意。いろいろうるさい。お母さんにも厳しい指示出し。
入店後、客がさらに入ってくるもんだからますます指示があちこちに飛ぶ。最近の繁盛っぷりで忙しくなり変わってしまったのだろうか。
最近こういう昔からの定食屋的なお店に若い人が群がっているという話を聞く。どうやら「エモい」ということらしい。
昭和な趣を残す喫茶店などもそんなエモ消費の対象だ。恵比寿銀座の喫茶店なんて、覗くたびに満席状態である。
しかし一部の若者たちは、そんな喫茶店でプリンアラモードなどの写真を撮り、それに手をつけず会計して店を出るというからなんというか。ライダースナックなねえんだよ(と言ってもわかんないか)。
その昔、某誌で編集をしているころ主にファッション担当だったが、号によっては飲食店取材などもやらされた。1日で5~6軒のお店を周り、料理を作ってもらい写真を撮る。店のテーブルにライト機材などをセッティングし、出来立ての熱々を供じてもらう。三脚で固定されたカメラから絞り違いのカットを数枚撮るとはい、撤収。しかしその後その料理はどうなる?
店の人は必ず食べていってくれという。メニュー代を取るところもあるが、取材なのでほとんどがお金を取らない。そうなると(お金を取られたとしても)食べなくてはならない。いや、気持ち的にこちらから食べさせてもらうというほうが適切か。
しかし一軒目、二軒目あたりまでは大丈夫だが、それ以降になるともう無理である。カメラマンと二人、少しづつ残しながら店を後にするときのあのバツの悪さといったらなかったなあ。
大阪在住のライターでKちゃんという人がいた。ぼくより2~3歳上の小柄でチャーミングな女性だった。半年に一回くらい仕事で会っていたのだが、会うたびに大きくなっている。彼女は食のライター。取材した料理は残すのは失礼だとすべて全部平らげる。
最後に会ったのはいつだったか。その頃にはかなり巨大化していた。
喫茶店でエモい写真を撮ってはしゃいでるヤツらを見て、Kちゃんは何を思うのだろう。