表参道にあるMASAHIRO MAKI GALLERYにて二人の女性作家による絵画の展覧会が開催されている。まず2階のギャラリースペースでは鍵岡リグレ・アンヌの展覧会が開催されているが作品はルクセンブルグでアーティスト・イン・レジデンスに参加した際に制作した絵画の新シリーズ「Element」だ。ルクセンブルグに滞在している間に作家が出会い感じた自然の根源的なエネルギーを抽象的な絵画作品に仕上げているが色彩や筆致など非常に独創的であり確かに偉大なエネルギーの動きの力強さを感じる。一方で3階のギャラリースペースでは塔尾栞莉の絵画作品展「fragments of memory」が開催されている。親が撮ってくれた幼い自分の写真や自分で撮りためた写真の画像をモチーフに「記憶」の劣化や歪みをキャンバスに描く作品はところどころが剥げ落ちたり微妙にずれたりしながら危うく存在し続ける。記憶は徐々に忘れられ虫食いのように劣化し完璧さを失ってゆく、その様を考察するかのように丁寧にキャンバスに落とし込むという独特な視点で描かれた作品は面白い試みだと感じた。二人の若い日本人女性の作品を眺めていてふと鍵岡リグレ・アンヌの作品に1900年代半ばのアメリカ抽象表現主義の女性作家であるヘレン・フランケンサーラー、塔尾栞莉の絵画には同じくアメリカの女性作家でコンセプトアートのシステムベースの美学を新表現主義の絵画的アプローチに組み合わせた女性作家のジェニファー・バートレットとの共通点を感じてしまった。国籍も時代も違う女性作家の作品になぜか同じような美意識の波長を感じるというのも面白いものである。
鍵岡リグレ・アンヌの作品は抽象的でパワフルである。
炸裂する色彩、筆の流れなど独特の表現で感情を表す。
習作を重ねたのちに一気に大きなキャンバスに描くという。
抽象画はヘレン・フランケンサーラーの絵画を思い出させる。
塔尾栞莉の作品は劣化し歪に消えゆく記憶を表現している。
遠目に見ると虫食いの裏に完璧だった記憶が現れる。
丁寧に考察しながら描かれたような絵画は色合いもいい。
幼い頃の自分のイメージだろうか?原色が強烈である。
なぜかジェニファー・バートレットという作家を感じてしまった。