BLOG - 渋井勇一(RASSLIN'&CO.代表 / Mountain Martial Artsディレクター)

ランニングカルチャー。(HOUYHNHNM Unplugged)

年に一度、HOUYHNHNMさんの紙版「Unplugged」。今回は「ぼくらに必要なのは運動」特集。

ランニングの部で、MOUNTAIN MARTIAL ARTSもご紹介いただいています。

とても興味深く記事を読んだ。ぼくはブランドを始めた時から「カルチャー」とうたっていた。当初は「トレイルランニングカルチャー」で、いまは「ランニングカルチャー」。とはいえ「カルチャーとはなんぞや?」と問われれば明確な答はない。自分だけの力で生まれるものではないのだ。

今回の特集ではBRAND、COMMUNITY、SHOP、ROOTSと多面的に分析されていて、そうそう、そうだよねとスッキリした気分。さすがHOUYHNHNMさん。同時多発的なムーブメントが重なり、今の状況がある。もしランニングがヒップな存在として認知されていて、MOUNTAIN MARTIAL ARTSがひとつのピースとして役立っているとしたらうれしく思います。

せっかくなので振り返ってみると、ぼくがブランドを始めた2012年、ランニングウェアはとても競技的だった。ぼくはスポーツと関わりのない人生を過ごしてきたので、デザインや色使いに違和感があった。

そこで、ブランドを立ち上げオリジナルウェアを作り始めたのだが、平行して力を注いだのが「ランニング時にお気に入りのウェアを着よう、コーディネートを楽しもう」という概念を理解してもらうことだった。ファッションでは当たり前のこの概念が、ランニングには存在していなかったのだ。

素敵なレストランに行く時も、お気に入りのジャケットを着ていけば楽しさ倍増(「体験の質が変わる」とGearedさんは書いてくれた)。ランニングも一緒、と伝え続けた。なにしろ最初はまったく理解されなかった。

それはマーケットを開拓する作業。今でこそ「ブルーオーシャン」と呼べるかもしれないが、開拓するまでは道なき道。手応えを感じるまで3〜4年かかり、展示会で友人が「このTシャツとスカートを合わせるとかわいいよね」と言うのを聞いた時はうれしかった。それこそコーディネートという概念で、機能が優先されてきたランニングウェアに新しい価値観を加えることができたと実感した瞬間だった。

今ではランニング系インディペンデントブランドも増え、小さいながらもマーケットが存在する。とはいえ、まだまだ開拓途中で、もっと多くのユーザーさんに楽しんでいただけるはずと思っている。

ちょうど今週末からMOUNTAIN MARTIAL ARTSの2021Spring&Early Summerが立ち上がります(遅!)。

今回のテーマは「No Running, No Life.」。“ぼくたちの生活にランニングって不可欠だよね”といったニュアンス。ランニングのよいところは自分なりの付き合い方ができること。競技として真剣に取り組む姿はかっこいいし、健康のためマイペースで走るのもランニングの楽しみ方のひとつ。そして友人と走るのもよし。ランニングはコミュニケーションツールでもある。

ガチもファンも。そんなみなさまのランニングライフに役立つウェアやギアが今シーズンも揃います。よろしくお願いいたします。

今年でブランドも9年目。こうしてHOUYHNHNMさんにランニングカルチャーが特集されるなんて夢のよう。ここに至るまでの苦労話は山ほどある。苦労の記憶のほうが多いような気さえする。ブランド運営とはそんなものなのだろう。

最後に少しだけ補足。記事中に(ラン系ガレージブランドの)「きっかけはおそらくハイクシーンに端を発する」とあった。たしかにUL系は当時からガレージブランドが活発で、トレイルランニングはULとニアカテゴリーだった。

でもぼくがベンチマークとしたのは全然別のカテゴリー。誰でも知っているのに、誰もやっていなかった。意外なところにブルーオーシャンのヒントはあったりする。(でも開拓するのは本当に大変)

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