BLOG - 渋井勇一(RASSLIN'&CO.代表 / Mountain Martial Artsディレクター)

街とランニングと山で使えるプロダクト(POLARTEC® Power Wool)

前回の続き。

前回、ウールのメリットとデメリットについて書いたが、それを解決する方法として合繊(ポリエステル)との混紡がある。しかし、その多くは原料糸のブレンドであり、強度は上がれど両素材のメリットを活かしきれているとは言い難い。

POLARTEC® Power Woolがそれらと異なるのは、表面はポリエステル(合繊繊維)、肌面がウール(天然繊維)の二重構造になっていること。

肌面は15.5ミクロンの超極細メリノウールをグリッド(格子)状に編み込んでいる。肌触りがやさしいことに加えて、グリッド状にすることにより汗(水分)を素早く肌から速乾性の高い表面のポリエステルに吸い上げ蒸発させる。

肌に接するのはウールなので、保温性がキープされたり臭いを抑えるなどのメリットを感じられ、表面は合繊の耐久性の高さや速乾性という特性が活きる。ご自宅で洗濯もできるし、ほぼ縮みもない。つまり、メンテナンス性が高い。

これこそぼくの理想に近い素材だった。Power Woolなら、
・普段着(家〜街)
・冬場のラン(街)
・トレイルラン(山)
・トレッキング(山)
など、すべてのシーンで使うことができる。

さて、素材が決まり、何を作るか考える。よい食材に巡り合い、どんなメニューにするか悩むシェフの気分。

真っ先に思い浮かんだのがロングスリーブのクルーネック。ベーシックなベースレイヤーの王道で、山でも使えるし、普段着であればニットやフーディーのアンダーウェアとして使える。

しかし、実はずっと他社のベースレイヤーに疑問を感じていた。なにしろタイトなのである。「ベースレイヤーだから体にフィットしないと」という意見は正しいのかもしれないが、ぼくはあの圧迫感が苦手。特にロングトレイルや縦走などをしているとお腹が張ったり浮腫んだりもするので、メリットを感じるより不快感が強い。

MMA POLARTEC® Power Wool L/S Tee

ということで、MMAのレギュラーTシャツのサイズ感のままで、ロングスリーブTシャツを作った。タイトなベースレイヤーより適度なスペースがあったほうが体温調節はしやすいという発想で(タイトなウールは暑くなると熱の逃げ場所がない)、これならレイヤリング時のベースレイヤーに加えて、一枚でも行動できる。

合繊と異なり、汗をかいた際の冷やっとした感じがしないので、寒い時期のランニングにも相性はいい。

後ろの裾はタイガーカモ柄(別素材)で切り返している。丈を長くしているので、レイヤリングした際にチラっとタイガーカモが見える。コーディネートを楽しむポイント。

MMA POLARTEC® Power Wool Tee

そしてシンプルなポケットTシャツ。ロングスリーブもいいけど、レイヤリングで煩わしく感じる時がある。そういう時はやっぱりTシャツ。

また、肌触りがよく保温性もあることから部屋着や普段着としてシャツなどのアンダーウェア的に使うこともできる。なにしろぼくは汎用性が高いシンプルなポケットTが好きなのである。

こちらも後ろの裾をタイガーカモ柄で切り替えている。

MMA POLARTEC® Power Wool Zip Hoodie

フロントが全開になるZIP仕様のフーディーは、ミッドレイヤーや羽織りモノ的な用途として。ファスナーは上下から開閉可能な逆開タイプなので体温調節がしやすい。

個人的な感覚だけど、同じPOLARTEC®でミッドレイヤーとして認知度の高いPower Gridより嵩張らないので、山に行く際のパッキングやロングトレイルレースの必携品としてもメリットがある。

もちろん、普段着としてブルゾンやジャケットに合わせて着ることもできる。ロングトレイルに着られて、ジャケットにも合わせられるのである。そんなプロダクトを他に知らない。

MMA POLARTEC® Power Wool Neck Warm Tee

毎年展開しているタートルネックタイプのロングスリーブTシャツ。今季はPower Woolバージョン。

このプロダクトを企画したきっかけは、寒い時期はBUFFをつけて走ることが多いのだけれど、「最初からついていたら便利じゃない?」と思ったこと。首元は窮屈感を感じないように少しワイドにしてあり、ネック部分はドローコードで締まり具合を調整することができる。これが本当に便利で、ぼくにとっては冬のランニングの必須プロダクト。

MMA POLARTEC® Power Wool Jogger

ボトムスはベースレイヤーとして考えればタイツ型がよいのかもしれないけど、それだと「ベースレイヤー」としてしか使うことができない。

そこで考えたのが「タイツ以上、ロングレングスランニングパンツ未満」。タイツよりはゆとりがあり、でもベースレイヤー的にも使え、一枚で走ることもできるプロダクト。

POLARTEC® Power Woolのプロダクトはすべてベースレイヤーとしても使うことを考慮して、縫い目はフラットにしている。三本針でいわゆるフラットシーマ(四本針)ではないのだが、フラットシーマは縫製に時間がかかり、納期も長くなりコストも高い。おそらく着ていて肌面への接触の違いをわかる人はほとんどいないと思うので、納期やコストをトータルで考慮した。また、縫製の糸色を変えて、デザインのアクセントとしている。

実はTJAR(Trans Japan Alps Race)戦士の朽見さんにもPOLARTEC® Power Woolのプロダクトのテストをお願いした。初冬の無泊ロング縦走でかなり高評価をいただき一安心。つまり、100kや100マイルなどのロングトレイルレースの必携品としても有効ということ。朽見さんからはとても詳細なレポートをいただいたので、また別の機会にご紹介します。

MOUNTAIN MARTIAL ARTSはデザイン面を評価していただくことはあるけど、すべてのプロダクトがリアルなシーンで着用していただけるように機能も充分以上に考えている。そこがなければブランドとして成長できない。

POLARTEC® Power Wool コレクションは12月中旬発売予定です。ぜひPower Woolの素晴らしさをアクティビティからデイリーまですべてのシーンで実感してください。

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