先週配信したニュースレターを貼り付けます。ちょっと加筆なんかしました。
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日本語の奥深さ |
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学生時代ろくに勉強してこなかったので、編集の仕事を始めたときに広辞苑を買った。あまりの分厚さにそれだけで頭が良くなった気がしたものだ。 当時は原稿を鉛筆で書いていたし(いま思うとすごいね)、まだ若かったので難しい語彙や漢字をどんどん吸収していけた。 その後ワープロの時代を経て、パソコンで原稿を書くようになる。時が下るにつれ漢字を書けなくなり、字を書くのさえ億劫になってきた。契約書などで住所と名前を五枚も六枚も書いた後など、腕が腱鞘炎になったように痛くなる。ひらがなだってどう書くのかたまに怪しい。 普段からどれだけ文章に接していても、難しいのは地名などの固有名詞の読みだ。千葉県匝瑳市とか港区の笄町なんてなかなかシビアだ(前者はそうさ、後者はこうがいと読む)。最近は便利なもので、道路標識にはローマ字でルビが振られていることもあり、かろうじて読めたりする。 よく行く蕎麦屋がある。左党の自分としては、そば前にかまぼこと卵焼きを日本酒でさっとやるのが習いだ。日本酒の種類が多いのもこの蕎麦屋のよいところ。しかし頼む銘柄はだいたい決まっている。読めない漢字の銘柄は注文しない。なぜなら間違って発声するのが恥ずかしいから。いい歳こいて恥ずかしがってんじゃねーよと突っ込まれそうだが、恥を忍んで告白します。 「花陽浴(はなあび)」「櫛羅(くじら)」「屋守(おくのかみ)」など、なかなか正確に読めない。無愛想にメニューを指してこれ、というのもマナー的によろしくない。 酒造メーカーや作り手さんは良かれと思って個性的な名前を考案するのだろうが、それゆえ選ばれないということもありうる。マーケットの目線はとても大事だ。どんな業種でも売り手のこだわりが強すぎてむしろそれがブレーキになっているケースは少なくない。 |
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↑これくらい簡単だと読めるんだけどね |
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近年のファッションブランドもそうだ。一体どう読むの、というのも散見する。そもそもHouyhnhnm(フイナム)なんて綴りのWEBマガジンをやってるお前が言うなという声も聞こえてきそうだが、それゆえいまだに燻っているわけでして。 件の蕎麦屋では、菊久酔を「きくすい」だとずっと誤解していて、バイトの子に「はい、きくよいですね」と言い返された時には穴に入りたかった。 読みが一つではないのが、漢字の難しいところ。音読みに訓読み。さらにそれがミックスされた重箱読み、湯桶読みもある。これは二字の漢字熟語で音読みと訓読みが混在する読み方。前者が音+訓読みで、後者が逆。 昔、とあるアナウンサーが旧中山道を「いちにちじゅうやまみち」と読んだという笑い話もあった。横書き原稿が起こした悲劇で、日本語本来の縦書きならそんな事故は起こらなかっただろう。 ここだけの話、とある会社でプレゼンするときに「団塊の世代」を「だんこんのせだい」と発してしまったことがある。 職業がアナウンサーでなくて本当によかった。 |
