ぼくが初めて海外に出かけたのは1980年代初頭。仕事でパリとロンドンに連れて行かれ、その次はロサンゼルスとサンフランシスコ。これらの出張旅でやらかした失敗談や笑い話は語り出すと一晩かかりそうなので、またの機会に。あの頃のアメリカは怖かった。チャールズ・ブロンソンが悪党に向かって拳銃をぶっぱなすのが日常のような殺伐としたムードであった。怖いエリアというのが、そこかしこにあり、足を踏み入れる勇気はなかった。おかげで五体満足でこの年まで生きていられたというわけだ。
まだEU統合の前なので、フランスはフランであった。シャンゼリゼの<JMウェストン>のバーガンディ色のローファーを買った。噂に聞くパツパツのフィッティングで、むしろつま先当たって痛いというのにフィッターのオヤジはこれがお前のサイズだと譲らない。これが彼らの流儀なので従うしかない。何フランだったかは忘れたけど日本円で3万円ちょっとだったような記憶がある。
初めてのサンフランシスコでは<ティンバーランド>のオーセンティック・クラシック・モカシンを買った。いくらだったかまったく思い出せないがウエストンよりはうんと安かったと思う。この頃の1ドルは240円くらいだった。
フランはその後、EU統合とともに廃止されユーロになる。そしてドルはどんどん安くなり1ドル80円を切るところまで行った。アメリカにはここ40年くらい行ったり来たりしているけど、体感的にドルは平均100円から120円の間くらいのイメージである。
アメリカで買い物や食事をする時はドル100円でざっと換算していた。それがいまや150円だ。
40年かけて下がったドルが元に戻ろうとしていると考えれば、そんなに悪いこととは思えないが、事はそう簡単ではないようだ。
確かに80~90年代の円は強く、どこへ行っても日本より海外の方が安かった。ブランドものなどは特にそう。なので買い物は海外で済ませていた。
先日、アメリカの<パタゴニア>で160ドルくらいのアイテムを買い物した。クレジットカードの請求は日本円で2万6000円弱。日本で果たしていくらで売ってるんだろうと調べたら2万2000円。しかもセールで1万5000円になっていた。そら、インバウンドも殺到するわけだ。
買い物は日本に限る。