Jリーグが始まったのが、1993年。今年30周年だ。
当時ぼくはフリーランスの編集として某出版社にデスクをもらって働いていた。前年あたりからJリーグに関するニュースが飛び込み、取材してページを作らなくてはならないのだが、サッカーに詳しい者が当時の編集部にはいない。原則ファッション分野が担当であったが、小学時代からサッカーをしていたということだけで、なぜかサッカー担当に。そんなもんだ。
当時担当雑誌は確か週刊化されていて、みんなが忙しすぎたというのもあると思う。そんな面倒な仕事は誰でもいいから振ってしまえということだろう。
Jリーグ元年は海外からビッグネームが集合していた。
ジーコ(ブラジル)、リネカー(英)、リトバルスキー(独)、ストイコビッチ(ユーゴ)、スキラッチ(伊)など。
サッカーはするのは好きだけど、熱心な海外サッカーファンではない自分でも知ってる大物がずらり。そのリトバルスキーに話を聞いたことがある。
およそJリーグについての話だったが、サッカー日本代表のワールドカップ出場についてもあれこれ聞いた。なんせそれが個人的な最大関心事だったからだ。
当時はまだ日本は一度もワールドカップに出場できてなくて、同年秋に行われた予選でいわゆる「ドーハの悲劇」を経験した。取材がその前か後だったか記憶は定かでないが、どうやったら日本は本線に出場できるんだろうと聞かずにはいられなかったのだ。
「エクスペリエンス」。迷わずリトバルスキーは小さな体からすこし甲高い声で訛りのある英単語を持ち出してきた。
その後、サッカー記者(笑)として、日本代表を一瞬率いたファルカン監督やアルゼンチンのスター、ラモン・ディアスにも同じ質問をした。答えはやはり「経験」。
当然、原稿にも日本サッカーに足らないものは「経験」と書いたがいまいち具体的な意味がわからなかった。
今日、侍ジャパンがアメリカ代表をやぶり世界一になった。
野球は明治時代から日本で盛んで、俳人の正岡子規が親しんだということも知られている。あまりに傾注したために雅号を野球(のぼーる)としたこともあった。野(の)球(ぼーる)。蛇足ですが。
ちなみに今夏の甲子園大会は105回という歴史を持つ。そしてプロ野球は日本で最大のファン層を持つ、日本一メジャーなスポーツ。小さい子供たちから現役選手、引退した解説者、競技をしなかったファン層の厚さ、マスコミ関係者など、批評する眼も他スポーツに比べ格段の差である。
日本社会全体が野球に関しては相当な熟練度があると言っても過言ではない。
そして野茂英雄から面々と続くメジャーリーガーたち。ましてや大谷翔平なんてホームラン王を争ったりMVPを受賞したり。
今日彼の試合前のスピーチで、相手をあまり尊敬しないようにしましょうというのがあった。
「経験」ってそういうのをひっくるめたすべてなんだと腹落ちした優勝劇でした。
侍ジャパンのみなさん、おめでとう!