週末、「映画を早送りで観る人たち」という新書を読んだ。動画配信サービスのドラマや映画を早送り、スキップしながら観る若い人たちがいるという話だ。世代間格差の考察として読んだ。興味深い内容だった。
この本のなかでも触れているがサブスクリプションのサービスについて、以前から思っていることを書こうかと思う。いやいやサブスクリプションが好悪という話ではなくて、これがもたらす影響の話。個人的に。
いま自分が利用しているサブスクリプションは、dマガジン、netflix、Amazonプライム、Amazonミュージック、あとスポーツジムとストレッチジム。このサブスクリプションの定義は、月会費を払ったら追加料金なしでサービスは使い放題というモデル。一曲、一冊、一度の利用でも百曲、百冊、百回の利用でも同じということである。
ぼくが若い頃からすると夢のようなサービスだ。音楽は3000円近くするLPレコードやCDを買わなくてはならなかったし、映画も劇場に行くか、数百円とはいえレンタル代金を払って観ていた。雑誌はいうに及ばずだ。
レコード・CDは目当ての曲以外も熱心に聴いた。お金払ってるからね。何度も聴くとだんだん好きになる曲などがあって、むしろ目当ての曲よりもそっちのほうがいい気もしてくるから面白い。イーグルスの名盤「ホテル・カリフォルニア」はタイトル曲を聴くためにLPレコード買ったが、その次の「ニューキッド・イン・タウン」のほうがいまではマイフェイバリットになっている。
映画もぴあなどの情報誌を買って、劇場を調べ、監督名や俳優名を事前に調査して観に行ったものだ。月にひとつかふたつしか観ない映画。何度も反芻するというと大袈裟だが、観終わった後は、友人たちと感想戦などをしたものだった。
先日、友人と話をしていてある映画の話になった。動画配信サービスでも観られる「シェフ 三つ星トラックはじめました」の話であるが、彼はそれを観ていないという。そこでアイアンマンの監督とスカーレット・ヨハンソンも出ている映画だと言ってもピンとこない。さらにキューバンサンドのフードトラックでマイアミからロスに戻るロードムービー的なやつと言ったところで、膝を打った。
「観てるよ!」。
あまりに多く動画配信サービスで観てるから、タイトルを何かまったく覚えてないし、中には内容さえさっぱりという作品もあるという。
実はこれ、自分にも当てはまる。
第一、作品に対してまったく敬意のない見方をしているからだ。トイレでポーズを入れるのは当然だし、途中眠くて昼寝することもある。あるいは止めたところで放置し、翌日以降に続きを観るなんていうのもざら。たるいシーンなんかでもスマホいじったりもする。
要するに見方が雑、なのである。
これはdマガジンなどの雑誌にも当てはまる。購入していた頃は、隅から隅まで読んでいた週刊誌などは、見出しとリードを読むだけでスキップすることもあれば、本文は基本ナナメ読み。まるで映画を早送りで観る行為を雑誌で行っているわけだ。
Amazonミュージックも、知らない曲が流れたらアレクサに「次!」と指示する始末。こんなんではセレンディピティは生まれない。
サブスクで得られる利益はものすごく大きいが、何か大切なものが失われているような気もしなくもない、という話でした。