BLOG - 蔡 俊行(フイナム発行人)

展示会オーダー品

 先の展示会でオーダーした秋物がぞくぞくと届くのだが、こう暑いと袖を通せない。カシミアのニットが着られるようになるのは、まだひと月くらいかかりそうだ。

 それらのアイテムは下げ札がついたまま、クロゼットにかけられている。ニットは伸びるから棚に置いているが、いずれにせよしばらく陽の目をみない。そうこうしているうちにそこにあることを忘れ、時が経過する。そしてよければ一年後、酷いものでは数年後、下げ札のついたまま、まるで古代の遺物のように発掘される。

 某ブランドは、展示会発注物を店に保管しているので取りにきてください式である。電話で入荷連絡をくれるのだが、安定感に満ちた記憶喪失をしてしまう。数年前などは、2年前のアイテムがあるので取りにこいと催促の連絡があった。たしか消費税が8%から10%に変わる直前。それでもなお、ぐずぐずしていたら新消費税率になってしまい、2%余計に払った記憶がある。これって自分でデッドストックを作って、それを買っているとも取れる。

 たまに服庫を整頓すると、見慣れないアイテムがやはり発見される。確かに見たことはある。買った記憶もあるかもしれない。あるシチュエーションであれば有用な服であるかもしれない。しかしそれもそのまま、静かに音もなくお墓に納骨されるかのように横たえられてまた忘れさられるのだ。

 毎日ほぼ、同じ服ばかり着てるからそうなるのである。職業柄、毎日、違う服装をしておしゃれをアピールしなくてはならない。

 しかし昨日、ダブルのスーツにボルサリーノ風を纏い、コンビのウィングチップを履いているおしゃれさんを見かけた。確かにおしゃれではあるが、通りで見るとまるでコスプレだ。一時原宿で若い子たちがしていたコスプレとなにが違うのだろうか? ファッションに明日はあるのか? などの難しい問いに沈んでしまい、またいつもと同じ格好を今日もしている。

 

 

 

 

 

 

 

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