以前、とある雑誌で連載をしていた。中断もあったが、企画やタイトル名を変えながら20年以上続けていた。長期に渡ったのでいろんな担当編集者が付いてくれた。その一人がTくん。彼の担当が一番長かった。そしてその後担当が変わってもずっとカメラマンも一緒だった。
当時は毎月とは言わないけど、撮影後この三人でよく一杯やったものだ。どちらかというとB級的な飲み屋が好きなTくんの趣味で、いわゆる昼飲みやセンベロ酒場にもよく行った。
そしてみんなどういうわけか走ることをこじらせたもんだから、台湾まで一緒にハーフマラソン走りにも行った。12月の台北を走った後は太陽を浴びながら芝生に寝転んでビール飲もうという企画だったが、着いた日からものすごい土砂降りと寒さで震えながらゴールした記憶もある。
カメラマンのMくんは長崎は佐世保出身で、遊びにこいというので現地を訪れたこともある。セーラータウンはじめとした夜の街を散策したり、事件の現場を見に行ったり、釣りしたり。基地の側まで行って米軍のイージス艦まで見た。
Mくんは、発言することが時にとても深みがあるのでハッとさせられることがある。ものや人に対する洞察が深く、それがいいたかったんだよ、を言葉にしてくれる。思わず膝を打つことも多い。
彼はこれまで数冊の写真集を作ってきた。佐世保の市井の人々や風景などを編んだ写真集。シリーズで出ていてそれらを「佐世保プロジェクト」と名付けている。
いわゆる自費出版であるが、専門家からも評価は高い。
その彼が新しい本を作ったという。
タイトルは「写真の中の君は何を見ている」。
なんとも奥行きのある、示唆に富んだタイトルではないか。
読んでみたら、写真家にしておくのはもったいないくらいのいい文であった。写真に対する向き合い方、技術、撮り方などが情緒豊かに綴られている写真エッセイとでも言えばいいのだろうか。
書店で見つけてください。