履歴書を記しているうちにおぼろげだった記憶がどんどん鮮明に蘇ってきます。時間は遡りますがユーミンとの関わり合いについても触れないわけにはいきません。TOOLSの創立メンバーで今もスタイリストとして活躍されている近藤さんは、僕が御供さんのアシスタントをしていた頃から松任谷正隆さん、ユーミン夫妻のスタイリングを手掛けていました。その流れで僕も少しづつお仕事させてもらうようになり、レギュラーでテレビ番組のスタイリストをしていました。ユーミンとは98年から2001年まで「めざましテレビ」で視聴者からの俳句を論評するコーナーがあり、そこでスタイリングさせてもらっていました。このちょうどミレニアム(2000年を迎える年)に仕事をしていたのがご縁で、エジプトロケというなんとも素敵な仕事が舞い込んできました。
この撮影はいくつかのタイアップはあったにせよ、媒体は雑誌でした。繰り返しになりますが、当時は紙媒体に力があり雑誌撮影でも海外へ行けた時代でした。が、それにしてもエジプトまで行っちゃうなんて勢いがあったんですね。今のフイナム読者の方はよく分からないと思いますが、当時『ミレニアム問題』が叫ばれていました。1999年から2000年に年号を跨いだ瞬間にコンピュータがエラーを起こして世界中がパニックになる、という、今考えるとトンデモ話ですがかなり真面目に議論されていました。それが理由だったのかは分かりませんが、正月の3日に成田空港を出発しロンドン経由で深夜にカイロ空港に到着。真っ暗な道路を進みクタクタになりながらチェックインしました。そして翌日、時差ボケと疲れでボォ〜っとしながらホテルのカーテンを開けるとすぐ目の前にピラミッド群が!!!感覚的には渋谷の道玄坂から駅前の高層ビルを眺めてるくらいの距離感。有り難みよりもフェイク感が強い、なんともおかしな気分でした。
とは言え、そこからロケハン、シューティング、と続くうちにホンモノに囲まれている思いはどんどん強くなっていきます。砂漠の稜線に白いテントが無数に広がっていて、あれは何かと尋ねたら「ピンクフロイドがミレニアムライブを開いた後の残骸だ。」と聞かされた時にはそのスケールにビビりました。
スフィンクスとピラミッド、そしてナイル川をクルージングしながらルクソールまで旅をしたりと、ホント撮影なのにこんなに楽しんじゃっていいの?って日々を過ごしましたね。ラマダン明けで外国人である僕らはレストランでエジプシャンワインを飲んだり、そのまま民族衣装の女性とグルグル踊り回ったり。かたやその数年前に日本人観光客がテロリストに襲われて亡くなるという事件もあったので、それなりの緊張感と背中合わせのツアーでした。
これは「めざましテレビ」の収録の時に撮ってもらったもの。スタイリストとタレントさんって仕事の距離感が大事なので意外と一緒の写真って撮らないもんなんですよね。いろいろ探したけどこの一枚しか見つかりませんでした。あと、思い出として残っているのが「オールナイトニッポン」に出させてもらったことかな。ユーミンがレギュラーでDJやっていて何の気なしに「小沢くんも出てよ!」と言われ、生放送で少しだけ喋ったなぁ。で、タクシー用意してもらって深夜のレインボーブリッジを渡ったときの高揚感は今でもじんわり残っています。
本当は松任谷正隆さんのことも書きたかったんだけど、マジで一枚も写真がない。本当に面白い変わった人なんだけど、もしかしたらまた時間が遡ることがあればいつか・・・。
次回はさらに時計を逆回転させて、僕がアシスタント時代に目撃した海外アーティストについて想いを馳せてみたいと思います。