ロンドンでの日々は想像以上に刺激的なものでした。オリタくんのフラットに泊めてもらいつつ昼間は街をチェック。もちろん英語なんててんで話せないので辞書通りの『身振り手振り』が会話の代わり。もう30年以上前のことなので最初の品揃えのラインナップはあまり記憶にありませんが、ガッツリ買ったブランドの一つが「HAKETT/ハケット」だったのはよ〜く覚えています。当時の東京でハケットに注目しているセレクトショップはほとんどありませんでした。英国トラッドといえばBEAMS Fが抜きん出た存在でしたがハケットは扱ってなかったんじゃないかな。僕的には他の店で取り扱いしていないブランドというのが重要なポイントだったので、あとは雑誌で見たオーナーのジェレミー・ハケット氏とアシュリー・ロイド=ジェニングス氏のウエルドレッサーぶりに痺れていたのもポイントでした。
確かキングスロードの端っこ、当時のワールズエンドのもっと先に店がありました。シェットランドのセーターに中畝コーディロイのパンツを履いた若いスタッフが落ち葉を掃除しているこじんまりした店に日参しましたね。日本から来たキッズがチョークストライプのスーツをサイズ違いで何着も買いに来る。彼らからすると「ワケ分からん」状態ですよね。
ワケ分からん!と言えばオリタくんの周りの在ロンドン軍団も匹敵します。中でもダントツだったのは酒寄くん。帰国してからはいくつものセレクトショップを立ち上げ、最終的にはあの「アクアガール」を作り上げた人物です。ただロンドンにいた時の彼のルックスは凄かった。初めて会った時は「ジュニア ゴルチェ」のMA-1にホットパンツと網タイツ、足元はハイヒール履いてたんじゃなかったっけ。今で言うところのニューハーフ的な出で立ちで僕らの前に現れました。ロンドンは『i-D』『FACE』『ARENA』といった雑誌の全盛期、そんな格好が最先端だったわけです。
とまぁ、こんな怒涛の日々を過ごした後に帰国します。僕は後半パスポートが入ったバッグを盗まれるという被害に遭って結局1ヶ月も滞在する羽目になったり。なんとも激しいアップダウンを体験し、現地の荷物も届き、ファイヤー通りの店の内装も整い・・・と急ピッチでオープンの準備が進んでいきました。そして11月わずか5坪のスペースにMADE IN WORLDはオープンしました。
上の写真はその5坪の店内で撮った写真。狭いけど、狭さゆえにもの凄く濃密な空間でしたね。店内の装飾は直輸入したラルフローレンの壁紙と英国の古い建物で使われている梁を四隅に這わせてそこに照明を仕込みました。店装もロンドン出張に影響されまくってそんな感じになりました。下の写真はメンバーの飲み会。一番左がブーちゃん、その隣からスタッフの信吉、僕、ELTの倉田くん、ケンちゃん、俳優の鈴木一真と日々こんなメンバーで遊んでましたね。
渋谷のMADE IN WORLDから原宿に進出した新店舗をMADE IN THE WORLDと言葉遊びのように名付け、あれよあれよという間にどんどん会社は大きくなっていきます。それと共に僕自身もステップアップを試みるようになっていくのですが、その話は次回にさせていただきます。