OWLの小牟田です。
先日、フイナムでもお知らせしたこちら。
画家・武田鉄平氏の新作『FLOWERS』の発表を記念した、トークショーに行ってきました。
登壇したのは、武田氏、ブックデザインを担当したプロダクトデザイナーの深澤直人氏、そして本書の編集を担当した、編集者の菅付雅信氏の3名。
左から菅付氏、武田氏、深澤氏。photo by DOVER STREET MARKET GINZA
photo by DOVER STREET MARKET GINZA
会場となった「ドーバーストリートマーケット銀座」では、この日写真集『FLOWERS』の限定版ボックスセットとポスターが販売されたのですが、なんと500人が行列を成し、瞬く間に完売してしまったそうです。500人って!
限定版ボックスセット
というわけで、えも言われぬ熱気を帯びた会場でスタートしたトークショー。
内容を丸々書き起こすような野暮なことはしませんが、そのかけらをいくつかお伝えできればと。
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「武田さんは作品を描くのにとても時間がかかる」(菅付)
前作から本作までは5年が経過しています。
「デザイナーとして色をつけたくない」(深澤)
今回初めてブックデザインを手掛けた深澤氏。表紙にまったく文字がないなど、ブックデザイナーでは絶対に考えつかない体裁の作品集を完成させました。
「デザインには目的がある。アートを定義するのは難しい。アートの中にデザインもある」(武田)
武田さんは過去グラフィックデザイナーだったことがあるそうです。
「武田さんは、本物だな、と思った。作品に引っ張られるチカラ、フォースを感じる」(深澤)
武田さんいわく、深澤さんには自分と似たものを感じたそう。
「2人の作品に共通しているのは、異常なディテールの塊によってできていること」(菅付)
武田さんの絵画は、驚くほど緻密で流麗な線のひとつひとつによってできています。
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などなど。
互いが互いをリスペクトし合っているのがわかる会話のキャッチボールは、とても芳醇で濃厚でした。
どなたがおっしゃったのかは失念してしまいましたが、「絵画表現を芸術にするのがとても難しい時代」というのも印象に残った発言のひとつでした。
会場に展示されていた製作過程のスケッチ。
それを踏まえて、「MAHO KUBOTA GALLERY」のHPにある以下の文を読むと、武田さんが膨大に重ねたであろう思考の足跡を感じることができます。
武田鉄平は1978年山形市生まれ。少年期からアーティストを志し、唯一無二の表現を追求するため、芸術全般への知見と考察を深めてきました。東京の美大を卒業後、就職を経て一度山形に帰郷。その後約10年間、作品を一切発表せず、絵画の本質と向き合い続けました。長く孤独な探求の末に辿り着いた「描くことを描く」というコンセプトは、武田がこだわり続けた「絵画」というメディアに留まりながら、絵画の本質を根底から揺さぶる試みでもありました。シンプルなアプローチでありながら既存の絵画表現の境界を跳び超える可能性を示す、このオリジナルな手法の獲得により武田は「何らかの主題を絵に描く」ペインターではなく、絵画というメディアの成り立ちそのものに挑むコンセプチュアルアーティストとしての道を歩み始めました。
最近もっとも気になっているアーティストのひとり、武田鉄平さんのご紹介でした。
本日11月30日(土)からは、作品集『FLOWERS』の通常版が全国の書店で発売開始となります。また、作品展『まるで、花のような』も現在開催中ですので、ぜひ肉眼で武田さんの異常に緻密な絵画をご覧になってみてください。
展示タイトル「まるで、花のような」
会場:MAHO KUBOTA GALLERY
住所:東京都渋谷区神宮前2-4-7
会期:11月15日(金)〜12月26日(木)