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BLOG - 岡田哲哉(グローブスペックス 代表)

3年ぶりのフランス。

今年9月、海外から日本に帰国する際の手続きが簡略化され、世界の感染状況も比較的落ち着いてきたので3年ぶりにフランス出張に行ってきました。2019年にNHKの番組「世界はほしいモノにあふれてる」の収録を兼ねて行って以来です。

3月にはNYに、やはり3年ぶりに行きましたが、現地は行く前から治安が悪くなって犯罪が増えていると聞き、実際に行ってみると連日それを裏付けるようなニュースが報道されていました。

パリはどうだったかというと、行く前にはやはり少し治安が悪化していると耳にしましたが、現地は以前の感じとあまり変わらず、現地のフランス人に聞いてみてもコロナ禍前のパリに戻った様に感じている人が多かったです。街は賑わいを取り戻しつつあり、アメリカなど海外から訪れる人も多くなっていました。

日本のニュースで見ていたパリやロンドンの映像の通り、屋外でマスクをしている人はほとんどいませんでした。空港や駅では施設内の放送で「マスクは義務ではありませんが、駅や交通機関内ではマスク着用を推奨します」と伝えていました。実際、駅や電車内でマスクをしている人の割合は1割いるかどうかというくらい。私は屋外で密でないところでは外していましたが、電車の中など人が混み合っているところではマスクをしていました。ヨーロッパ、英国、アメリカなどでは少し前から入国時の制限やマスクの着用が緩和されていたのに対して、日本では10月から入国時の制限が緩和され、最近になって街中で見る外国人の方も増えてきましたが、ようやく世界が少し元に戻ってきた感があります。「グローブスペックス」の店舗にも、10月に入って入国制限の緩和直後から約3年間お会いしていなかった海外のお得意様たちが立て続けに何人も来店されています!

今はロシア上空を飛べないので、フライトはアラスカ経由で少し遠回りになりましたが、いつもより2時間+ほどだったのでさほど長く感じませんでした。

19時くらいにパリ市内に着いて、記憶を頼りに以前美味しかった店に軽く食べに行こうとしたら、レストランはあるものの別の店に変わっていました。あとで話を聞いて分かったのですが、パリでもコロナの蔓延がひどかった時期に外出や飲食店の営業制限で人通りがまばらになり、多くの店が店を畳んでしまったり、家賃が安い地域への移転も多かったそうです。一見、3年前と同じ様に見えるパリでも、かなり厳しい時期を乗り越えてきたので、街の賑わいや人出の多さも比較的最近のことのようです。

いつもはセーヌ川に近い、マレ地区南側に宿泊するのですが、今回は宿が取れず北マレを拠点とすることになりました。北マレは前に知り合いデザイナーのアトリエを訪ねたり、好きなレストランもいくつかあったので多少馴染みのある地域です。記憶を辿って以前たまたま路地裏に入ったマルシェの中に美味しそうな屋台が並んでいたことを思い出し、なんとか辿り着きました。ここはガッツリ食べたい時よりも軽く食べて飲んでくらいの時にピッタリで、地元の人たちもお勤め帰りに気軽に立ち寄って楽しんでいました。味もなかなか美味しかったですよ!

路地裏のマルシェ内にこの様な屋台のお店が何軒か軒を連ねている北マレのエリア。

路地裏のマルシェ内にこの様な屋台のお店が何軒か軒を連ねる北マレのエリア。

翌日、パリ初日は午後からミーティングだったので、パリ街中のメガネ店巡りから開始しました。まずいつも定点観測で訪れていた古いアーケード内にある「Pour Vos Beoux Yeux」。ニースに本店があり、扱っているメガネも什器もほとんどヴィンテージばかりという非常に特徴的なメガネ店です。「グローブスペックス」の店舗を作る際にも参考にした店の一つです。後から知りましたが、オーナーであったCharlesさんはご自分のこだわりを実現するブランドを立ち上げるために大切にしてきたこのお店を手放したそうです。パリの名店が一つの節目を迎えたことは少し寂しくもあります。

3年前にパリを訪ねた際に「Pour Vos Beoux Yeux」のオーナーであったCharles氏と。

その後、そこから比較的近くにある「Palais Royal」内に店を構える「Maison Bonnet」を訪ねました。パリにはいくつかあるオートクチュールのメガネ店の中でも特に有名な店で、在庫は1本も置いておらず、すべて誂でメガネを作るビスポークのメガネ店。コルビジェがメガネを作っていた店としても有名です。アセテート以外にもバッファローホーンや、ヨーロッパでは数少ない鼈甲製のメガネも作れる店です。

この日もアポイントを入れている顧客が店内へと入り、デザインを相談しながら詰めていました。その様子を外から眺めていると中から店主らしき人が出てきて「あ、Mr. Okadaではありませんか?」と声を掛けてきました。「そうですが」と答えると「あなたのインスタグラムをフォローしていつも投稿を見ているんです!」と言われました。まさにMr. Bonnetでした。驚いたことにこの日から始まり、パリにいる間、毎日何人もの人たちから「フォローしている!」「握手してほしい」「一緒に写真を撮ってほしい」などと言われました。インスタのアカウントには「パリにいるなら少し会えないか?」などのDMが現地の人から届いたりもして驚きました。私がインスタを始めたのが2020年で、ちょうど世界的にコロナの蔓延が始まった時期だったので、インスタ開始以降、海外には出ていなかったのです。そして3年ぶりに来てみると、インスタグラムをきっかけにこんなに知られていることに驚かされました! 子供の頃や自分が20代の頃に住んでいた海外では差別に遭うこともしばしばでしたが、時代の大きな変化を感じます。そしてネットの力の凄さも実感しました。

パリ有数のビスポークメガネの有名店「Maison Bonnet」のBonnet氏と。

パリのビスポークメガネの有名店「Maison Bonnet」のBonnet氏と。

その後さらに「Palais Royal」内を歩いていると偶然にも親友である、NYSelimaの新しいパリのお店を見つけました!

「Palais Royal」内に新しくできた、NYの親友Selimaの新店舗。

「Palais Royal」内に新しくできた、NYの親友Selimaの新店舗。

午後からは「Anne et Valentin」と「Ahlem」、それぞれのブランドとのミーティングです。「グローブスペックス」はこの様なブランドの日本総代理店を務めていますので、各国エージェントが集まるビジネスミーティングにも参加します。コロナ期間中もリモートでオンラインミーティングは行っていましたが、やはりリアルに会ってコミュニケーションを取り、新しいデザインを見ながら感動や驚きを伝え合うのは、感じ合うインスピレーションのレベルが全く違います! やはり仕事とはモノとお金が順調に動いていれば良いのではなく、そこにある人の思い入れや感動をお互い感じ合い、議論したり笑い合ったりして感情が動くことで更にクリエイティビティーが刺激されていきます。やはりオンラインよりもできるだけ直に人に会い、街からも刺激を受け、話し合ったり笑い合ったり、いろんなことを同時に共有することはとても大切なことですね。

「Anne et Valentin」のビジネスミーティング。その会場もブランドらしい味のある場所。

「Anne et Valentin」のビジネスミーティング。その会場もブランドらしい味のある場所。

「Ahlem」のミーティング場所はパリの中でも最も古い歴史的カフェで、パリ市から施設の永久保存の対象に指定されている名店。

「Ahlem」のミーティングの場所はパリの中でも最も古い歴史的カフェで、パリ市から施設の永久保存の対象に指定されている名店。

2日目から4日目までは連日、国際メガネ展示会である「SILMO」の会場に行き、さまざまなブランドの新作の商談・買い付けを行い、3年ぶりに会う多くの知人や仲間たちと互いの無事を喜びあう3日間を過ごしました。世界中のいろいろなブランドの新作をセレクトしましたので、お楽しみに!

今は世界的にコロナ禍の影響で納期が伸びていますが、11月から少しずつ入荷し始め、年が明けて2023年に入ってからもいろいろと素晴らしいデザインが続々と到着予定です。

「SILMO」展の会場とさまざまな新作のほんの一部。右下の写真は街中の別会場での展示会。この様に独自の展示会も同時開催されています。

「SILMO」展の会場とさまざまな新作のほんの一部。一番下の写真は街中の別会場での展示会。この様に独自の展示会も同時開催されています。

4日目の日曜は午前中だけクリーニャンクールの蚤の市も覗いてきました。京都店で使う店の装備品で探し物があったのですが、あちこち探し回った結果良いものをゲットできました!京都店に行かれる機会がありましたら、何を見つけたのかスタッフに尋ねてみてください!

クリーニャンクリーニャンクールの蚤の市。

クリーニャンクリーニャンクールの蚤の市。

パリは世界有数のグルメの街でもあるので、毎夜別々のデザイナーたちと自分が好きな行きつけのレストランや、地元の人に教えてもらったレストランに行き、楽しみながらいろんな情報交換をしました。また、地元のブランドはパリならではの場所を借り切ってパーティーを開催していました。

翌週の月曜、パリから電車と車を乗り継いで移動し、その後の3日間は久しぶりにジュラ地方へと向かいました。「Lesca Lunetier」のオーナーでデザイナーでもあるJoelと一緒です。この地の醍醐味はやはりヴィンテージメガネの発掘です。定番のクラウンパントゥやフレンチヴィンテージらしいさまざまなヴィンテージをセレクトできました。中にはこの様に珍しいブラックホワイトのフレームも少量あります! 入荷まで少し日数がかかると思いますが、お楽しみに!

ヴィンテージメガネが眠る蔵の中で良いビンテージをいろいろとセレクトしてきました。中央の写真が珍しい白黒トーンのもの。

ヴィンテージメガネが眠る蔵の中で良いものをいろいろとセレクトしてきました。中央の写真が珍しい白黒トーンのもの。

ジュラ地方はスイスのジュネーブに近い山岳地帯で、酪農も盛んでありチーズが美味しい土地です。今回もJoelと一緒にワインとチーズを堪能してきました。東京を出る時点で気温は28度くらい、パリは18度ほど、ジュラは標高の高さから7度まで下がりました。そうなることは知っていましたので、重ね着で調節してうまく対応できました。

結論、やはり「グローブスペックス」の仕事をする上で、世界に出て、いろんな土地を訪ね、いろんな人に会い、デザインに触れ、視点・価値観・こだわりを知り、そこで得た感動・インスピレーション・ひらめきを日本に持って帰って生かしたり伝えたりすることの繰り返しが、更に新しいことをしたり、新たな人たちと出会ったり、自分が感動したり、人を感動させ続ける上で不可欠であることを再認識できました。

最後に白状しますと、パリに行くと必ず食べる、とある店のタルトタタンは初日と帰国する日の飛行機搭乗前と2回食べてしまいました(笑)。

上はパリに着いて翌日に食べたタルトタタン。中は帰国便に乗る直前に食べたタルトタタン。下はそれが食べられるお店。

上はパリに着いて翌日に食べたタルトタタン。中は帰国便に乗る直前に食べたタルトタタン。下はそれが食べられるお店。

また徐々に世界のいろんな街に行き、新たな可能性を探って、皆さんにご紹介して行きたいと思います。美味しいものも楽しみつつ!

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