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BLOG - 岡田哲哉(グローブスペックス 代表)

Thank you Mrs. C

私のお得意様には外国の方も多いのですが、このお客様は少し前まで日本である国の在日大使を務められていた方です。大使館のトップとしてその国を代表し、日本で外交最高責任者を務める非常に偉い方なのですが、ウチの店に来られる際には非常に気さくでフレンドリーでした。

初めて来店されたのは5年ほど前。確か最初は英語が通じる眼鏡店を探されていて、私が英語を喋ることを聞きつけてご夫妻で来店されました。メガネのデザインも見え方も非常にご満足頂き、それから時々店に来て、メガネのメンテナンスや新しいメガネを追加で作られるようになりました。

何度も来店して頂くうちに、「グローブスペックス渋谷店」のインテリアや小物、アートなどに関心を持ち始めました。Hans J. WegnerArne Jacobsenの名品の椅子があると思いきや、昔のフランスの郵便局で郵便物仕分け用に使われていた「Post Office Desk」、非常に古いテニスラケットやアメフトのボール、「マッキントッシュ」を中心としたヴィンテージオーディオシステム、アーティストであるお客様が描いた壁画やNYのアーティストによる外壁のウォールペインティングなど、店の中のモノや作り込みをとても気に入ってもらいました。

ある時メガネを作った後で「一緒にお茶でも飲みに行きたい」と言われたので、近所にある古いフランスのインテリアや古材で作られたガレット屋さんに案内しました。このカレット屋さんは近所の名店で味も本格的なのですが、店内の家具や調理器具はすべてフランスで収集したヴィンテージで、窓枠や外壁の煉瓦造りもフランスからレンガを取り寄せ、職人まで呼び寄せて作った店なので、中に入ると古くからあるパリのガレット屋さんに来た様な気分になるのです。

思っていた通りアンティークやビンテージが大好きなご夫妻は、このガレット屋さんを大変に気に入りました。帰りがけに店を見上げると、店の2階の窓に子供用の古い木馬が置いてあることに気がつき「あの木馬が是非見たい!」と言われました。店長にお願いして2階に入れてもらうと、驚いたことにさまざまなヴィンテージの家具、調度品、古いおもちゃや木馬の様な遊具がたくさん置いてあったのです。尋ねてみるとガレット屋さんのオーナーはアーティストであり、70年代からよく行っていたフランスから少しずつそれらの家具や品々を収集して日本に送り、店で使ったり時々放出されたりしていたそうです。大使の夫人はヴィンテージのおもちゃや遊具のコレクターで、大使はヴィンテージの家具が大好きだったので、ガレット屋さんの収納部屋はもうパラダイスのようだったのでしょう。

それから何回かこの収納部屋を見に来られ、私も通訳を兼ねて同行し、いくつかの家具や遊具などを購入され、そのお手伝いをさせてもらいました。そのおかげでウチの店にもいくつか魅力的な家具や装飾品を手に入れることができました。

この様な経緯もあり大使ご夫妻とは非常に仲良くさせてもらい、何回も店に来て頂いてヴィンテージの話を楽しんだり、時には大使公邸で開かれる会に招いて頂くこともありました。

コロナ禍の最中に任期を終えられ、最後にお別れを伝えに来店頂き、挨拶させてもらいました。外国の名家ご出身の方でもあり、帰国後はお目に掛かる機会も無くなるかなぁと思っていました。

そこから少し時間を経た先週、突如店に来られました。なんとご夫妻からのプレゼントを持って来てくださったのです! 古い日本のブリキ製のおもちゃで、ゼンマイ仕掛けによりメガネを掛け外ししてレンズを磨く動きをする子熊です! 箱の中には奥様からのメッセージで「岡田さんはこれがお好きかと思って!」と書かれたメッセージが入っていました。

国際会議があって来日され、スケジュールの合間を縫ってプレゼントを渡しに来てくださったのです。

昨年新しくなった渋谷店はまだご覧になっていなかったので一通り店内の家具や、あちこちに散りばめられたヴィンテージの装飾品や雑貨を嬉しそうに見て回られていました。

ご帰国後、奥様は日本のアンティークショップや蚤の市、ガレット屋さんで見つけたアンティークのおもちゃや遊具を公開するスペースをオープンしたそうです。いつか訪ねてみたいです!

この様な心温まる出来事がありました! 渋谷店の「Oak Room」にこの「メガネ拭き子熊」がいますので、渋谷店に来られたら会いに来て下さい!

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