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BLOG - 岡田哲哉(グローブスペックス 代表)

久々に有望な新ブランド「lazare studio(ラザール・ステュディオ)」に出会いました。

「グローブスペックス」では新しいブランドの導入を検討する際いくつかの要件があります。

まず既に「グローブスペックス」で展開している他ブランドとは異なる特徴やユニークさがあること。いくつかのブランドでジャンルを作っている場合は、そのジャンルのパイオニアであること。そして発展が期待でき、アフターケアも可能であることです。

今年3月、感染状況が改善して自主隔離期間も免除になったことから3年ぶりにNYに行きました。そこで久しぶりに有望な新人ブランドに出会ったのです。フランスはリヨン発の「lazare studio(ラザール・ステュディオ)」です。コロナ禍の期間中にデビューし、ヨーロッパ各都市の名店はみな注目して紹介し始めたところですが、ヨーロッパ以外ではこのNYでの紹介が初めてで、ヨーロッパ圏外での取り扱いは「グローブスペックス」が初めてです。

私が新しいブランドを入れる場合、自分でリサーチして探し当てる場合と、信頼できる人からすすめられてスタートする場合があります。今回は長年に渡って信頼を置いているフランス在住で、豊富な知識とキャリアを持つ眼鏡業界人のすすめがあってこのブランドを知ることになりました。今までもより深く、より長く付き合ってきたブランドは人から紹介されすすめられた場合が多いです。と言うのは「グローブスペックス」で扱うブランドはただたくさん売れれば良いとは考えておらず、作り手の側も販売される店を厳選したいと考えている場合がほとんどなので、お互いに信頼できる人が間にいて結び付けてくれると双方にとって安心なのです。間に入って紹介してくれる人にとっても確かな人同士を紹介しないと自分の信用にも関わりますから。

まだデビューして間もないブランドなので、NYでは「Jacob Javits Center」の正規展示会場ではなく、近隣のホテルで知り合いの伝手を頼りに紹介をしていました。

初めて取り扱いを検討するブランドに関しては必ずデザイナー自身と話をして、ビジョンやコンセプト、こだわり、信頼性、継続性などを確認する様にしています。「lazare studio」は2人がリヨンからやって来ていましたが、2人の持ち物や装いを見てもかなりこだわりがあり、センスがあることが良く分かりました。

「lazare studio」のデザイナー、Alexandre Caton氏

「lazare studio」のデザイナー、Alexandre Caton氏

コレクションを見て思ったのは「全く新しい視点を持って、魅力的な世界観を作っているブランド」と言う印象でした。クラシックをベースにしているのは確かなのですが、クラシックの模倣や焼き直しではなく、独自のこだわりと格好良さをふんだんに上乗せして生み出したブランドです。

まずはメタルフレームですが、ブリッジ(左右レンズを繋ぐフロントの中央の部品)には数パターンのデザインがあります。単純な形状ではなく微妙にファセットを付けて厚みを変化させたり、僅かな段差をつけたり、19世紀末にあったXブリッジを進化させるなど、これ見よがしな派手さはないものの非常に細部までこだわったブリッジたちです。メガネと顔の中央に位置するパーツなので、掛けた時の印象を大きく左右するデザインなのです。

リム(レンズを入れる縁)はエッジを角張らせた非常にシャープな印象の仕上げです。

“monoblock temple” と「lazare studio」が呼んでいて蝶番まで削り出しで作られているワンピース構造のテンプル(ツル)は、同じく少しごつめに削り出しで作られている智金具と組み合わせられ、見るからに頑丈そうな作りです。その蝶番の輪の間にはテフロン材を用いて非常に摩擦抵抗を軽減し、金属の摩耗を防ぐワッシャーが内蔵されていて、テンプルの開閉が驚くほど滑らかです。

テンプルの終わりは少し太くして、テンプルの後ろに荷重を掛けてフロントの負荷を軽減するバランサーとなっており、この部分にブランドを象徴するラインの意匠が刻まれています。

フレームカラーは濃いグレー、薄いグレー、黒、ベージュに近い茶などすべて落ち着いたモード感のある色味ですが、どれも複雑なメッキ処理とそれを保護するコーティング材を使い、強い耐久性を与えているそうです。

アセテートのプラスチック枠も、ヒンジの蝶番は昔ながらのカシメピンで留められ、その上に美しくデザインされた鋲飾りがピンを覆い隠しています。フランスでは古くから使われている蝶番金具の固定方法であり、「レスカ・ルネティエ」などその固定の品質とピンの美しさから今でもカシメを採用しているブランドは多くあります。ただ普通は量産型の蝶番金具をその先に付けている場合が多いのですが、「lazare studio」はアセテートフレームにも独自に設計したワンピース構造の堅牢な削り出し蝶番金具を使用しています。その可動部分にはケブラー材を使用したワッシャーを挿入して、やはり摩擦を減らして摩耗を軽減し、極めてスムーズな蝶番の動きを実現しています。

テンプル上部や薄くして下部に向けてボリュームを持たせたモデルや、テンプルのエンド部分は断ち落としたままにするなど、やはり独自のこだわりを美しい意匠に落とし込んでいます。

SDGsやマイクロプラスチックの海洋汚染などにもこだわりが強く、通常ビニール袋に入れて店に商品が納められるのですが、すべて薄い紙のパッケージに入れられて納品されます。

 

 

ネジさえも通常のものより少しヘッドが大きく非常にシャープに角を削り出した美しいものを使っています。そのネジに合わせて作られた専用のドライバーが付属します(店舗の技術者用)。

「lazare studio」のコレクションは派手では無く落ち着いていて、非常にヨーロッパ的な印象が強いブランドです。上に書いた通り工業製品として非常に精密な作りで機能性にも優れ、高い品質を有していますが、デザイン面でも独特なオーラがあり、見た目や質感の点でも非常に惹かれるブランドです。確かにクラシックの系譜を踏んでいるのですが、ただレトロな感じでは無く、洗練された知性、センスと男っぽさも感じさせるデザインです。

リヨンは旧市街がユネスコの世界遺産に登録されているとても美しく歴史を感じさせる街で、フランスのメガネの産地であるジュラ地方にもアクセスしやすい立地です。美しい街並みの中に食文化にこだわる名レストランも多い街で、私もジュラ地方に行く際に立ち寄って魅了されましたが、リヨンの街も「lazare studio」の魅力に関係している気がします。

「lazare studio」は8月13日(土)から、アジアでは初めて、まず「グローブスペックス渋谷店」から販売を開始します。「グローブスペックス」の代官山店と京都店でも少し後から展開します。新しい魅力を持った新ブランドを、ぜひ見に来て下さい!

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