BLOG - 岡田哲哉(グローブスペックス 代表)

京都で感動したこと。

昨年6月に京都店をオープンしてから、できるだけ毎月一度の週末を京都店に立つようにして、京都や関西エリアのお客様にデザインの提案やサービスの提供をするようにしています。先週末、緊急事態宣言が続いていたこともあって、少し久しぶりに京都店に立ちました。その際に感動した出来事がありました。

今、京都店に立つ際には、デザインのお見立てや視力チェックのサービスをしっかりとご提供したいがために、予約を受け付けて対応させて頂いています。デザインに関心が高い方、似合うメガネを手に入れて素敵なメガネ顔を目指したい方など、さまざまポジティブなモチベーションを持ったみなさんが来店されます。

そんな中、少しいつもと違う感じのご家族が来店されました。奥様やお嬢様はすでにウチで買っていただいたオシャレなメガネを掛けられていましたが、その際にアポを入れて頂いていたのは少し高齢のご主人様でした。そういったケースもよくあり、気に入って頂いた奥様やお嬢様が、後からご主人様にもすすめて、似合うメガネを選びに来られることも多いです。

しかしながらこの男性のお客様はちょっと様子が異なりました。楽しくなさそうに見えたのです。私はまず今までのメガネの見え方や、何か困っていることなどあるかどうか尋ねました。するとこのお客様は片眼ずつそれぞれに難しい疾患があることを話して下さり、飛蚊症がひどい方の眼は今までもちゃんと見えるようになったことがほとんど無く、何箇所かの眼科やメガネ店にも相談して対策を模索してきたものの、結果はあまり芳しくなく、いつもかなりボヤけた状態が解消しないままになっていたそうです。

「今までいろんな手立てを講じても見えるようになったことがないから、今回も多分視力は出ないと思うし、またダメなんだろうと思うよ…」と言われて肩を落とされていました。

「出来る限りのことをしてみますので、どうぞこちらへ!」とおすすめして、視力チェックの検査スペースにご案内しました。実は私、若い頃にメガネ店に勤務しながら日本の専門学校を卒業した後、ニューヨーク勤務時代には現地の技術的な専門資格を取得し、その後もずっと最先端の技術セミナーに30年間、ニューヨークの展示会を訪ねるたびにずっと出席し続けるなどし、技術的なスキルや知識は並大抵ではない蓄積を図ってきているのです。そのため、今までもどこに行ってもちゃんと見えるようになったことがないと言われる難しい目の状態の方々など、大勢の視力難民のお客様を救済してきているのです。そういった方々は他では見えるようにならないため、ずっと「グローブスペックス」に通い続けて下さるのですが、何人かのアメリカやヨーロッパに住まわれている方々も長年ずっと東京まで来てこの様な技術サービスを受け続けられているのです。

今回もおそらくハードルは高いのだろうと覚悟しながら精密なプロセスを開始しました。初めは「どうせまた見える様にはならないよ!」と言う態度で臨まれていたので、各プロセスでの質疑応答にもあまり協力的ではなかったのですが、手順を進めてゆくと私が真剣に解決しようとしていることを感じ取って下さり、段々と協力してもらえるようになってきました。通常は全プロセスを15分くらいで完了するのですが、難しい内容であったため40分ほど掛けて手応えある結果を出しました。

視力チェックのプロセスが終了した時点では光学機械の裏側から見ているので、見えるようなったのかどうかはよく分からないのですが、その後に試験用のテストフレームに結果の度数をセットして周りをご覧頂きました。

初めは黙りこくって周りを見ています。「ああ、確かにちょっとは良くなっている気もする…」あまり感動はなく、鈍い反応でしたが、私はもっとびっくりされることを確信していたのです。

その後に近距離で細かい字がよく見える様になる度数を見ていただきました。すると「近くの細かいものは今まで不便に感じたことはないから、そんなものは見る必要ないよ」と言われつつも非常に細かい字や写真が出ている雑誌を見てもらいました。

すると絶句されて、何度もメガネを持ち上げて、裸眼の状態との違いを確認されています。「驚くほど細かいものがよく見える!!」とビックリされています。「ちょっともう一度最初に見せてもらった、遠くを見る方の度数を見せてくれ」と言われたので、最初に試されたものと同じ度数をまたテスト用のフレームにセットして、再度見て頂きました。今度は素直に遠くの色んな距離を見渡して、やはりビックリされています!「え!こんなに見えたことは今まで体験したことがない!!」と今まで諦められていた明瞭な視力に感動されていました。

その後は人が変わったように、子供のようになられ、ずっと満面の笑顔と最後まで笑い声で楽しくデザインを選んでもらいました。始めからずっと黙っておられたご家族の皆さんも皆笑顔になっていました。おそらく初めから「岡田さんはなんとかしてくれる!」と信じていてくれたのだと思います。

帰り際、店を出られる前に掛けていただいた言葉に心から感動しました。「生きているうちにあなたに会えて良かった!」と言って下さったのです。そして店を出たところで腰を90度以上に深く曲げられてお辞儀をされ、その後も何度も数歩歩くたびに振り返って、また90度以上腰を曲げてお辞儀して下さり、かなり店から離れたところまでそれを繰り返して下さいました。長年技術や知識を蓄積してきて本当に良かった!と心から思いました。

私がメガネを仕事として選んだのは、一つには顔の真ん中に来てその人の印象に大きく影響を与えるメガネは重要なファッションアイテムになっていくはず、と全くそうではなかった1980年代に思ったからです。もう一つは仕事として困っている人に最適な解決策を提供できる、知識や技術スキルで人の悩みを解消したり生活上の不便をなくしていけることにも非常にやり甲斐を感じたからです。そのため、「グローブスペックス」ではファッションやこだわりのアイテムを世界中から厳選するのと同じくらいに、技術的な知識やスキルを持って問題や悩みの解消に全力を尽くしています。

そのことが今回のような形で喜んで頂けると、本当に仕事冥利に尽きると感じました。私は自分の仕事の価値観としてファッションとしての楽しみやこだわりも最大限に提供し続けたいと思っていますが、もう一方で儲けやお金ではなく自分の仕事で悩みが解決したり心から人に喜んでもらえる仕事をしていることにこの上ない喜びとやり甲斐を感じます。

こんな事があると、まだまだずっと頑張ろう!と思います。先週の京都滞在で感動した出来事のご紹介です。

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