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BLOG - 岡田哲哉(グローブスペックス 代表)

圧巻のPHAETON、TEATON。

左の建物が「PHAETON」、右が「TEATON」。背景には田園風景が広がる。

先週のブログで紹介した、石川・小松の名店「PHAETON」のイベントに参加してきました。いろいろと驚き、新鮮な発見や学びもたくさんあったのでご紹介します。

まず以前から思っていたこととして、なぜまわりに田んぼしかないような場所に「PHAETON」は在るのか? そして、その様な場所で商売が成り立つのか? 私は面白い店や魅力を感じるモノがあると世界中いろいろな国の店に行ったり、人に会ってきましたが、この様な店はあまり見たことがありません。例えば、デンマークの小さな島(ほぼ全部が農地)にある、宿を併設したズバ抜けて美味しいレストランなど飲食店ではいくつか変わった店を見たことがありますが、ファッションを中心にした店は極めて珍しいです。

ただ、今回週末の2日間のイベントを「PHAETON」で行ってみてその秘密が分かってきました。オーナーの坂矢さんは「高速道路のインターからのアクセスは重視した」と言われていました。確かに北陸自動車道の片山津ICを降りて直ぐのところではあります。車での来店を想定されていたんでしょうね。でもそれだけで田んぼの真ん中に店を作ってしまうのか…。

ロケーションについては坂矢さんがイメージされていた田園風景があり、「PHAETON」に選んだその場所がピッタリだったのだろうとしか思えません。確かにお店のまわりにはとっても美しい景色が広がっており、ツリーハウスや「TEATON」の屋上テラスに登ってみると北陸自動車道の向こう側には日本海が拡がっていて、海に沈む夕日も望めるそうです。

「PHAETON」のツリーハウスと庭から続く、お店裏手の田園風景。

「PHAETON」の隣に新しくできた「TEATON」で2日間を過ごしてみると店の商品のセレクトは抜群のセンスを持って厳選されていることは当然のことながら、店の装飾や文具などの用度品をはじめ、「TEATON」でも陶器やグラスなど卓越した作家の作品が使われており、すべて第一級のものを揃えていることが分かってきました。そんなに装飾品が多い訳でもないのですが、平安時代の壺など平然と床に置かれていたりします。

スッキリとさり気ない店内だが平安時代の壺が置かれていたり、すべての家具や装飾がこだわり抜かれている。

店の外にも山で切り出してきた5トンの巨大な岩が運ばれてきたばかりで、今後「PHAETON」を象徴するオブジェになっていくことでしょうし、「TEATON」の前にあしらわれている溶岩に地元のシダや小木などを植え込んだ作り込みも、外側から店を特別な存在にしています。

「PHAETON」の店の左には、山から削り出してきたばかりの5トンの岩石オブジェが。「TEATON」の前には溶岩と地元の草木をあしらった巨大盆栽のようなものが配置され、店をより魅力的なものにしている。

そう考えると「PHAETON」と「TEATON」はこの場所でないとできない店のように思えてきます。まわりの美しい田園風景の中にあって、特別なファサードと店内で、単にモノを手に入れる場所ではなく時間を過ごして楽しむ場でもあるわけですね。

もう一つは坂矢さんを始め、お店の人たちとお客様の信頼関係の距離感が素晴らしい。小松自体はそんなに人口が多い町ではありませんが、イベントに来られているお客様は新潟、長野、大阪などかなり遠くから集まって来られていました。商品だけでなく店の調度品や周辺にあしらわれた草花など、「PHAETON」の選択したモノ、提唱するモノすべてに全幅の信頼が置かれていることを感じました。お客様にはファッション好きの若い方もいますが、人間国宝級の作家の方や第一級のアーティストの方など、非常に鋭い審美眼を持った方々も多く来場されていました。その様な方々に選ばれる店であり、期待を裏切らない品揃えとサービスを提供し続けた結果、このコロナ禍においてさえも、坂矢さんたちが提唱するイベントには「行かなきゃ!」と感じてもらえる信頼関係が築かれているのです。

そんなお店でのイベントに呼んでいただき、「Old Joe」の髙木さんのサックスーツのパターンオーダーと共に、「O.J. GLOBE SPECS OPTICAL Co」の紹介と、アイウェアのフィッティング、度数チェックなど、技術的なサービスの提供に行ってきました。坂矢さんのお店のサービスに相応しいクオリティの提案や度数チェックを行ってきましたが、想像以上に視力の改善が必要な方も多かったので、モノ以外の部分でも喜んで頂けたかと思います。

そして「TEATON」。今週、7月16日(木)が正式なオープンとなりますが、ここも完全にヤラレました! 店内の家具や装飾の多くはアフリカの職人が作ったモノを中心に、日本の代表する作家のカップやグラスなどを揃え、唯一無二のセンスの良い空間を作り上げています。ガラス戸を開くとそのまま庭に続き、庭の芝生からその向こうに広がる田園がずっと境目無しに続いているかのような美しい風景です。この庭にも席があり、ゆったりと風景を眺めながら紅茶を楽しむことができます。屋上テラスからは日本海を望むことも可能です。「PHAETON」もすごい店ですが、「TEATON」を見ると坂矢さんの感性の引き出しの幅と奥行きに驚かされます。

「TEATON」の屋上テラスからは日本海も望める。今井さんの明るい笑顔が「TEATON」全体を明るい雰囲気にしている。紅茶に合うスイーツはどれも絶品。

紅茶も葉から始まり、当然いれ方にも並々ならぬこだわりがあり、美味しさを引き出しています。また合わせるスイーツも絶品! 紅茶に合う完全にグルテンフリーのヘルシーなスイーツですが、特にキャロットケーキは「こんなモノは食べたことない!」と心底思いました。このキャロットケーキと豆乳をシェイクしたミルクティーは、「このためだけに時折、小松に行きたい!」と感じさせます。

“Destination” とは直訳すると目的地ですが、「PHAETON」と「TEATON」はどちらも “Destination” となる店だと思いました。つまり何かのついでに近くに行ったから寄るのではなく、「PHAETON」や「TEATON」を目指して小松に行く、ということです。それだけの価値や世界観を提供されており、坂矢さんやスタッフの方々のサービスもそう思わせてくれる心遣いに溢れています。

この様な素晴らしいお店でイベントに参加させてもらい、大変に光栄に思いました! もちろん髙木さんのスーツのパターンオーダーと、坂矢さんの香りの見立ても大好評でした。私もスーツを試着させてもらい、大体の目安はついたのでオーダーしたいと思っています。

「PHAETON」と「TEATON」は店の究極のあり方だと感じました。実店舗か、ポチッとECかという様な議論の前に、二つの店に行くとそこに行かないと分からない感動や心地よい時間があり、だからこそ人はわざわざ遠くにある店にも足を運び、その価値をモノ、空間、時間、人のサービスすべてでその価値を創造しています。とても勉強になりました。坂矢さん、髙木さん、この様な機会を与えて下さり、どうもありがとうございました!

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