まず本題に入る前に……
お知らせしたNHKの番組「世界はほしいモノにあふれてる」の放送後、大変な数のお客様に来店頂いています。やはりテレビの力はすごい! この番組に出演するに当たり、自分として目標にしていたのが、あまりメガネに関心がなかった人たちやよく知らない人たちにも「メガネって楽しそうだ」と思ってもらうことでした。予想以上に多くの方々の反応があったことはとっても嬉しいことです! ウチの取引先のメガネ店からも「放送があってからお客様が増えた!」と言った声さえ聞こえてきて、出演して本当に良かった!と思いました。メガネに関心を持つ方の裾野が広がることはとても嬉しいことなんです。
少し遅れてしまいましたが、「The Spectacle」のZyl(ザイル=アセテートプラスチック)シリーズについてお話しします。前回お話した通り1940年代まではほとんどが金張りのメタルメガネだったのですが、50年代に入るとプラスチックのものがとても増え、メガネのファッション化も一気に進んでいきました。
「TART OPTICAL」はNYをベースにしたブランドでジョニー・デップが愛用したり、映画で掛けたことでも非常に有名です。今やオリジナルのビンテージは稀少になってきていて、火付け役であるジョニー・デップ自身でさえ入荷待ちするほどです。上の写真は代表的なモデルであるARNELです。
このモデルはFDRと呼ばれ、フランクリン・ルーズベルト大統領のために作ったデザインですが、大統領が掛けるには至らなかったそうです。
上はミリタリーのメガネで「USS(United States Safety Service)」ブランドとして米軍がサプライヤーに発注していたものです。退役する時にも軍服しか着ていなかった兵士に対して、ボタンダウンシャツやチノパンなどと共にこのメガネも支給されていたようです。
こちらも「USS」。Birth Control glasses(避妊メガネ)のニックネームがあったもので、これを女性兵士が掛けると魅力なく見えてレイプの危険が減る、などの触れ込みが実際に言われていました。今なら逆にファッショナブルですね!
フランスのビンテージは丸メガネが多いことに対して、アメリカの1950〜60年代のビンテージには意外に少ないボストン型やラウンド型ですが、たまにこのようなタイプがあります。
「Shuron」社が発明したといわれるサーモントタイプのメガネ。Ronsirのモデル名で登場したブロウタイプの元祖です。この金張りのテンプル以外に、2種類の太さのZylテンプル(プラスチック)もあります。
最大手であった「American Optical」社のブロウタイプはマルコムXが掛けていたことでも有名で、映画においてマルコムXを演じたデンゼル・ワシントンもこのメガネを掛けて出演していました。
「American Optical」社の名品「Saratoga」は、ジョン・F・ケネディ大統領が愛用したことで知られ、数々の写真に掛けている姿が残っています。「Bausch & Lomb」社の名品である「Wayfarer」と並ぶ人気デザインですが、後者が不良っぽいイメージであるのに対して「Saratoga」の方が品良くお坊ちゃま的雰囲気を纏っています。
同じく「American Optical」社のシンプルなウェリントンはジャズピアニストの巨匠であるビル・エヴァンスが愛用していたモデル。
色違いのシンプルな黒も美しい佇まいです。
こんなクラシックなカラーコンビネーションも存在します。
「Bausch & Lomb」社の「VIP Safety」のシリーズ。1950〜60年代にはこの様な透明のピンクもスタンダードカラーの一つとして意外と多くのモデルにありました。女性専用でもなく、著名な政治家がこのカラーのメガネにスーツを纏って格好良く映っている写真も残っています。上手く掛けこなしたらとてもオシャレですね。
マリリン・モンローが掛けていたようなセクシーなキャッツアイも1950年代以降増えました。この写真は「Swan」社製のデザイン。
最後に紹介する、この2つは少し異色でスペインとフランスの1960年代のビンテージ。アメリカものとは異なる洗練された魅力に溢れる、ヨーロッパでもラテン系の国のアイウェアです。
まだまだ他にも多くのバリエーションが揃う「The Spectacle」のアンティークとビンテージアイウェアですが、大きな特徴として同じデザインの中でブリッジサイズ(左右レンズ間の幅)とレンズサイズを選択できることと、アンティークとビンテージでありながら保証期間があること、そして万が一、愛用していたアイウェアに破損など生じた場合もパーツ交換できることが挙げられます。
つまりアンティークやビンテージだからといって色々とガマンをしたり、すぐ壊れるリスクなどにビクビクしなくて済み、安心して掛けられるのです。出荷前はパーツとしてバラバラにしてあるアイウェアは、当時と同じ材料と手法で製造最終工程の研磨がなされるので、その時代の新品状態同様の品質で届けられます。いわば古いパーツを利用して、現代において全く新たな製造をしているようなブランドなんです。貴重ですね!
アメリカ西海岸にある直営店を除けば、「グローブスペックス」の店舗には世界最大規模のバリエーションを揃えていますので、ぜひ見に来て下さい!