先日、学生さんたちの新卒面接をしました。みなさん大変優秀な方ばかりだったのですが、その中の何人かが雑誌への愛を切々と語っていたことが強く印象に残りました。その事実だけで若い世代に紙媒体への回帰が強まっているとすることはできませんが、それでもなおいろいろと考えさせられる出来事でした。
フイナムでも半年に一回雑誌「フイナム・アンプラグド」を制作していますが、改めて言うまでもなく、このご時世に雑誌を作れること自体が大変貴重なことだと思っています。ですが時代は動きます。コロナ禍という予想外の事態も起こりました。未来予想はますます難しくなってきています。雑誌は決してなくならない、そのような言説は耳タコです。そんなことはわかってます。そんな時代にどんなものを作るべきなのかということが大事なのです。
雑誌ではありませんが、最近見て感銘を受けた紙媒体をご紹介します。
写真家・山谷佑介さんの写真集『Doors』です。
これに関してはフイナムでも色々と紹介してきましたが、改めてこうしてフィジカルなものとして目の前に姿を表されるとやはり迫力が違います。誰にも頼まれていないけれどやる、そういうことなんですよね、きっと。この件に関しては、もしかしたら後日談的な企画をやるかもしれません。
こちらは少し前にリリースされた「ビームス 原宿」のビジュアルブック「ALTERNATIVE COLLECTIVE」です。
↑のようにWEBで全編見ることができるのですが、やはり迫力という意味では紙に軍配が上がります。しかし、どのクリエイティブもフルスイングしていて、見てて気持ちがいいですね。こういうのしばらくやってませんが、いま自分がやったらどんなものになるんでしょうか。きっと難解なものにはならないでしょう。けれど、硬いのから柔らかいのまで、甘いのから辛いのまでを混ぜ込んだ感じになるような気がします。起用したいクリエイターもなんとなく頭の中にあります。さてそんな機会が来るでしょうか。
写真家の松本直也さんに静物を撮らせたのは大正解ではないかと。
こちらにも鬼才・山谷佑介が。
スタイリスト林道雄さんの、切っ先鋭いクリエイションも見どころの一つ。
この二冊は当然のように保存版決定です。
最後は紙ではなく、WEB媒体をご紹介。同業の編集者、渡部かおりさん、akaカオリジョーが立ち上げた「THE SHE」です。
「THE SHE」は、
私たちにとってのスタンダードと、
私たちにとってのポップアップ
(「今」の気分、「今」ニーズがあるもの)を
軸にします。
というステートメントが示すように、大変個人的なメディアです。けれど今始めるならそういうことだよな、とこのスタンスに強く共感します。いろんなひとがあちこちで言っていますが、ごく個人的なことを、ごく身近な人のために作ったものが結果として多くの人の心を打つことになる、最初から不特定多数に向けて作ったものは意外と誰の心にも止まらない、はい、そういうことだと思います。
なかをのぞいてみると、ショッピング機能とエディトリアル記事が混在したつくりは、WEBメディアの王道ではあるけれど、意外と大成功した例がないような気も。この「THE SHE」はどこを切っても嘘がなさそうで、推しているアイテムひとつにしても信頼がおけそう。なので、きっとうまくいくのではないでしょうか。あとは定番と流行をSTANDARDとPOP UPと表現したのもうまいなーと思いました。この辺はエディターなので、さすがのセンスの良さですね。
媒体は立ち上げるのも大変ですが、続けるのはその100倍大変です。カオリジョーがんばれ。応援してます。