BLOG - フイナム編集部

サカイとシュタインの真逆の美。

編集部の村松がリポートしてきたファッションウィークは最終日の6日目を迎えました。

この日の発表で注目されたブランドのひとつが〈サカイ(sacai)〉です。一年ぶりとなるメンズのショーで、2024年秋冬コレクションの発表以来、二度目となるマレ地区の巨大なイベント会場が舞台です。

その空間の真ん中を仕切る壁には大きな穴が。これはランウェーの一部なのですが、何かでぶち壊されたような開きかたで、服と通じる演出であることが後で分かりました。

〈サカイ〉が追求した服づくりは「破壊の美」。服を解体するというデザインコードはこのブランドの代名詞でもありますが、今回はその手法をさらに深化させました。ショーは白のシャツに黒のネクタイというフォーマルなスタイルでスタート。スカートを組み合わせたスラックスやワイドパンツをクロップして重ねたようなスラックス、ライダーズジャケットのディテールを取り入れたラペル付きジャケットやドレスシャツなど、どれも迫力のある服です。

そして、〈リーバイス®︎〉とタッグを組んだデニムジャケットや、以前話題になったダブルネーム〈ジェイエムウエストン〉の「Golf Derby」の新色も披露されました。パッチワークキルト風のファブリックを使ったブルゾン、パンツ、ドレスは、3度目となる〈アー・ペー・セー〉とのコラボアイテムなのだとか。

また、破壊の象徴として、パンチを繰り出すようなモハメド・アリのフォトTも登場。

会場に響いたクイーンの名曲「I Want To Break Free」のように〈サカイ〉のクリエーションは誰が見ても分かりやすく自由だからこそ、世界に認められているように感じます。

 

パリの地で3度目となるランウェーショーを開いたのは〈シュタイン(ssstein)〉です。

たっぷり生地を採ったコートやスラックスはモデルが歩くことで現れるドレープが非常に美しく、デザインの繊細さが服を手に取らずともよく伝わってきました。

トラッドやその流れを汲むカジュアルを主体にコレクションを構成。舞台を歩くモデルたちの真っ直ぐな視線が意思の強さを表し、オールバックやセンターパートで整えられたヘアスタイルが大人な装いを描く効果的な要素になっています。

このコレクションは、特にエレガントな服を好む、ヨーロッパの手厳しいファッション業界人たちに受け入れられそうな予感。近年の〈サカイ〉や〈オーラリー〉に続く存在になる可能性を秘めています。

 

続いて紹介する〈ダブレット(doublet)〉は、ショーがはじまる3時間半前、このブランドのデザイナー井野将之がフイナムのブログに今回のコレクションに対する想いを綴っていました。

ぼくらのまわりに当然のように存在し、普段意識すらしない空気。「AIR」をテーマにした今回は、空気中の二酸化炭素からできた素材を一部の服に使用。その素材は熱収縮や加工条件による変化でなかなか思いどおりにいかなかったといいます。

ランウェーは空気を視覚化するかのように、向こうが見えないほどの大量のスモークで包まれました。そこを歩くモデルたちの格好は風を受けながらパリの街を行き交うひとたちのよう。ロングコートの裾をなびかせる女性がいれば、ギターがあしらわれたシャツを着る音楽好きや、色鮮やかなジャージーのセットアップを着た若者、新聞が張りついたスーツ姿の男…。

ランウェーを歩くモデルたちを見ていると、ユーモアあふれる服づくりの奥底にある熱量の高さに驚かされます。

 

昨今注目される韓国のファッションシーンで、頭角を現すブランドといえば〈ポスト アーカイブ ファクション (PAF)(POST ARCHIVE FACTION (PAF))〉です。ここで紹介するのは、プレゼンテーションの合間に関係者を招いて行ったショーの模様です。

会場のど真ん中に置かれたのは、一台のグランドピアノ。ショーはピアニストが弾くドビュッシーの曲「アラベスク」と共にはじまりました。

ファーストルックを飾ったのは、コンパクトなシルエットのチェスターコート。見るからに仕立てのよさが伝わってくるつくりで、その後に続くラペル付きのジャケットやレザージャケットも品のよさを感じさせました。

ショーは中盤に差し掛かる頃、スポーティなブルゾンやフーディが登場。ゆったりとしたカジュアルファッションが当たり前の時代のなかで、〈ポスト アーカイブ ファクション (PAF)〉のジャストフィットなサイズ感がとても新鮮。

プレスリリースに記されたメッセージのひとつ「私は『ニュー クラシック』をつくりたい」に込められた思いが伝わってくる内容でした。

 

今回のファッションウィークで、最後に訪ねたのは〈ベッドフォード(BED j.w. FORD)〉の会場です。そこはアパルトマンの6階にある隠れ家的バー。きれい過ぎず雑然とした感じが居心地よく、舞台上ではカジュアルなライブ演奏が行われていました。そんななか、招かれたひとたちは振る舞われた酒を片手にリラックスしながらショーを楽しみにました。

会場に入ってくるモデルたちは、トラッドとカジュアルを狭間を行き来するような装い。コーディネートをカチッと決めるのではなく、気取らない独特な雰囲気が漂っていました。

ひとつひとつ丁寧につくらたことが伝わってくるそれらの服は、どれもいい意味で色っぽくエレガント。日本でこのニュアンスを生み出せるデザイナーはなかなかいないのではないでしょうか。

 

 

 

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