編集部の常重が現地からお届け“していた”、パリメンズファッションウィーク。更新が遅れていてごめんなさい…。帰国後もレポートを続けさせてもらいますね! 残り2日分、どうぞお付き合いください。
この日の1発目は、〈キコ コスタディノフ(KIKO KOSTADINOV)〉のショーから。
日本でも〈アシックス(ASICS)〉とのコラボシューズで一躍脚光を浴び、以降も履いているひとをよく見かけますよね。かく言う自分もそのひとり。
会場に入ると辺り一面に枯葉が。その演出と連動する形で、〈キコ コスタディノフ〉らしいブラックやブラウンをベースにオレンジ、イエロー、セルリアンブルーなどの秋らしい配色が目に留まりました。
アシンメトリーなデザインはやはり同ブランドの得意とするところ。シルエットはこれまでのシーズンよりもややゆったりめな印象を受けました。シワ加工のコットン、刺繍ジャガード、ヘビーなヘリンボーンなど、素材選びや組み合わせが面白いアイテムが多かった気がします。
〈アシックス〉とのコラボは今季も健在。足袋ブーツのような感じでしたが、しっかりとは見えず…! 続報を楽しみに待つことにしましょう。
次の予定は〈ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)〉のショーですが、少し時間が空きそうだったので気になっていたショップに寄ることに。
ここは〈オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー(OFFICINE UNIVERSELLE BULY)〉の創業者としても知られるラムダン・トゥアミが手がけるショップ「ア ヤング ハイカー(A YOUNG HIKER)」。簡単に言うとセレクトショップですね。
そのセレクトの多くが東京のブランドというのだからおもしろい。店名の通り、アウトドアを軸にしたアイテムが数多く揃えられているんです。まあここまではよくある話。このショップの真のおもしろさは、それに加えてオリジナルブランドがすこぶるイケてるってことと、地下のラムダンの趣味全開スペースが見応え抜群ってこと。
あまり店内をパシャパシャ撮るのもアレだったので、すべてを写真でお伝えできずに心苦しいばかりです。パリに行った際にはぜひ足を運んでみてください。
オリジナルブランド〈ディ ドライベーグ(DIE DREI BERGE)〉はアウトドアがベースにあるのですが、色づかい、サイジング、シルエットがなんとも絶妙。ニットにパッチワークをしていたり、パーカにアウトドアでつかうようなロープを組み合わせていたり、遊び心にも溢れているのです。
地下にはラムダンの私物コレクション(購入可)、そしてポスター、書籍などが所狭しと並べられています。こんな見応え抜群のショップはなかなかありません。なんと東京・中目黒に新店舗をオープンさせるとかさせないとか…? こちらも続報を待ちましょう!
そして向かうは〈ホワイトマウンテニアリング〉のショー。
会場に選ばれたのは、ステンドグラスからの光が神秘的な天井の高い教会でした。「ブルータリズム」と銘打たれた今季のコレクション。和太鼓の音に合わせて、機能と素材そのものの美しさを強調したアイテムたちが姿を現します。
建築物がそうであるように、あくまで服としての機能性を重視するとデザイナーの相澤さんは語ります。その機能性が表に現れたものがデザインであり、機能とデザインが相互に支え合い〈ホワイトマウンテニアリング〉というブランドをつくっているのです。
これは毎シーズン思っているのですが、〈ホワイトマウンテニアリング〉の原色カラーのアイテムがぼくは大好き。全体的にはブラックやブラウンで構成されたコレクションでしたが、掲載した上の写真のような、レッドやイエロー、オレンジといったアイテムにやはり目を奪われてしまいました。今季も展示会で袖を通すのが楽しみです!
話は少し逸れますが、これは次の場所へ移動するときに気になった地下鉄の駅。
いや、椅子1脚て。
横向きにしたらもう少し数置けるのに。なんでこの向きで設計しちゃったんだろう。まあ地下鉄は数分置きに来るし、座る必要性がそこまでないんでしょうね。座ったけども。
そんなSっ気のある地下鉄を利用しながら向かったのは、前日にショーを見た〈ディオール(DIOR)〉のRe-see。
2日連続、2回目。やはりデカい。
期間中には発表されませんでしたが、これがキム・ジョーンズが携わる最後の〈ディオール〉になりました。衝撃的な発表でしたね。
先日のショーのレポートで陰影の美しさについて触れましたが、最高峰の素材ゆえのきめ細やかさと、繊細なドレープ具合、凹凸やちょっとした装飾など、あらためてその芸の細かさに驚かされました。
自分のなかで空前の革靴ブームがきているのですが、リボンのようなディテールがトゥにあしらわれた1足、めちゃくちゃいいなぁ…。モダンでエレガント。いま履きたいのって、ちょうどこういうムードです。
会場を出るとまた雨。なんだか雨ばっかりのファッションウィークです。石井に聞くと、こんなに雨が降ることは珍しいみたい。ついてないぜ。常重のパリ、水にまつわる思い出多めです。
水たまりを避けながら、〈エルメス(HERMÈS)〉と〈カラー(kolor)〉のショーへ。
春夏シーズンではクロップド丈のアイテムが多く見られた〈エルメス〉ですが、秋冬では着丈が長めのアイテムが多く見られました。シルエットはゆったり、肩の位置もややドロップ気味です。クラシカルなムードでありながら、抜け感というかこなれ感を感じたのはそういう理由からでしょう。
肉厚のバラクラバも最高でした。あとは色のバランスが絶妙な幾何学模様。全体的にダークな印象のなかにところどころで入ってくるバニラ色がいいアクセントになっていました。続きは翌日のRe-seeで。
最後は〈カラー〉。会場に着くなり、こんなものが全員に配られました。
すでにご存知の方も多いと思いますが、この25AWのコレクションをもってなんとデザイナーの阿部さんが退任。およそ20年にわたってブランドを、いや、日本のファッションシーンを牽引してきたと言っても過言ではない阿部さんの退任は、日本人の我々にとってはもちろん、世界中にも衝撃を与えたことでしょう。
これからもサポートは続けていくとのことですが、ひとまず、本当にお疲れ様でした。最後のショーの現場に立ち会えて光栄でした。ブレてる写真もありますがご勘弁を。
全体的に見ると、グレー、ネイビー、ブラウンなどの落ち着いた色をベースに、レッド、グリーン、パープルなどを差し色として入れるいつものスタイル。テーラードジャケットやトレンチコートなど、今季はベーシックなアイテムが多いのかなと思いきや、裏地の色やパイピング、シルエットに素材感など、やはり〈カラー〉らしい遊びが随所に散りばめられていました。
コルセットという提案もおもしろかった。アウターの上からつけてシルエットに変化を加えたり、インナーの下から出してレイヤードスタイルを提案したり、コルセットという補正器具(?)を見事にファッションアイテムとして昇華させていました。
これにて阿部さんの〈カラー〉は終了。後任には堀内太郎さんが任命されました。阿部さんは「サブとしてぴったりくっついていく」と言っているみたいだし、これからどんな化学変化が起こるのか楽しみでなりません。
パリメンズファッションウィークのレポートも残すところあと1日。これを書いてしまったらいよいよぼくのパリ出張が終わってしまうようで、なんだか寂しいです…。書かんとこかな。