夏の陽気を思わせる昨日の晴天から一転、今日は朝から強い雨…。カフェで朝食を食べながら通りの様子を眺めていると、行き交うパリジャンたちの半数以上は傘をさしていません。アウターを着ずに、ニットやスエットで歩いているひとたちもちらほら…。
初夏とは思えない寒さのなか、〈オム プリッセ イッセイ ミヤケ〉のショーに向かいました。
〈オム プリッセ イッセイ ミヤケ〉の会場は「パリ装飾芸術美術館」の身廊。
ショーはまず男たちが二重になったロール状の紙をランウェー上に広げてハサミでカット。紙と紙の間に挟まれていた服を取り出し、モデルに着付けるところからはじまりました。
コレクションは、プリーツという素材に改めてフォーカスし、その魅力やよさを伝えるような内容でした。極限までに装飾性を排した服はどれも美しく、鮮やかで深みのある色使いが見事でした。
コロナ禍以降、着心地や動きやすさを重視したラクな服の需要が高まるなかで、〈オム プリッセ イッセイ ミヤケ〉の服はいまの時代にとてもフィットしているように感じます。
続いてご紹介するのは〈アミリ〉です。
会場はちょうど1年前、パリデビューの時と同じ植物園。パームツリーのまわりにバーカウンターを設置した舞台はアメリカ西海岸のリゾート地のようなムードでした。
しかも、夕方まで降ると予想されていた雨が止むという奇跡。天気をも味方につけた〈アミリ〉はパリとの相性がいいのかもしれません。
〈アミリ〉はパリに進出以降、テーラリングを重視することでストリート色を抑えているように感じますが、その流れはより顕著に。春夏シーズンらしい大人の色気を感じさせるリラックススタイルを見事につくっていました。アースカラーを中心とする、柔らかな色使いも印象的です。
続いて行った〈サルバム〉のコレクションも魅力的でした。
ステッチの糸をわざと長くて垂らしたり、ポケットのフラップが大きかったり、トップスをロングスリーブでもノースリーブでも着られるようにしていたり、ちょっとした違和感のあるデザインが全体を通して見た時にリズミカルで面白く、服づくりに対するこだわりがとてもよく伝わってくる内容でした。
最後は〈ドリス ヴァン ノッテン〉です。
会場はパリの中心地からやや外れた場所にある、いまは使われていない建物の上階。だだっ広い伽藍堂のスペースです。
驚いたのは登場する服たちがこのブランドにしては極端なまでにシンプルなこと。トラッドをクリエーションの中心に据え、装飾性を抑えた、服本来の美しさが際立つものになっています。
シルエットはワイドでゆったりしているのですが、全体的に縦長なところも今回も特徴といえそうです。ライトカラーのコートがアクセントになっていました。
プレスリリースに記されていたのは「崩された、控えめなエレガンスの追求」。
パリコレの前半戦を通して感じたことは、全体的にストリート色が控え目でクラシックな方向に回帰しているということ。春夏シーズンにも関わらず、ビビッドな色の提案が極端に少なく、柔らかなカラーリングが多いように感じます。その背後には同じヨーロッパで一向に終わる気配のないウクライナ問題の影響があるように思います。パリの街は最近までコロナ禍だったことを一切感じさせませんが、人々の心はまだまだ楽天的な気分になれないのかもしれません。
明日からファッションウィークはいよいよ後半戦です。