旅好きだったという祖父から受け継いだ古い革のカメラバッグがあります。
とは言っても自分が生まれる頃に体調を崩した祖父はそれから遠出をする機会を減らし、記憶にある彼の姿のほとんどは家の定位置であった椅子に座ってお酒を飲んでいるところ、といった具合でした。
それでも、そのカメラバッグのくたびれ具合からは祖父にかつがれて国内外いろいろなところを旅したのだろうと想像ができるし、経年変化を尽くした革の雰囲気が彼の旅好きの証拠であると思えるのです。
本題ですが、新しく車用具とアクセサリーの実験的なプロジェクト<Pathecho Equipment Supply>がスタートしました。
その第1弾のプロダクトである<Driver’s Bandolier>を来週、オンラインで発売します。
(シーズン毎に複数の商品を用意したりするのではなく、実験しながら時間をかけて1品番をつくる感じなのでブランドという自認はなく、プロジェクトとしています)
車のバイザー用アクセサリー兼、人間が身につける用のベルトポーチといった位置付けの道具で、オールレザー、日本製です。
デザイン、設計の段階ではいろいろなところから着想を得ながら進めていて、商品説明のテキストは
名作スペースオペラの衣装小物や古いミリタリーのベルトバッグ、弾帯(Bandolier)から学んで製作した車のバイザー用レザーアクセサリーです。
といった書き出し。これまでの歩みや偏愛の方向性を活用し落とし込んだものとも言えます。
また、オフィシャルなテキストには書いていないごく個人的な話になりますが、
自分の体の一部のように感じている車で使うものとして納得できる、”気に入った家に住んだら長く使える愛着の持てるチェアを一脚置きたい”みたいな感覚で取り入れられるようなもの
近い将来訪れるであろう愛車の最期の後に、その佇まいが長く伴走した距離と時間の証拠になるようなもの、そして次の車(何に乗るとしても)にも引き継げるもの
があればいいのにというのが構想のきっかけでした。
それはまさに冒頭に書いた祖父のカメラバッグのようなものであって、車と自分との間にもそのような存在があればいいのにということです。
部品、パーツなどでは次の車に受け継いでいけるものもいくつかあります。
ですがインテリアなど割とソフトな領域の車用具だとそれはあまりなく、デザイン性こそ優れたものが幾分多くなったとは思いますが商慣習なのかロットの問題なのか、安価で手に取りやすい反面、愛着を持って長く使うような想定がされているものはそこまで見られない感覚があります(それがカー用品としての普通であり王道なのだと思います)。
ということでそれに反した存在となりましたが、Pathecho としてわざわざ作ろうとした意義はまさにそこにあります。
多くの車のバイザーにつけられる汎用タイプとしたのも、次の車で使えなくなると元々の意図に反するからです(もちろん、いろいろな人に使ってもらうためでもあります)。
いちおう機能的なところにも触れておくと、一般的な駐車券のサイズに合わせたポケットやサングラス用のボタンなど、運転時に求められる基本の役割は確保しました。その他、小物が収納できるポケットを含め3つのポケットが並んだ構造になっています。
バイザーに留めるための同素材のベルトは本体と取り外しができ、金具の向きを環境に合わせて変更することが可能です(それ変更できる意味あるか?と文章だけでは感じるかもしれませんが、実際バイザーにつけるときには納得する方も半数くらいはいる気がします)。
先述の映画の衣装小物よろしく腰につけてベルトポーチ的な使い方も推奨したいアイデアです。
たばこの箱、電子たばこ、ミントタブレット、リップクリーム、などは入ります。iPhoneは入りません。
素材は国内のタンナーによってタンニン鞣し、ワックスの塗り込みが施されたヌメ革ということで経年変化をきちんと見届けられるであろうクオリティではありますが、車内というのは環境的に特殊空間なので、特に真夏などはある程度のケアが必要であろうということも申し添えておきます。
5月20日にオンラインで発売です。
同時に、ピンズとカーマグネットもスーベニア要員として準備しました。
本業の傍ら設計や製作はけっこう前々から動いていたのですが、このことを最近会った友人やお取引先の方々に少し話した程度で関係者の誰もろくに告知等をしてきませんでした。
フォロワー10人程度のほやほやInstagramアカウント(ありがとうございます)と急拵えのオンラインショップを中心に情報が出ていくので、覗いていただけますと幸いです。↓