甘党で30年やってきましたが、蜂蜜や養蜂については知らないことだらけでした。
ここ1年以上国内トップレベルの蜂産品企業に学んで、蜂蜜の奥深さ、幅広さ、面白さに触れるたびにそれまで漠然ともっていた蜂蜜のイメージがいかに断片的であったかを実感しました。
朝食、黄色、可愛い蜂の絵、なんとなくメルヘンな雰囲気、メープルシロップとの曖昧な関係。
みんな普通に家に備えていて食べたこともあるのに、ほとんどの人が表層的にしかその実体を捉えていないような、蜂蜜の世界。
養蜂を営む企業は国内にも多々あれど、加えて全国の養蜂家に向けた養蜂器具や技術の提供を行い、問屋として国内外の蜂蜜の目利きもしてきた1804年創業の老舗なんてものはなかなかありません。
その会社のさまざまな部門の方々と関わり蜂蜜のことを学んでいくうちに、これが正しく世間に認知されていないのは不幸なことだという気がしてきました。そしてそれを、養蜂・蜂産品の業界自身が認知していない気もしました。
先日、岐阜に新しくできた商業施設に小さな蜂蜜のお店がオープンしました。
先述の1804年創業の老舗、秋田屋本店が本拠地であり近代養蜂発祥の地もである岐阜に開く初の実店舗です。この開店にあたって総合的なディレクションや各種制作、ブランドづくりのサポートをこちらで担当しました。
細かいプロセスなどについてはここに書くでもないので割愛ですが、冒頭に書いたような、普通に生活していて知らなかった蜂蜜のこと、なんとなく醸成されていた偏ったイメージとの差、この老舗ならではの商材のユニークさをこれから世に知らしめていく第一歩(まだ第一歩)の場所にするべく整えてきました。
蜂蜜といってもさまざまな種類があって、花の種類、産地によって味や適した使い方がまったく違います。甘いものが苦手な人にぴったりなもの、しょっぱいものとかがっつり食事的な料理に合うもの、そういうのもあるわけです。
さらに秋田屋本店の特長は、単にさまざまな純粋はちみつの選択肢を提供するだけでなく、その目利き力や蜂蜜への理解の深さを生かした「加工はちみつ」ジャンルの豊かさ。
既に通販で猛烈に売れている”トースト専用”と銘打ったはちみつバター、”チーズ専用”の商品はチーズの塩気や旨味に負けない柑橘系の風味の蜂蜜がブレンドされていたりと、蜂蜜の一歩先な感じの商材がいろいろな種類で揃っています。もちろん、バウムクーヘン、ケーキのような蜂蜜を使った派生系の商品もあります。個人的推しは発酵クラフトレモネードです。
↑直感的に各蜂蜜・加工はちみつの違いがわかるように数段に分かれたチャートを作成
お店ではそれらの商品をプロの説明を受けつつ食べ比べたりしながらフムフムすることができます。それこそが実店舗ができた最大のメリットだと思うのですが、お店のカウンターで出している社長肝入りのソフトクリームも名物候補です。
蜂蜜をいくつかの選択肢から選んでその場でソフトクリームにかけてもらえます(ソフトクリーム自体も蜂蜜を引き立てるようにさっぱりめの仕上げ)。個人的には、まず物販スペースでいろいろな商品を見たり試食したりしてそれぞれの蜂蜜・加工はちみつの違いを実感してからソフトクリームにいってもらうと、かける蜂蜜選びもより意志を持って自分好みのチョイスができるのでいいと思います。
いまはオープン景気真っ只中で、隣近所は映え系のスイーツやワンハンドフードを出されているところが多いので秋田屋もソフトクリームに大行列ができていますが、それが一段落してからがおそらくこの店舗の本来の役割を十二分に楽しむことができるタイミング。もし行かれることがあれば落ち着いてからがおすすめです。
すごい行列
ということで、おすすめ情報でした。
何度も通ってみて、県内の他の有名スポットに押されがちだけど岐阜市のちょうどよく気持ちよい雰囲気に徐々に惹かれています。街と自然のいい関係、そこここでふんわりと香る小さいチャレンジの気配、そういうのがなんとなく長野と通じるなあと思っていたら、先日ご一緒した長野出身の『ONKUL』編集長浅井さんも同じように思うとのことで。なんかいいです。
このお店の内装設計・施工管理で入っていただいたのは名古屋のAND GO DESIGN さんでした。
こちらとしては慣れない東海地方でのプロジェクトでしたがAND GOチームの方々がいてとても心強く、障壁も多いなか走りきってくださって大感謝です!