編集部の村松がリポートするパリ・メンズファッションウィークはいよいよ後半戦へ。まず取り上げるのは〈ジュンヤ ワタナベ マン(JUNYA WATANABE MAN)〉と〈コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME des GARÇONS HOMME PLUS)〉です。
この2つのブランドは、どちらも有名百貨店「プランタン・オスマン」の真向かいにある建物の2階と3階を会場に、時間を分けてショーを行いました。
レッドカーペットを舞台にしたのは〈ジュンヤ ワタナベ マン〉。そこに現れたのは、いい意味で観るひとたちの期待を裏切るようなタキシードスタイルでした。
ただ、身頃や袖はつぎはぎだらけ。モデルがこちらに近づいてくると、その部分がデニム地で、リペアしたような激しいステッチを重ねていることが分かります。
デザインの奇抜さに目が行きますが、パッチワークした厚手のデニム地を用い、平然と狂いなく、ジャケットを仕立てるあたりにテーラリングの技術力の高さが伺えます。
今シーズンのテーマは「ドレスアップデニム」。デザイナーは本作について以下のように語ります。
「デニムやパッチワークなど今までたくさんやってきましたが、それらやり尽くされた事から何か新しい発見が出来ないかトライしてみたコレクションです」
一方の〈コム デ ギャルソン・オム プリュス〉は、エリック・サティ作曲の「Parade」に乗せてコレクションを発表しました。
これはセルゲイ・ディアギレフ率いるバレエ団「バレエ・リュス」の同名の演目で使われた音楽。この初演は1917年のパリ・シャトレ座で、台本をジャン・コクトー、美術と衣装をパブロ・ピカソが手掛けたことでも知られています。
刹那的な部分と楽天的な部分が入り混じるオーケストラの演奏がスピーカーから流れた途端、〈コム デ ギャルソン・オム プリュス〉の会場のムードは一変しました。
ランウェーに出てきたのは王侯貴族のような姿のモデルたち。ただ、その頭を覆うのは巻き髪のウイッグではなく、色とりどりのリボン型のヘアピンです。
体のラインを沿うように流れる、ジャケットやコートの大きなフリルが美しく、そこから色鮮やかなピンク、フラワープリント、ストライプなどへ服のデザインは目まぐるしく変化していきます。全体的に透け感のあるナイロンのチュール素材を多用したところも特徴のひとつです。
通常、フリルや花柄、ピンク、チュールなどは女性服によく選ばれるデザイン要素ですが、ランウェーに出てくる男性たちに甘さのようなものは全く感じられません。
これらをひとつにまとめるテーマは「THE HOPE OF LIGHT」。「コム デ ギャルソン」社から届いたメッセージには以下のように書いてありました。
“I want to hope for some light, even if very small”
「たとえほんの少しの明かりでも希望したい。ピンク、フリル、プリーツ、蝉の羽の様な軽い素材などの甘い材料はいわゆるスウィートではなく、“ほんの少しの明かり” の表現の1つ」
続いて紹介するのは〈メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)〉のショーです。会場は1800年代に建てられた、凱旋門近くの劇場「サルワグラム」。
そのボールルームを〈メゾン ミハラヤスヒロ〉は、なんとカラオケルームに変えました。どういうことかというと、幕が開くのと同時に音楽がかかり、舞台正面のスクリーンにはその歌詞が。そして、観客に紛れ込んでいたエキストラが突然立ち上がり、マイクを握って歌い出すという流れです。意表を突くユニークな演出に会場は大盛り上がり。
そして、この日はマレ地区で行われていた、〈ゴールドウィン〉の展示会にも足を運びました。そこには〈OAMC〉とタッグを組んだコレクションの第二弾も並んでいて、これがまた非常に素晴らしい内容でした。残念ながら写真の掲載ができないのですが、もうすぐリリースされる第一弾に続いて、話題になる内容ではないかと。
その〈OAMC〉といえば、ルーク・メイヤーのクリエイティブ・ディレクターの退任を発表しました。フイナムでは一年半前、来日したルークにインタビューしたのですが、引き続き、彼がどのような動きをしていくのか追いかけていきたいと思います。