BLOG - 猿渡大輔(グラフィックデザイナー)

Dateline Disneyland

 

podcastを始めるべく、タイトルや数話分の構成、内容を決め、ゲストとして出ていただきたい方々へのお声かけまでしていたのに、ばたばたしているうちに年末が見えてきて、ネタの鮮度も落ちてしまいました。仕切り直しです(お声かけした皆さま、ごめんなさい…)。そのばたばたしている仕事たちもまだこの欄で告知や紹介ができるものがあまりなく、プライベートなことを書くのも筆が進まぬなので更新が滞っております。舞台裏ではいろいろ駆けずり回っております。

 

とはいえなので今日は本の話です。

 

 

『Disney’s Land: Walt Disney and the Invention of the Amusement Park That Changed the World』/ Richard Snow

 

日本版はビジネス書っぽさの強い表紙ですが元々のほうが中身に合ってる気もします。
1955年にアナハイムにできた最初のディズニーランドがどのようにして生まれたか、ウォルト・ディズニーの目線だけでなくさまざまな役回りの人々を通してその過程をなぞる本なのですが、著者が歴史小説家やドキュメンタリー作家の方ということもあってか、綿密な取材や資料に基づいたノンフィクションにも関わらずとてもドラマチックです。

 

典型的なウォルト・ディズニー賛美を前提としていないので、ウォルトの感性や天才性が魔法のようにディズニーランドを作り上げたというようなストーリーではなく、資金集めや社内外の揉め事、とにかく多いトラブル、いろんな苦難をマンパワーと気合と長時間労働(ともちろんアイデア)で乗り越えることの連続。
マネジメント側vsクリエイター側、造園担当vs景観設計士、遊園地の乗り物専門家vs車の専門家など、仕事の現場でもよく目にしそうな対立構造がここにももちろん存在していたこと、オープン前夜、ウォルトが敷地内の寝床で不安に苛まれながらまだアスファルトが流し込まれ続けてる音を聞いて不安に思っていたこと(実際オープン日にも乾かなかった)、俗にブラックサンデーと呼ばれるトラブルまみれのオープン初日、ウォルトと袂を分かって消えていく功労者たち、どれも実際の仕事じみていて、現実的、全然魔法的でないところに興味をそそられ続けます。

 

 

 

オープン初日は全米でテレビ中継がされてすごい騒ぎだったとのこと。その日の様子はこの本の中ではほぼ実況に近い形でかなりのボリュームをとって語られていて、それと照らし合わせながら実際の中継を見るとまた興味深いところがあります。生放送なのですが全然うまくいかず、押しまくって最後かなりギチギチになるところとか、わかる〜ってなります。のちに大統領になる若き日のレーガンがしれっとリポーターで出演しているところもポイント。
オープンしてからしばらくディズニーランドに対して浴びせられた罵詈雑言に近い批判や懐疑的な記事の引用もたくさんあって、それらはいまも聞くような内容のものばかり、こういう見方をする人は一定数いるのだなというのもまた学びです。

 

ウォルト・ディズニーの有名な言葉で「Disneyland will never be completed.(ディズニーランドは永遠に完成しない)」云々というものがありますが、リアルに全然完成できずにオープンの日を迎え、まだまだやりたいことがあったのに、これが完成と思われたくない、という彼の歯痒さを想像してから反芻するとまた違った聞こえ方をするなと感じました。この台詞自体にまつわる宣伝担当者の回顧とかも本の中にあるのでそういうところも含めて違った印象になります。

 

この何百万分の一の規模ではあっても店舗のオープンやイベントの企画、制作物のできるプロセス、そういったところに立ち会ってきた身としてはシンパシーを感じるとともに予想外のタイミングでお灸を据えられるような、刺さる本でした。同業のみなさまおすすめです。
東京ディズニーランドだと主体も違うのでここで語られた話の全てがそのまま当てはまる存在かどうかはわからないですが、それでも源流にあるものをいろいろさらに知ることができ、見る目も変わります。

 

宣伝マネージャーのリンドキストさんが1955年のクリスマスイブ、仕事終わりにディズニーランドを徘徊しているときに、とある会話をする家族を見て感じたという言葉を引用

 

人々にとってディズニーランドとはどういう存在なのか、それを象徴する出来事だった。われわれは、癌を治療することも、世界を救うこともない。だが、少しの間だけでも人を幸せな気持ちにできるとしたら、何か価値のあることをしていると言えるだろう。

 

希望を感じます。

 

 

 

ついでに、ディズニーランドにまつわる身の回りのものいくつか

 

 

パーク内のポスターアートの図録 トニー・バクスターの解説付き
わがバイブル

 

 

サム・マッキムが描いた初期ディズニーランドマップのコピー

 

 

愛すべきパン・ギャラクティック・ピザ・ポートの皿に乗せたピザ

 

 

本家は開業から70年近く、日本のも来年で40周年、学びは多いです。

 

 

 

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