編集の須藤です。
先日、480分(8時間)の映画を観てきました。
監督は、アンダース・エドストームとC・W・ウィンター。(エドストロームは、スウェーデンの写真家/映像作家で、先日フイナムであげたこちらの記事でも紹介しましたが、ジル・サンダーのビジュアルを撮ったりと、ファッション界隈でも活躍されてます。)
作品は『仕事と日(塩尻たよこと塩谷の谷間で)』、エドストロームの義母である塩尻たよこさんを中心に、京都の山奥にある塩谷という集落の、ひとびとの生活をうつした半ドキュメンタリー(半フィクション)映画です。
監督自身が写真を生業としているからか、映画というよりも、写真が動いている画が連なった、ひとつの映像体のようで、8時間にわたるスライドショーをみている感覚に陥ります(つまり油断すると寝る、それもまたオツ)。たよこさんが書いたであろう日記が随所で音読され(←欲のない読み方ですごくいい)、それが唯一この作品の筋道を照らしてくれます。
そして触れずにいられないのが、加瀬亮。出演してるんです。が、彼が村の人々と飲んだり山に登ったりする様子が写されはするものの、どういう経緯で・どういう立場なのかは、最後のエンドロールまでお預け。
本作は、15分、45分、15分の休憩を挟み上映されました。休憩の合図としてスクリーンに表示される「INTERMISSION」の文字にどれだけ歓喜したことか。1日の活動時間の約半分を費やして、お尻が痛くなるリスクを負って映画に捧げるのは、冷静に考えて頭が変です。途中で離脱するひとのほうがむしろ賢い。
じゃあなぜ観ちゃったのか。
最初の7時間ちょっとが最後の数分で報われるからです。”待て”された後、がむしゃらに餌に食いつく犬、そのもの。超超長編映画って、その持って行き方に良し悪しがかかってる気がします。途中をすっ飛ばしてもダメだし、町山さんのネタバレ特別解説動画を見たところで、最後の”ハイ”に達することはできません。いわば特権的な。この優越感も相まって、超超長編映画はやめられないんです。
ちなみにこの映画をみたのは、毎年10~11月にかけて開催される「フィルメックス」という国際映画祭にて。アジア圏の、シネコンにはたどり着かないような、でもすこぶる優れた作品が多く上映されていて、上京してから毎年欠かさず行っています。今年はホンサンス(いつもの芸術家不倫話)、ツァイミンリャン(リーカンションお大事に)、ジャジャンクー(タイトルが最高)が揃い踏みで、近年にはない豪華さでした。
結局まとめると、超超長編映画とフィルメックスは最高ということ。そして、たらたらと書いた私の趣向は、先週公開された、大島依提亜さんによる映画のコラム「シッティング・ハイ」のタイトルの由来でもあります。だって痛みと多幸感って比例するじゃないですか、映画って!