BLOG - 田辺良太(WHITEWALL代表 アートプロデューサー / コンサルタント)

ファッションイラストと名作写真の共演

恵比寿にあるMA2ギャラリーにてファッションイラストと往年の写真作品の名作を組み合わせて展示するという興味深い趣向の展覧会が開催されてる。スェーデン出身でニューヨークを拠点に活動するマッツ・グスタフソンのファッションイラストと対比して展示されるのはマン・レイ、アンドレ・ケルテス、ウィン・バロック、セシル・ビートン、ブラッサイ、エドワード・ウェストン、植田正治と言った写真芸術の歴史に名を刻む往年の巨匠写真家たちの名作だ。マッツ・グスタフソンは1980年代より美しいタッチの水彩画でファッションイラストの世界で一世を風靡したイラストレーターだがアーティストとしては彼が暮らすニューヨーク郊外の自然をシンプルに描く作品などを発表している。今回は彼のそうしたアーティストとしての作品と日本での発表は初めてとなるファッションイラストの数々を往年の名フォトグラファーの写真作品と共に展示しているがそれぞれの組み合わせは慎重に考えられお互いの作品が隣同士で展示されることによる相乗効果を生むような趣向になっている。プラチナ・シルバー・プリントなどデジタル以前の存在感溢れる写真の数々はツァイト・フォト・コレクションの協力によって実現した。コロナウィルスや人種問題、アメリカ大統領選挙の行方など様々な変化が我々に突きつけられている現在、時代を超えたアートの共演によってタイムレスな美の姿を見せることはできないかというこのユニークな展覧会は異なる時代とジャンルの作品がまるで化学反応を起こすようにお互いの作品の輝きを高め合うという素晴らしい展覧会となったと思う。

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