先達がいて彼らが道を切り開いたから今日のぼくらがいる。コロナで社会が蹂躙されているとはいえ、今日の繁栄の素をこしらえてくれたのは、そうした先達、先輩たちである。儒教思想ではないが、我々は謙虚にそんな先人の行ったことごとに感謝し、敬わなくてはならない。
デザイナーのやまもと寛斎さんが亡くなった。
一度取材で話を伺ったことがある。エネルギーの塊のような方だった。
ファッションショーを服の新作プレゼンテーションの場から一歩進めてイベントにするという世界の誰もがなしえなかったことをされていた方だ。デザイナーというよりイベンターといった方がいいかもしれない。
何度かショーを観た。お祭りのような、ある意味ファッションを軸にしたアートイベントと呼ぶべきものだった。
作られる服にはあまり惹かれなかったが、オリジナリティ溢れる個性的な創作活動を生涯続けてこられた。いまどき、こんなデザイナーはいない。
アパレル不況が囁かれる中、こんな次の時代を担う、時代の殻を破る人の登場が待たれる。ニュースを読みながらそんなことを思った。
そういや弟さんがいらして、渋谷のビリヤード場でよく一緒にプレイしたものだ。一度も勝てなかったけど。
お悔やみ申し上げます。