昨日、来春卒業予定者の応募書類の第一次選考を通過したものすべて読んだ。誰と比較するわけではないが、今回も非常に優秀な学生たちから応募があった。
海外旅行などで見聞を広げている学生もいれば、留学も珍しくない。趣味も多種多様で、好奇心も強そうだ。もちろん錚々たる有名校出身者ばかりである。少なくとも自分と比べればその差は歴然。地頭が良さそうな上、このくらいの時期にこんな豊かな経験をしているなんて、将来がとても楽しみである。これは今年、あるいは昨年から仲間になったいまいる新卒入社組にも言えることだが。
応募総数はもうすこしで3桁に届きそうで、コロナショックで来年以降の就職が難しくなりそうな世相を反映している。WEB面接にするか、あるいは来てもらうか。飛行機や新幹線使う人はWEBで近くの人は来てもらうのはという話も出たが、それだとフェアネスに欠けるということで、第一次面談はすべてWEB面談ということになりそうだ。
一方で、当社もこの度のコロナ渦の影響を受けてじわじわと厳しくなっている。当初予定していた人足数を割って、極めて少数の採用にならざるを得ない。一次選考通ったみなさんには、近日中に連絡が行きますので、面談の準備をよろしくお願いします。
この度はコロナで代官山の蔦屋書店でやる予定だった会社説明会の開催を中止した。そのかわり下記のようなメッセージをぼくから学生さんたちに送った。
さっき読み返したら、これいま在籍しているスタッフにも読ませたいかなと思ったので、ここに貼り付けておきます。ちょっと長いですが、ヒマだったらお付き合いください。
みなさんこんにちは。
ライノ社長の蔡俊行です。
いま世界は新型肺炎で大混乱をきたしています。来春就職を控えているみなさんには、不安ばかりでしょう。しかし出口のないトンネルはない。きっと状況は好転します。いまはできるだけ外出を控え、人との距離を保ち、ウィルスを移す、移されないよう気をつけて生活するしかありません。
そんな状況で予定していた当社の会社説明会が延期になり、最終的には開催できなくなったことをここにお詫びします。
さて、2021年度の新卒者採用について。
ライノが何をやっているかについては一緒に添付している会社説明資料に詳しいのでここでは省略します。
ここでは当社のビジョン、というかわたしの持っている価値観というか思想のようなものを開示したいと思います。
会社案内にもありますが、世の中をヒップにしよう、というのがライノのビジョンです。ビジョンというのは、喩えていうなら旅の道案内になる目印のようなもの。北を目指すのであれば北極星を目標にすれば道に迷いません。困ったとき、迷ったときにこれがあるのとないのでは結果は大きく違ってきます。
ところでみなさんはリベラルアーツって聞いたことがありますか?
もう何年も教育の現場では話題になっている言葉で、日本語に訳すと「教養教育」です。しかしこれだとあまりピンときませんね。教養を身につけリーダーとしての人格形成を行うための、人文学や芸術、自然科学など多方面にわたる学問とでも言えばいいのでしょうか。アメリカでは人気の履修部門で、あのハーバード大学もリベラルアーツカレッジとしてスタートした歴史を持ちます。
総合大学とリベラルアーツカレッジの違いは、前者が大学院へ向けての専門性の高い研究を目的にその分野でのスペシャリスト育成が目的なのに対し、リベラルアーツは何かに特化した専門性より幅広い知識を身につけるのに主眼が置かれているところ。
そもそもはこの学問は、古代ギリシャで自由市民として生きていくために制定されました。これを「自由七科」といい修辞学、弁証法、文法、算術、幾何、天文、音楽という構成です。もちろんいまでは時代に合わせ、カリキュラムはアップデートされています。
この度の新型コロナウイルスの感染者の拡がりで、政府が命を取るか経済を取るかという判断の岐路に立った時、こうした知識を身につけていたかどうかで世界のリーダーの対応に違いが出たのはすでにご存知のとおりです。
感染症研究者、微生物専門家、医療学者、法律学者などスペシャリストの声を集め、そして政治的判断を自身の責任で下すのが政治リーダーとしての仕事。疫学専門家の話をそのまま鵜呑みに政策の決定していたのでは経済の問題は二の次になるし、経済界にだけ忖度すれば感染拡大は止まらない。そんな難しい判断をするときに道案内となるのは、人文学的な教養です。
有名な「トロッコ問題」というのがあります。ハーバードのマイケル・サンデル教授の「白熱教室」でも議論されました。これは「ある人を助けるために、それ以外の人を犠牲にできるか」という倫理問題です。
暴走するトロッコの前に5人の作業員がいる。線路は分かれていて分岐器の前のあなたは立っている。レバーを操作すれば5人は助かるが、分岐の先には別の作業員が1人いる。あなたは5人を助けて1人を犠牲にするか、あるいは5人を見殺しにするか、というものです。
イギリスの哲学者であるフィリッパ・フットが考案したこの問題は1967年に雑誌に掲載されるや大反響となりました。フランスのバカロレアではありませんが、こうした超難題に向き合って学問してきた人と、そうでない人ではリーダーとしての品格が違ってくる。
まあ我々のような市井の人間にはこんな人の命に懸かるような問題はないかもしれませんが、それなりに大変な選択に迫られる時も少なくない。そんな時、判断の基準をどこにおいているかで人間力が問われるわけです。
ずるしたり、人の陰口を言ったり足を引っ張ったり、手を抜いて仕事したり。そんな人をヒップと言えますか? 世界をより良い場所にしようと思う人は、まずは自らを律し、よい行いをしようとするでしょう。神様が見ているから、バチが当たるからということで行動を律する人もいますが、我々の業務上の行動基準はそれがヒップかどうかです。これが我々のリベラツアーツでもあります。
わたしたちは社会的動物であるし、経済的動物でもあります。つまり社会の一員として良き隣人として振る舞い、自分と家族たちの幸せを最大限に追求するために働いています。しかしその手段としての労働が、イヤで仕方がないというのは不幸です。できれば好きなことを仕事にしたいですね。
そしてカッコ悪いことしてお金を稼ぐのはみっともない。主体としておもしろいこと、やりがいのあること。客体からするとカッコ良さそうなこと楽しそうなこと。これが我々の仕事です。
きっとここに応募してくれているのは、我々の行っている事業にいくばくかの関心を持ってくださっている人たちだと想像します。
いま我々も新型コロナですこしばかりしんどい時期を過ごしていますが、その先の未来へ向けて準備をしています。
リベラルでラジカルなアイデアを持つ一緒に未来を創造していける仲間となるべく人の応募を待っています。