何かを知るキッカケやタイミングはとても重要で、私はいつもそのタイミングに恵まれているような気がしている。
22年前にEDIFICEに配属が決まって、そこで出会った初めてのフランス服。DNTONのフランス製のワークウェア。
いつも渋谷店の1階奥の棚の両隅にひっそりと置かれていた。大量生産を目的に作られたワークウェアで、クオリティ面において特筆するようなポイントはなく、むしろ安っぽくすらあった。
フランスで一般的に流通する普通のワークウェアであるところが魅力だったのだけれど、ハッキリ言ってお客様にはほとんど伝わらず、売れた記憶もあまりない。ファッションにこだわりを持つスタッフに愛され、ギリギリ取り扱いは続いてはいったが、数年で店頭から消え、後にEDIFICEで企画した別注商品に入れ替わっていった。
当時のEDIFICEのスタッフは、不良の集まりのような集団で、そんな彼らのファッションはキレキレでホントにカッコ良く、個人的に憧れを抱いた。
その中でも印象的だったのが、このDNTONのワークウェアを取り入れたスタイリングだった。たった6,000円程度のパンツのセンターには、しっかりとクリースが入れられ、裾口は4cm幅程度のダブル仕様。中には糊付けしている猛者もいた。完全にドレスアイテムのように扱われていた。ワークパンツの足元には、もちろんしっかりと手入れが行き届いたドレスシューズを合わせられていた。カバーオールには、BARBAやFRAYのドレスシャツをインに合わせる。JOHN SMEDLEYのハイゲージニットも定番だった。今振り返っても恐ろしくカッコいいと感じる。
その当時、カジュアルセクションのスタッフの一張羅がDNTONのワークウェアだったと言っても過言ではなかった。
あんなにチープでどうしようもないワークウェアだけれど、だからこその楽しみが潜んでいて、そこに気づけるか、気づけないかだけで、ファッションの楽しみ方は全然変わってくる。ファッションのイロハが詰まっていた。
私のファッション感を育んでくれたDANTONのワークウェアを、この世に再び蘇らせたく、日本の優秀な工場にお願いし、原型に忠実に再現しました。
DANTON、DANTONと言ってますが、ブランドはLEです。DANTONブランドとは全く関係ありません。
けど、今のDANTONだけを知る人にも見てほしいです。
変な話ですが、あのチープ感を出そうにも、現代では縫製が良いのが当たり前なので、チープ感を出す為のテクニックというのが必要で、思いの外手間が掛かり大変でした。
素材は当時の生地と同じ組織の綾を見つけ出せたのですが、原料の質が良すぎて高級感のある艶が出ています。ちょっとアップグレードしたフランスの普通のワークウェアも悪くないですね。
また新たなスタイルが生まれる事を期待したい。
【LE】
WORK JACKET 24,000yen +tax
WORK PANTS 16,000yen +tax
発売は4月3日(金) 11:00より。
■L’ECHOPPE
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